地球は今

【地球は今...】もったいない(4)

このシリーズを毎回お読みの皆さんは、“私たちの生活が海外からの輸入によって支えられている”とお分かりだと思います。
今回は、さらに輸入が止まった時の日本の近未来を予測してみました。
予測で済めばよいのですが…。
では、近未来の予測を一緒に見てみましょう。  大阪事務局 渡辺裕文

私たちの献立の自給率は?

私たちが食べているものの原材料の大半が輸入に依存していることはシリーズ(1)(2)でお話しました。
原材料がそのまま食卓に上がるわけではありません。いろんな料理に変身したら自給率はどのくらいになるのでしょうか?

  • 和朝食 63%(お米は100%自給なので、お米を除くと20%)
    [ 献立 : だし巻卵、ひじきの煮物、大根のみそ汁、ご飯 ]
  • カレーライス 46%(お米を除くと8%)
  • 月見とろろそば 33%
  • 酢豚 27%
  • 洋朝食 23%
    [ 献立 : プレーンオムレツ、フルーツサラダ、ミルクティー、食パン ]
  • ハンバーグ 17%
  • 鳥のから揚げ 17%
  • 餃子 9%
  • ラーメン 8%
  • 五目焼きそば 8%
  • スパゲティ(ボンゴレ) 7%

皆さん、日ごろの食事を考えてみてください。
料理として食卓に並んでいると、その料理の自給率のことなどは考えずに食べていることがよく分かると思います。 (農林水産省 自給率資料より)

日本の食糧や資源エネルギーの自給率は?

【食糧の自給率】
次に、皆さんと考えたいのは、発表されている食糧自給率(右表)の「本当はどうか?」についてです。
米、イモ、野菜は一見自給できているように見えますが、他の食糧におされて消費が減っているからです。
もし小麦(輸入率86%、自給率14%)の輸入が止まり、パンや麺類など小麦製品が無くなると、自給率は米48%、イモ29%となります。
野菜もほとんどハウスもの、農薬野菜ですから、さらに石油などエネルギーの輸入が止まると、路地もの有機野菜だけになり、自給率は0.2%程度になります。
自給率の実態を知ると、日本は今まさに「瀬戸際」にたたされていると言えるでしょう。 (農林水産省 食糧需給表より)

【資源やエネルギーの自給率】
このデータは、もっとショッキングなものかもしれませんが、右表には0%に近い数字が並んでいます。
資源やエネルギーの輸入が止まれば生産はほとんど停止し、大部分の産業活動は止めざるを得ず、私たちの生活はガタガタと崩れていくことが予測されます。(経済産業省 総合エネルギー統計などより)

もし輸入が止まると、わたしたちの生活は?

輸入が止まると私たちの生活は急変し、こんな生活が始まります。

  • お店で売っているものの品数は?
    野菜80%、果物40%、肉5%、家具15%、靴3%、洋服2%、食堂の品20%、電気製品はほぼゼロ、雑貨品もほぼゼロになり、お店には商品がほとんどない状態となります。
  • エネルギーは現在の4%になり、電気や照明はほとんど使えなくなり、輸送もほとんど止まります。
    ⇒輸送が止まると、都市は食糧も物資も届かなくなりますから都市機能は停止します。
  • 家庭での生活は?
    照明は1日1時間、テレビは1日1時間、冷蔵庫は1日1時間、食事は1日1食、水道1日1時間、風呂・洗濯は1ヶ月に1回と、あたりまえと思っていた今の生活が10分の1、20分の1程度に制限されます。

私たちが豊かな国だと信じている日本は、貧しい国から原料を安く買って製品を高く売ることによって豊かになり、そのお金で豊かな生活を享受できるようになりました。
輸入が止まるとこのマトリックス(虚構)社会は根底から崩れます。今こそ私たちは、この現実に気づき、一人ひとりが「もったいない」をよく理解し、方向転換(価値観の転換)をしなければならないのです。

私たちは、巨大な自動車がほしいわけではない。
クローゼットから溢れるほどの洋服が必要なわけでもない。
真に必要なのは愛と信頼、尊厳、平和、自由、コミュニティである。
私たちは、それを間違った方向に求めてしまった。
その結果、不安や不満が物質拡大を招いている。
今こそ、意識・価値観を転換するときではないだろうか。
メドウズ博士「成長の限界」より

環境先進国といわれているドイツなどの欧州の国々が手本にしたのが、江戸時代の日本の循環型社会です。
日本は、100年前まで自給自足の循環型の社会が成り立っていました。
そして、本来農作物の生育に適した気候や土地があった日本で、農作物を作らないのはもったいないことです。
さらに、先人の知恵や生活を置き去りにし目先のことを追いかける虚構の社会の中で生きていることは、本当にもったいないですね。
価値観の転換を意識し、できることから始めてみませんか。

※参考文献  『成長の限界』、『限界を超えて』、『成長の限界-人類の選択-』 (3冊ともダイヤモンド社刊)