スペシャル対談

2005年12月号 (株)宝樹社長 沼田順子さん、日本エコシステム(株)社長 藤澤博基さん


高木さんの講演を聴いて、それまでの経営方針から180度転換した経営者や企業がたくさんあります。沼田さん、藤澤さんもそうされたお二人。その経営哲学は…。
 

「子どもたちの未来を考えた企業に」


高木 こんにちは。まずは『地球村』との出会いから教えてください。

沼田 私は11年くらい前に高木さんの講演を聞いて、衝撃を受け、「子どもたちに美しい地球を残す企業にしなければ」と気づき、それまでやっていた24時間風呂の事業から、節電器事業へと方向転換いたしました。

藤澤 私は元々、建設機械の販売やレンタルを行う会社に勤めていました。その会社が倒産したあと、建設機械のレンタル業を起こしました。恥ずかしながら、ユンボやブルドーザーなど地球をぶっ壊す機械を売っていたのです。ところが5年前、佐賀で高木さんの講演を聞いて、そこからは沼田社長と同様に仕事を転換しました。それが偶然、同じ製品、節電器のレンタル業だったのです。今では、ユンボもブルドーザーも1台もありません。

高木 お二人が同じ製品の会社とは、面白いものですね。仕事は順調でしたか。

お二人 いえいえ、それが大変な経験をしました。

高木 では、それはまたのちほどお聞きするとしましょう。ところで、沼田さんは、チェルノブイリの子どもたちの支援をされているのでしたね。

沼田 はい。チェルノブイリの小学生40~50人を、毎年夏休みの1ヵ月半だけ北海道に招く活動「チェルノブイリへのかけはし」を支援して14年になります。軽症な子はドイツへ行って養生します。中症の子は日本へ来ることができます。そして重症の子は国から出ることもできないのです。甲状腺ガンや白血病で苦しむ子どもたちも、日本でおいしい空気を吸って帰ると風邪を引きにくくなると聞き、小さな支援ですが続けています。

高木 実際に、チェルノブイリへ行かれたこともあるのですか。

沼田 三度行きました。現地ではクラクラして船酔いをしているみたいになりました。まだ放射能の影響が出ているのでしょう。ベラルーシ博物館の天井には、世界地図が掲げられ、原発の場所を示す電灯が点いています。小さな小さな日本には、52基が煌々と光っていました。大きな事故を起こすと、広島の原爆の千倍以上の放射能を出す原発が、そんなにもたくさんあるのです。それを見たときに、節電器の普及を決意しました。これ以上原発を作っちゃいけないと思ったのです。

高木 そうですか。では藤澤さんは、経営について『地球村』から何か影響を受けられましたか。

藤澤 仕事は経済活動であり、経済成長が正しいと思っていました。それが、『地球村』に出会って初めて揺らぎました。経済活動よりも、地球や未来を中心に据えなければならないんだと思うようになって、仕事に迷いが出てきました。

沼田 藤澤社長、仕事は思いっ切りやっていいのじゃないかしら。高木さんの「経営塾」でも教わったように、「経営は一生をかけて真理を極めること」。そこがはっきりすればお金の使い道も変わるでしょう。私は、未来の子どもたちのために使うお金なら正々堂々と経済活動をしてもいいと考えています。

高木 先ほど、ユンボやブルドーザーは地球をぶっ壊すとおっしゃいましたが、機械は使い方しだいです。使い方によって、地球を修復することもできます。ゼネコンは地球破壊もできますが、地球の修復もできます。ビオトープ(生態系)を作る、山や川を元のように直す、そうした用途に使えばすばらしいことです。沼田さんが言われたように、方向性を間違わないで使えばいいだけです。省エネという仕事も、みんなの幸せのためなら、迷いはいらないと思います。
 

「もったいないから電気も蛇口をつける」


高木 『地球村』では、ストップ・ザ・温暖化キャンペーンで省エネを呼びかけています。節電は重要ですので、節電器について話してください。

沼田 水道の蛇口に節水コマを付けると節水できますね。節電器(『電気の蛇口』)は、あれと同じ原理で、電気の蛇口に節水コマを付けようという発想です。

藤澤 電圧は定格100Vといわれていますが、実際には98~107Vまでばらつきがあります。100V以下でも問題はありませんが、100V以上では電気代も余分だし、電化製品にも負荷がかかり寿命を短くしています。『電気の蛇口』は100V以上の電力をカットする器具なのです。

