地球は今

【地球は今...】もったいない(3)

お正月は、いかがお過ごしですか?里帰りや旅行で長距離を移動される方も多いことでしょう。今回は旅行や移動ということから、「時間」の「もったいない」を考えてみましょう。
大阪事務局 渡辺裕文

今の交通手段は早くて、便利、快適?!

50年前に比べて国内での移動は、貨物も人も約10倍に増え、なんと自動車による輸送量は、貨物で60倍、人は100倍に増加しています。(国土交通省資料)
明治時代までさかのぼると、日本初の列車が時速30キロで商業運転を開始しました。今の新幹線は時速300キロなので100年前と比べると10倍早く移動できるようになっています。

「交通革命」によって、便利・快適になったといわれていますが、本当にそうでしょうか。
狭い日本の中で、いかに早く! いかにたくさんのものを! と焦っているようにも見えませんか?

時間をたっぷりかけた江戸時代の旅

江戸時代に、泉光院という僧が6年かけて日本中(北海道などを除く)を1万1千キロ以上にわたって旅した日記が残っています。
追いはぎ、泥棒などに会ったことが一度もなく、夕刻になると必ず誰かに「泊まっていきなさい」と勧められ、野宿をすることもなく旅を続けたそうです。

江戸時代は身分制度や年貢が厳しく生活に困窮していたように思いがちですが、お伊勢参りや熊野詣でに女性も気軽に出かけ、みんなが自由で生き生きと生活していた様子が日記に書かれています。
江戸時代までさかのぼらなくても、ほんの50年前、100年前の旅は、道中で出会う人、道中で過ごす時間を十分楽しんでいたように思います。

★今の私たちの旅行は、ともすれば少しでも早く目的地に到着し、その場所で楽しむことだけが目的になっています。途中にあるかもしれない素適な時間に出会えないなんて「もったいない」

現在、自動車が増えて・・・

特に今の時期は、帰省ラッシュで幹線道路は渋滞だらけです。
自動車の数は50年前に比べて200倍に増加しました。
エネルギー消費量は増大し、道路の周辺では、騒音、振動、排気ガスによる大気汚染や酸性雨が発生。そして地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量は、自動車だけで30倍に増えました。
さらに、放置された廃棄自動車などでゴミ問題も起きています。

★何億年という時間をかけて造られてきた豊かな自然を壊しています。本当に「もったいない」

交通の発展による大きな代償・・・

便利な生活のために、多くの時間を犠牲にしていませんか。
50年間で交通事故は300倍になり、1年間に約100万件発生!年間の死傷者数は、約120万人(死者約1万人)です。
100人に1人が交通事故でそれまでの生活ができなくなり、人生に『大きなハンデ』を背負っていくのです。
昭和30年代ごろの子どもたちは、公園や空き地だけでなく、道路を走り回っていて遊び場はたくさんありました。
今は自動車が増え、道路は危険で遊べない場所へと変わりました。
子どもたちの『楽しく遊ぶ場』を奪い、『遊んで育つ』大切な時間まで奪っているのではないでしょうか。

★人生の大切な時間や命、"未来をになう子どもたち"の大切な遊びの時間も「もったいない」

『時間』について考え直してみませんか

途上国といわれる人たちから見ると私たちの時間感覚は、どのように見えるのでしょうか?
南の島サモアの酋長ツイアビがヨーロッパに留学した後、私たち文明人の様子を次のように自分たちの仲間に伝えました。

パパラギ(先進国の人)は、時間のことで騒ぐ。
今という時間に満足しないで「なぜ、もっと時間をくれないのですか」と神に不平を言う。
時計を見て、「ああもう一時間が過ぎた」と大きな悩みがあるかのように悲しそうな顔をする。
その時、また新しい一時間が始まっているというのに。
私たちは、一度も時間について不平を行ったことはなく、時の来るままに時を愛してきた。
時間が苦しみや悩みになったことは無い。私は、彼らに教えてやりたい。
私たちの一生の終わりが来るまでに、まだ十分の時間のあることを。
毎日、日の出から日の入りまで、一人の人間には使いきれないほど、たくさんの時間があることを。
パパラギ(立風書房刊)より

できるだけ早く!便利に!と、私たちの生活はどんどん変わってきた一方で、ゆったりした時間やゆとりある生活から生まれる『やさしさや思いやり』を忘れてしまっている気がします。
生活の必需品になったとも言えるケイタイ電話やインターメット、電子メールなども同じような問題や弊害を感じます。
旅はあせらず、少しのトラブルなどは、楽しく感じられるくらいの余裕も大切です。"もったいない"のは、『旅は道づれ世は情け』という日本人の美徳の心を忘れてしまっていることだと思います。
普段の生活でもできるだけゆったり、楽しく、幸せに暮らしたいものです。(『もったいない』次号に続く)

お正月休みのゆとりのある時に、お薦めの本3冊をご紹介します<お薦め度>
  • 「ALWAYS三丁目の夕日」(小説版) 山本甲士著 小学館文庫<★★★>
    ※漫画も発刊、連載中 (映画も製作され去年公開されました。現在公開中の地域もあります)
  • 「パパラギ」  岡崎照男訳 立風書房<★★★>
  • 「大江戸泉光院旅日記」 石川英輔著 講談社文庫<★★☆>