2014年6月 湖西市長 三上元さん
「どう計算しても原発は高い!」と書かれたチラシが、震災後、全国の市民たちの間を駆け回りました。このわかりやすいチラシの発信元は、湖西市長で「脱原発をめざす首長会議」世話人の三上元さん。「浜岡原発から60キロに位置する湖西市は、原発のまさに地元である」という立場からも、「脱原発」を主張されています。
原発はテロの標的になる…。
高木 こんにちは。この市長室に伺うのは2回目になりますね。最近では、脱原発関連でお名前をよく拝見しますよ。まずは、脱原発を発信するようになったきっかけについてお話しいただけますか。
三上 スリーマイルアイランドやチェルノブイリの頃は、「原発は何だか嫌なものだなあ」という程度でした。どこかに原発立地の話があれば、「住民が反対してくれればいいのになあ」と思う程度で、自分が主体ではなかったですね。
高木 では、それが転換したのは3.11ですか。
三上 いえ、その前、9.11の米国テロの時です。帰宅すると、1機目がツインタワーの1本に激突したばかりで、テレビ中継が始まっていました。2機目は見ている前でビルに突っ込んで、さらに3機目がペンタゴン。報道では、あと1機行方不明だという。4機目がどこを狙うんだろうと考えた時、どう考えても原発だと思ったんです。「アメリカ憎し」と考えるテロリストなら、そうするだろうと。
高木 4機目は、米軍機に撃墜されたという説もあり、墜落しましたね。あのまま飛んでいたら、原発だったかも。
三上 そこで、「おい、待てよ」と思ったんです。日本はアメリカと軍事同盟を結んでいる。日本の原発はテロ対策が手薄だと言われているから、標的にされてもおかしくないじゃないか。当時は、北朝鮮がノドンやテポドンなどの弾道ミサイルを開発して、日本の上空を飛ばす実験もしていた頃です。僕はそんなわけで、「テロや飛行機墜落の可能性」からスタートしました。当時は、船井総研の取締役で、『週刊フナイFAX』の編集長でしたので、5週に渡って「原発はやめるべきだ」という主張を書きました。
脱原発発言をご承知おきください。
高木 では3.11より10年も早く、脱原発の発信していたんですね。
三上 一企業の取締役が何を書いても、ニュースにはなりませんでしたが、「原発コストが安いというのはウソだ」という話も既に書いていました。
高木 元々そうした考えがあって、3.11後に脱原発を発信する市長として活動を始めたのですね。
三上 事故後の3月には各種世論調査が出始めたのですが、脱原発と原発推進が同じく46%だったんです。この調査を見たときに、「意見が2分するのなら、片方に加担する義務がある」と思いました。それで4月1日に、市の幹部(課長以上)70人くらいを集めて、「私の決心を伝えるから、ご承知おきください。私は10年前から原発は無くさなくちゃいけないと考えてきました。今日からそのように発言するから、そのつもりでいてください。そういう市長を持ったことを理解してほしいのであって、あなたがたに同じような意見になれということではありません」と伝えたんです。
高木 おお、その決意表明に、幹部の反応は?
三上 シーンとしました…。その後、4月9日、浜名湖の漁業協同組合の安全祈願祭があって、来賓スピーチをしたんです。「今日はおめでとうございますという席ですが、原発事故の直後であります。これは一言いわざるを得ない。この海が汚染されたらどうなりますか。これは原発に反対しなくちゃならないでしょう」と話して、その言葉が中日新聞の夕刊に出ました。
高木 それが市長として「脱原発」を広く発信した最初だったんですね。中日新聞は、「脱原発」をはっきり書く新聞ですしね。
三上 3月末にも、浜松で町起こしの集会があって、そこでも話しているんです。それを偶然に映画監督が聞いていまして「三上市長はそういう考え方だったんですか」と話しかけてこられました。その映画監督は太田隆文さんといって、翌年、「湖西市を舞台に原発の映画を作ります」と訪ねて来られ、『朝日のあたる家』を実際に撮ることになりました。
保守系脱原発派を増やしたい!
高木 最後は、「脱原発をめざす首長会議」について伺います。この会には、何人の首長さんが入っておられますか。
三上 39都道府県で94人(元職27人を含む)です。この会を始めようと思ったのは2011年の4月1日。長野県木曽町へ行く機会があって、「こういう会を立ち上げたい」という話をしたら、町長さんがすぐに、「やりましょう」と賛同してくれて、そこから仲間を募って2012年の4月に発足しました。
高木 いい活動ですね。『地球村』も協力したいですね。
三上 ありがとうございます。脱原発をめざす首長会議は、年に2回会合を開いています。12月は保守系脱原発派として、河野太郎さんをメイン講師にお願いしました。とにかく、保守系脱原発派を増やしていかないと変わりません。社共は元々脱原発ですから、問題は保守系なんです。
高木 それでは、小泉さんと細川さんが立ちあげた「原発ゼロ・自然エネルギー推進会議」ともつながったほうがいいですね。
三上 その呼びかけ人には、我々の仲間の桜井市長(福島県相馬市)が入っていますから、共闘できると思います。
高木 了解です。今回は原発の話がメインになってしまいましたが、湖西市のめざす方向性について教えてください。
三上 市としては、「志ある若者を育てたい」と考えています。トヨタ自動車の豊田佐吉と2代目の豊田喜一郎は、湖西市生まれです。そういう意味では「技術立国日本発祥の地」でもあるので、ここから世界に羽ばたく会社を生み出したいと考えています。
高木 なるほど。それでは、これからも情報交換していきましょう。ご活躍、応援しています。
★重要な資料です。ぜひご覧ください脱原発チラシ『脱原発、8つの理由』
⇒ https://chikyumura.org/2014/05/post-836.html
■湖西市公式サイト http://www.city.kosai.shizuoka.jp/
■脱原発をめざす首長会議 http://mayors.npfree.jp/
■ブログ 湖西市長 三上元の選択 http://pikagen.hamazo.tv/