巻頭言

【巻頭言】拝啓 野田総理 殿

野田総理の再稼働発言に対する『地球村』の声明です。

 拝啓 野田総理 殿

                ネットワーク『地球村』代表 高木 善之

あなたの「大飯原発再稼働は必要」の声明を聞いて驚きました。これは建前ですか、本音ですか。もし本音ならば驚きです。

福島事故をどのように理解されているのか知りたいです。

声明の骨子、「安全」「国民の生活」「経済の重視」についてお聞きします。

 

「安全」について

なにを根拠に「大飯原発は安全」と言ったのですか。

福島事故はまだ、原因究明さえできていません。

原因さえわかっていないのに、どうして安全と言えますか。

なにを根拠に「同じ規模の地震や津波でも大丈夫」と言ったのですか。

「ストレステスト」もできていないではないですか。

原子力安全委員会の斑目委員長も「今の段階で安全とは言えない。第2次ストレステストが終わるまで安全とは言えない」と国会で証言しています。

大飯原発の直下の活断層の調査もできていないではないですか。

大飯原発の「工程表」は、ベント装置、非常用電源、堤防のかさ上げも将来の計画であって、現在は「ない」という証明書なのですよ。

そうした現状で、どうして「安全」と言ったのですか。

※野田政権は4月13日の閣僚会合でも、「大飯原発は安全基準を満たす」ということで「安全宣言」を行ないましたが、それは一体どういう安全基準ですか。

 

「国民の生活を優先」について

なにを根拠に「国民の生活を優先」と言ったのですか。

あなたのいう「国民の生活」とはなんのことですか。

国民は、「再稼働して便利快適を優先してほしい」と求めましたか。

総理は、新聞、テレビをご覧になっていますか。

新聞やテレビの世論調査でも、国民の大半は「安全を優先してほしい」「必要な節電をする」「停電もやむを得ない」と回答しています。

昨年、東京では18%の節電をしました。

関西の電力不足15%の予想は、あくまで猛暑など最悪の場合の数値です。関西の市民は、「必要なら15%節電をやる」と回答しています。

電力不足を宣伝しているのは原子力村です。

 

「経済重視」について

国民は再稼働にNOと言っています。

もし、国民と業界の意見が反対なら、総理はどちらの意見に耳を傾けるべきだとお考えですか。もし「国民は身勝手で信用ならん、業界の意見を聞くべきだ」とお考えならば、とんでもないことです。それこそ、「国民無視」「国民の敵」と言わざるを得ません。

総理は「経済を重視」と言いましたが、経済は利害が対立するものです。

総理が口にする経済とは、誰の利権ですか。

就任以来の発言は、つねに「原子力村」の利権を意味していますが、

国民と原子力村の利権や利害は真逆です。

総理は、「どちらか一方」と単純にいかないとしても、国民が納得するだけの調整をするべきです。しかし、その努力が全く見えません。

原子力村の言いなり、福井県知事の言いなり、経団連の言いなり。

国民にとって、総理は業界の「あやつり人形」です。

もし国民と業界の利害が対立する場合、総理は国民の側に立ち、国民を守るべきではないでしょうか。

 

国民が求めているもの

国民は日々の便利快適な生活の優先など求めていないのです。

国民は、目先の安心や夏のエアコンよりも、本当の安心を求めているのです。

国民は、それが簡単ではないこともわかっています。

すぐにできることではないこともわかっています。

それなりの痛み(負担、努力、我慢)も覚悟しています。

だから、「脱原発への工程表」が必要なのです。

多くの先進国は、すでにそれを公表しているのです。

ドイツの例では、「2020年原発ゼロ、そのために自然エネルギーの割合を50%にする。そのためにはこれだけの助成、そのためにはこれだけの予算が必要」と方針を出しています。いま、日本にもそれが急務なのです。

それなしに、再稼働の議論はあり得ないのです。

関西地域連合と橋下市長の要求「この夏だけの限定」が、おそらく国民の許容の限度でしょう。それ以外は論外、無条件の再稼働は言語道断です。

 

最後にもう一度、書きます。

総理の「再稼働は必要」の声明は、国民は納得していません。

むしろ多くの国民は怒り心頭、政権交代、総辞職を求めています。

すぐにでも声明を撤回してください。

それが、現状の混乱を収拾する最善の方法です。

 

PS

野田総理殿、あなたは、シリア・アサド大統領の現状(国民の弾圧や虐殺)をどう思われますか。「自分は、国民を武力弾圧したり、虐殺したりしていない」とお思いかもしれませんが、あとになって「本当はもっとひどい、もっと愚かなことをやったのだ」ということが証明されるかもしれません。