高木 原理はよくわかりました。水道を出しすぎて水が飛び散っているのを節水コマが節約するように、100V以上の電力を『電気の蛇口』が節約するのですね。

藤澤 そのとおりです。ただし100V以下の場合には効果はありません。実は以前、ある同業他社が「必ず30%以上節電できる。電気代が大幅に減る」という誇大セールスが問題になったことがあります。そんなこと、とうてい無理です。そんなことしたら、電気製品が正常に働かなくなってしまいます。そのことで一時イメージが悪くなり、業績が悪化してずいぶん苦労しました。しかし、いまでは環境省や自治体が補助金をつけることになり助かりました。

沼田 節電器を設置する家がある場所の自治体が、地球温暖化推進委員会に加入しているなら、申請すると50%の補助金が出ることになります。

高木 50%ですか。それは大きいですね。『電気の蛇口』のレンタル料金は、だいたい、おいくらくらいのものですか。

藤澤 機種にもよりますが、家庭用レンタルなら月々千円位からありますし、買取りもできます。

高木 ということは、節電量が10%なら、月に1万円程度の電力消費の家庭ならメリットが出て来るわけですね。

沼田 そこなんです。電圧は変動しますから、実際には10%だったり、5%だったりします。ですから、「必ず10%、電力代が安くなります」という言い方はしたくないのです。たとえ5%でも、電力を浪費していること、電気製品の寿命を短くしていること、それが「無駄」で「もったいない」ということを訴えていきたいのです。

高木 なるほど。目的は、お金(電気代)ではなくて、「電力(エネルギーや資源)の無駄を減らす」ということですね。わかりました。「もったいない」といえば、私の講演の新テーマも「もったいない」なんですよ(笑)。

沼田 高木さんの講演会の新テーマ「もったいない」はとてもいいテーマですよね。地球環境への取り組みは、「もったいない」が基本だと世間でも大変話題になっています。

高木 電気が「もったいない」、水が「もったいない」、エネルギーが「もったいない」、すべてにつながります。

藤澤 私たちの節電器の事業も「もったいない」の心、理念で社会や地球に貢献するために努力しています。
 

「お金は使い方が大切」


高木 その他に何か活動されていることはありますか。

沼田 実は、劇団の応援もしています。「曼珠沙華」という劇団で、7年前に「チェルノブイリの子どもたちに舞台を見せたい」と北海道までボランティア公演をしに駆けつけてくれたのです。

高木 その劇団はボランティア活動なんですか。

沼田 そうなんです。フィリピンのスモーキー・マウンテン、ミャンマー、チェルノブイリなど海外公演も7年間で12回行いました。以前、座長さんがマザー・テレサさんに会いに行ったことがあるのだそうです。そのときに「インドまでボランティアに来なくても、日本でできることがあるのではありませんか」と言われたことで、施設を慰問して、そこの人たちを元気にしようと決め、ハンセン病の施設など訪れる活動をしています。

高木 それは…相当の費用がかかるでしょうね。

沼田 年間600万円くらい自己負担しています。支援者を募って活動していて、大手化粧品メーカーなどの企業もスポンサーになってくれています。

藤澤 沼田さんのお話を聞いていると、私はお金をつまらないことに使ってきたなあと思いますよ。

沼田 海外公演では、舞台を作ってトイレを掘って、何から何まで自分たちで作らないといけません。そんなとき、うちの社員たちもボランティアで協力しているのですが、判断力や行動力、集中力が身に付いているんですよ。高木さんの講演を、社員みんなで聞かせていただいているおかげだと思っています。

高木 うれしいですね。

沼田 実は松下電器にも大きな理解と協力をいただいているのですが、それも高木さんや、『地球村』の考え方が大きく影響しています。私たちは、『地球村』なくしてここまでできなかったと思って感謝しています。ありがとうございました。

高木 お二人とも、これからも地球のためにがんばってください。

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