ハザラジャード視察報告書(5月16日~18日)

今回のアフガン難民支援第2弾の目的は、アフガニスタン国内に直接入り、緊急支援、自立支援をメインに活動してまいりました。中でもハザラジャード(ハザラ人が住む大地)地区は国際機関、NGOの援助が届かなく、相当に苦しい生活を強いられているという情報をアフガニスタンNGO長官のドクターサディックさんから頂き、調査、支援を計画しておりました。

▲ 悪路の中を8時間も車で走る

今回の目的地ハザラジャードのスルハバット郡というのはカブールの西、だいたい300kmに位置し、バーミヤンの南にあたります。標高はおよそ3300m、面積はおおよそ40km×40km広さで1万5千5百人ファミリーが点在している。

カブールを出発し、A77号線を車で悪路の中を7時間30分ほどの所に、ソルハバット郡タイラシャクという村に到着した。

▲ タイラシャク村

▲ この村の現状を聞く。彼らは淡々と村の現状を話す

村長のダゥート・カーンさんが近所の村民を25人ほど集めてくれて、この村の現状を聞き、支援内容を話し合った…。

支援して欲しいものは3つ!水の確保、病院、学校。中でも最優先として水の確保が挙げられた。

もともとこの村は自給自足で生活しており、毎年80~100cmの雪が6ヶ月くらいある。この雪が天然のダムの役割をしており、豊かな水で作物を作っていた。しかし、ここ近年、この雪が激減し、今では50~60cmしか積もらないそうだ。その為に水がなくなり、畑まで水が来ない為、作物が作れない状態に陥った。

▲ どこを掘っても石ばかり…水が出てこない

▲ チョロチョロとしか水が出なくなったカレーズ

多くの村人は大事な家畜を売り、土地を売り、親戚から借金してなんとか今を生活している。でも、それも限界にきている…カレーズを掘ってもなかなか水がでない…だからカレーズを掘る為の支援、カレーズを修理する支援をして欲しい。それには仕事をする為の食料と掘削機が必要だと…(今現在は手掘りでカレーズを掘っているが、固い岩盤や、石がたくさんあって難航している)

次の日、水源がどうなっているのか?枯れたカレーズ、修理が必要なカレーズの現状を見に山頂まで行った。途中で水が染み込んでしまい、下の畑まで水が流れなくなってしまった水路・・・50mも掘ったカレーズだが、水が殆ど流れていないところ・・・完全に枯れてしまったカレーズなど・・・何とも言えない現状がここにあった。

▲ 水路をたどる

▲ 途中で水が止まっていた…

水路を見た後、近隣の村民達が嘆願書を持って神学校で待っているというので行ってみた。朝6時から待っている者、3時間も歩いて来た者など、約100人の村人達が僕達を待っていた…。

▲ 100人を超す人々が集まってきた

▲ 嘆願書

スルハバット郡には120もの村があるが、その中の実に45村の村長さん達が嘆願書を持ってここに集まって来た…殆どの支援内容は同じで4つ!水路、貯水池を作って欲しい、ホスピタルを作って欲しい、学校を作って欲しい、道路を作って欲しいなど…でも、どの村でも水の確保が生きるため、自給自足の為にも最優先かつ、緊急の課題。

中には涙を流しながら訴える村長さんもいた…『私達を助けて欲しい…』と。僕達は全部の願いを叶える事はできない。だけど、生きるための最低限の事をできる限り支援する事を約束し、その場を終えた…。

▲ みんな本気で村の現状を話す

▲ 私たちを助けて欲しい!と涙をこぼす

終えた後にもう一言付け加えた。『僕たちは小さなNGOです。この地域全部の支援には限界があります。もし支援ができない村があったとしても許して欲しい…』というと、彼らは『いいよ。そのときはその時だよ。でもあなた方は来てくれたじゃないか!30年間誰も来なかったこの村に…それだけでも嬉しかったよ』と、笑顔で見送ってくれた。

▲ 帰り際にはみんなが笑顔で見送ってくれた。僕はこの村人たちの笑顔をいつまでも忘れない…。

最後に…地球温暖化の影響を実際に目にして僕はものすごくショックだった…。彼らはなんで干ばつや雪が降らないのかは知る由もない…。僕達先進国の豊かなライフスタイルのツケがここに如実に表れている。

僕は心の中で何回も、何回も彼らに謝った…僕達ができることといえば、この地球温暖化を止める以外にこの村人達を救うことはできない…たとえ僕達NGOが食料援助しようが、カレーズを作ろうが、根本である温暖化を止めなくては彼らに未来はない…僕達先進国の意識、価値観、ライフスタイルの転換をし、永続可能な社会の実現こそが最大の自立支援だと思った。