スペシャル対談

2006年4月号 幸せ成功力コーチ 野口嘉則さん

「人気ブログランキング(社会・経済[全般]ジャンル)」で、首位を独走する野口嘉則さん(写真左)のブログから生まれた『鏡の法則』が話題騒然となっています。その野口さんは10年前から『地球村』の会員です。コーチのお二人はすっかり意気投合の対談になりました。

「自分の中に答えはある」


高木 わざわざ広島からありがとうございました。まず、『地球村』との出会いについて、お聞かせください。

野口 10年くらい前です。当時、「目標達成のためのメンタルマネジメント」という講演をあちこちで開いていました。自分をコントロールして目標を最速で達成しようという、心理学的なテクニックだったのですが、徐々に疑問を感じることが多くなってきたんですね。というのは、目標を達成しているのですが一方で家庭がうまくいかなくなる人がいたり、業界では成功者といわれる人が実は孤独を抱えていたり。いろいろなケースを目の当たりにして、目標達成だけをサポートすることに疑問がわいてきたのです。「メンタルマネジメントの講演を聴いて、脇目も振らずに目標に集中できるようになりました」なんて言われると、「本当にその目標でいいんですか ? 」と問いたいケースが出てきたんです。

高木 「脇目を振れよ」と言いたいですよね。

野口 そうなんです。そんなときに、ビデオかご著書だったか、どちらが先だったか覚えていませんが、高木さんに出会ったんです。「本当の幸せとは何か」「自分だけの幸せは本当の幸せでは無い」「みんなの幸せこそ本当の幸せ」そういった考え方を知って、強烈な衝撃を受けました。自分はこういう考え方を持たないまま、どうすれば達成するかという技術的なことばかりやってきたのだと、気付かせていただきました。それが、高木さんとの衝撃的な出会いでした。

高木 それはうれしいお話です。

野口 高木さんの「この社会はモア・アンド・モア教だ」という言葉も、とても大きな気付きでした。この社会では、みんなが「もっと売り上げを伸ばし、もっと稼ごう」と考えています。私もそのことに疑問を感じずに応援してきたわけです。「モア・アンド・モア教」というシンプルな言葉が、「それでいいのだろうか」という気付きを与えてくれました。ご著書の中で、『オーケストラ指揮法』が最もインパクトがありました。質問に対して答えない、逆に相手に考えてもらって答えを出してもらう、そして相手の出した答えをまず認めて受けとめる。これはすばらしい !と思いました。この考え方が私の原点になって、今のコーチングの仕事につながっていると思います。コーチは、その人の中にある答えを引き出すお手伝いをするのだと。

高木 そう。答えは、自分の中にあるのです。私がそれを見つけた経緯は、『転生と地球』に書きましたが、もうひとりの自分との対話を通して、それまで常識だと思って、疑いもしなかったことが、ことごとくひっくり返されました。私自身、まさに衝撃でした。それが野口さんにも衝撃を与えたわけですね。

野口 そうです。すごくインパクトがあったのは『オーケストラ指揮法』の中にあった「気付きのじゃまをしてはいけない」という言葉でした。多くの場合、相手のためを思って、余計なことを言い、それが気付きのじゃまをしているわけなんです。

高木 そのとおりです。

野口 アドバイスしたり、提案したり、教えたり…。「じゃまをしちゃいけない」という言葉は私にとって大きな気付きでした。『鏡の法則』の巻末に『オーケストラ指揮法』をおすすめ図書としてあげさせていただきました。高木さんのご著書で、私が好きな本は何冊もあるのですが、一番影響を受けた本ということで選ばせていただきました。

高木 ありがとうございます。『鏡の法則』を読まれた方からも講演依頼が増えていましてね。今は、「オーケストラ指揮法」のテーマでも、「コーチング」についてお話しています。今まで、「オーケストラ指揮法」の講演では、「オーケストラの指揮者ってすごいですね。私にはとてもとても…」という反応が多かったのです。でも、本当はそういう話ではなく、「あなたもプロになれる !あなたも指揮者になれる ! あなたもハーモニーが作れる !」という話をしているのです。でも、それを「コーチング」ということと共に話をすると、伝わるんですね。それは野口さんのおかげです。ありがとうございます。

「すべてはつながっている」


高木 では、話題の『鏡の法則』についてお訊きしましょうか。

野口 このストーリーで私が一番伝えたかったことは「すべてはつながっていますよ」ということなんです。肉眼で見れば人間はそれぞれ別個の存在ですが、心の世界ではみんなつながっているんだと言いたかったのです。

高木 このお話は実話ですか ?

野口 はい。実話に基づいて書いています。主人公の心理は、私が憶測で書いた部分もありますが。

高木 『地球村』の仲間たちの間でも、「これ、すごいよ」ということで、メールで広く伝わっています。私も、「一つの事例をあそこまで丁寧に描くことで、誰にでもわかるように伝えられるのだ」と大いに感心しました。大いに学びになりました。

野口 あれは、ブログに4回シリーズで書いた記事なんです。あれを書いたとき、かつてないくらいの反響があって、コメント欄や個人メールでたくさんのメッセージをいただきました。それで、クリスマスプレゼントにしようということで、レポートにまとめてインターネットでダウンロードできるようにしたんです。すると、いろいろな方がブログやメルマガで「鏡の法則読みましたか?」みたいな感じで紹介してくださって広がっていったんです。この現象には、私もビックリしました。ネットコミュニティというのはすごいんだなあと思いましたね。

高木 ブログは「書き込み自由」にすると、変な書き込みで収拾がつかなくなりますが、前向きの意見や共感があるとホットになりますね。私も「書き込み自由」にはしていませんが、そろそろ、「書き込み可能」にしようかなあ・・・。

野口 私の場合も、「書き込み自由」ではなくて、承認が必要な「書き込み可能」設定にしています。

高木 みんなのためにも、それは必要ですね。

「幸せな人を増やしたい」


高木 今、力を入れていること、今後やっていきたいこと、ビジョンなどについてお話しましょうか。

野口 そうですね。一言でいえば幸せな人を増やしたいです。

高木 お !

野口 それが生まれてきた目的だと思うんですよね。

高木 おお !

野口 これは高木さんに教えていただいたことでもあるのですけれど。

高木 本気ですね。そうなら、私たちの目的は同じです !

野口 私がいうと失礼かもしれませんが、同じ方向を向いていると、私は思っています。

高木 それはうれしいですね。私は、「みんなが幸せな社会」を実現したいのです。それが私の願いであり、目的なのです。私よりもうんと若いあなたが、幸せな人を増やしたいと考えておられるのはうれしいことです。

野口 元々ベースとなっている仕事はコーチングなんです。コーチングというのは、目標を達成したいというエネルギーのある人が、どれだけ目標を達成していけるかというのをサポートするコミュニケーションスキルだと思っています。そこで、私が問いかけていきたいのは、「何が真の幸せなのか」ということです。

高木 うれしいね ! ボールが全部、ストライクゾーンに来ますね 。

野口 今回出した本では「幸せ成功力」という言葉を使っているのですが、「幸せ」と「成功」とは別のものではなく、「幸せになることが成功」だと思っているんです。でも世の中では、成功のイメージは、売り上げを伸ばすとか、業界何位になるとか、利益率を上げるとかになります。そこで、成功にもいろいろあって、孤独な成功やどこまでいっても満ち足りない成功もあれば、幸せな成功もありますよね。それでは、幸せな成功って何でしょうかと問いかけるようなコーチングを意識してやっています。この本で、特にテーマにしているのは「ビリーフ」という、信じ込み、思い込み、心のブレーキです。例えば、この本に出てくるある経営者の場合、幸せな会社にしたい、家庭も平和にしたいと思い、社員の声に耳を傾けようと思っているのに、反対意見を言われるとカッとなって相手を否定してしまう。そうではいけない、変わりたいと思っているのに、なぜかその場になると、反対のスイッチが入ってキツイことを言ってしまう。後になって反省する。これは「常に正しくあらねばならない」「社員は社長を立てるべきである」といったビリーフがあるんです。そういう信じ込みがあるばかりに、逆の行動をとってしまう。その流れに気付くことが、突破口になると考えています。「ビリーフ」は、社会で洗脳されたことであったり、親との関係でいつの間にか信じ込んでいたことだったりします。そこをまず紐解いて、本来の自分の幸せにとってブレーキとなっていることに気付き、そこから本当の幸せな状態を実現できる人が増えたらいいなというのが、私が今考えていることなんです。

高木 同感です。私はそれを「トラワレ」とか「モノサシ」と呼び、「モノサシを抜こう、トラワレを外そう」と言ってきました。同じことだと思います。野口さんの本を読んで、いいなと思ったのは、トラワレを外すのではなく、ポジティブで合理的なビリーフに変えようという提案です。例えば「あなたは誰よりも正義感が強い。その正義感が問題を起こすことがわかったら、もっとみんなにとっていいことをやっていこう。あなたの正義感を生かして、みんなの意見を聞いてやっていこう」と言われるのは、その人にとって「外せ」といわれるより受け入れやすいことです。ネガティブビリーフを、ポジティブビリーフに変える、それが言わんとすることではありませんか。

野口 ええ、おっしゃるとおりです。

高木 コーチングを通して、幸せを妨げるブレーキを外す、マイナスをプラスに変える、それはすごくいいことだなと思いました。

野口 さっき『鏡の法則』でもお話ししましたけれど、すべてがつながっているということを、みんなが理解できる世の中になればいいなと思います。私もこういうことをいいながら、肉眼で見える姿に心が揺れて、感情が波立つこともありますが、後から振り返ってみると、つながっていたなと思うんです。

高木 私の目標はね、個人で動いている人、ネットワークで動いている人、その人たちみんなを、グローバルにネットワークしていくことなんです。野口さんとも手をつないでいきたい。そういう想いの人たちが手をつないで、世界を変えていきたいです。それが『地球市民連合』という私の究極の願いなのです。

野口 わかります。ワクワクしますね。

高木 ぜひ一緒にやっていきましょう。ありがとうございました。

野口 こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

■野口さんのブログhttp://coaching.livedoor.biz/

お薦め書籍


『幸せ成功力を日増しに高めるEQノート』 野口嘉則著/日本実業出版社 刊定価1,260円(税込価格)「自分の中に答えはある」 ※こちらの書籍は、お近くの書店でお求めください