スペシャル対談

2006年5月号 LOHASプロデューサー イデトシカズさん


ミュージシャン、エンジニア、プロデューサー、そして最近では、ロハスの実践者として話題のイデトシカズさん(写真左)。彼の著書「いきいきロハスライフ !」には『地球村』が登場しています。さてそれはなぜなんでしょうか。 対談で明らかに !

※LOHAS(ロハス)は、 Lifestyles of Health and Sustainability の頭文字をとった言葉です。

「ロハスと『地球村』は一致していますか?」


高木 こんにちは。まずは『地球村』との出会いを教えていただけますか。

イデ 実は、僕は高木さんの大学の後輩でもあるんです。ただし僕は途中で、基礎工学部から軽音楽部に転部してしまいましたが…(笑)。

高木 そうなんですか。私も卒業は男声合唱団でしたよ(笑)。

イデ 僕はギタリストでデビューして、多重録音で音楽を作るオタクな世界に入りまして、シンセサイザーのオペレーターの仕事にかかわるうちに、徐々に理数系の頭が戻ってきたんです。そのあと、アメリカのソフト会社にプログラマーとして勤めることになって、シリコンバレーに87年から2001年まで14年間住みました。サンフランシスコには、紀伊国屋書店があります。今みたいにインターネットが普及していませんでしたから、よくそこへ行っては、日本の本を購入していました。94年に、船井総研創始者の船井幸雄先生の『エゴからエヴァへ』を読んで、そこで高木さんのことを知り、高木さんの著書を読むようになりました。『地球村宣言』『オーケストラ指揮法』などを読ませていただきました。

高木 それはうれしいですね。読まれて、いかがでしたか。

イデ まず、地球がそんなにひどい状態になっているという認識がなかったので、非常に驚きました。これはもっと事実を知らなければならないと思いました。そして僕もミュージシャンですから『オーケストラ指揮法』にはひどく感動しました。本を読んで泣くということはあまりないのですが、あの本はかなり泣きました。読んでいるうちにどんどん共感してしまって…。それで96年、出張で日本に戻ってきたときに、大阪事務局におじゃまして入会したんです。

高木 そうでしたか。それは嬉しいです。

イデ 2001年に帰国してから、ストレスケアのウェブサイトに関わりました。キーマンの方にインタビューするページがあったので、さっそく高木さんに取材をお願いしました。2002年くらいでした。

高木 癒しやカウンセリングのサイトでしたね。まだ続いているのですか。

イデ 運営は代わりましたが今も続いています。あの時、取材で高木さんにお会いして以来ですから、今日、こうして対談ができるなんて、それだけで感動しています。一つ訊いてみたいことがあるのですが・・・。高木さんが呼びかけておられるグリーンコンシューマと、高木さんが思われているロハス感は、果たして一致しているのか、そこがすごく訊きたかったんです。というのも、グリーンコンシューマとロハスは同じものではない、という捉え方もあるんです。この辺りどうお考えなのか、そこが知りたいのです。

高木 そうですね。ロハスは、環境と健康をコンセプトにしたニューウエーブだと思いました。ロハス商品と密接に結びついているような気もしましたが、いい流れだと思いました。みんながロハス商品を買えば、環境破壊商品はなくなるし大歓迎です。「ロハスは、『地球村』のイメージに合いますか?」と訊かれれば「もちろん」と答えるでしょう。むしろ、関係のないものはありません。ロハスが「心と体と地球にいい暮らし方」ですから、それは『地球村』のコンセプトそのものです。どんどんアピールしたいと思います。私は、世の中を変えるためなら、あらゆることをやっていきたいのです。

「ロハスのSはサスティナビリティー(永続可能)」


イデ 僕の本のサスティナビリティーの紹介で、「お薦めは、世界ではワールドウォッチの『地球白書』、国内では高木さんの『地球村宣言』です」と書かせていただきました。あの章を書いているとき、『地球村』と『地球村』の会員の人たちのことが、僕の頭にありました。日本に、市民レベルで、こういうNPOがあることをもっと知ってほしかったし、僕がロハスのSの部分を考える上で、高木さんの本の影響は、それくらい大きかったのです。日本ではまだ「生き方」の部分があまり紹介されていないので、もっともっと伝えていきたいと思っています。

高木 私も、ロハスのSがサスティナビリティーだと知って、「おお ! 知らなかった ! …」とうれしくなりました。

イデ そうなんです。日本ではロハスと言うと、「ビジネスロハス」が主流で、「生き方」の部分があまり紹介されていないのですが、アメリカでいうロハスは、生き方が基本になっています。よりよい自分になること、よりよい生き方に近づくこと、心も身体もより心地いい方向へ。ここを伝えていきたいです。高木 私が今、力を入れているのは「幸せな生き方の実現」であり、そして重要なポイントは、「非対立」と「五事」と「コーチング」です。もし急に「何か話を !」と言われたなら、これを話すでしょう。イデさんとしては、「今、一番伝えたいこと」はなんですかと訊かれたら何と答えますか。

イデ やはり「ロハスとはなんであるのか」という部分を伝えていきたいです。今の日本でいうロハスと、アメリカのロハスとでは必ずしも一致していないと思いますので、その根本にある部分をお伝えできればと思います。2番目には「ペイフォワード」という映画にもありましたが、ギブ・アンド・テイクじゃないパラダイム(価値観)というか、ロハスが広まっていったその向こう側に広がる世界を伝えたいです。3番目には「あなたのライフスタイルはなんですか」というような問いから、幸せにつながるライフスタイル、ワークスタイルを伝えていきたいです。結局3つとも、目指す方向は、永続可能であるということなんですけど。

高木 そうです。永続できるかどうかが最も重要ですね。

イデ ロハスが生まれたアメリカでは、90年代初頭に、ミッドエイジクライシス(中年の危機)と言い、一生懸命脇目も振らずに働いてきた人たちが、40歳後半になったときに「あれ?俺の人生ってなんだったんだろう」と立ち止まるケースが増えたんです。そのときにスピリチュアルな本やシンプルライフの本がベストセラーになりました。ロハスの流れというのは、その頃から始まっていて、物事の考え方とライフスタイルとを、両方シンプルにしようというものです。日本では、ヒルズ族などといって、いっぱい稼いでいっぱい使うことが価値あることのように思われています。しかしロハスでは、人生全般のバランスシートを適度にして負債を減らしていくのです。負債には地球環境も含まれていると思います。つまり、欲望を肥大化させる時代から、シンプルライフに移行するための、一つの道がロハスだと思います。今、アメリカでロハスに一番熱心な層は、ベビーブームの子どもたちの層で、エックスジェネレーションとかワイジェネレーションといわれています。彼らはエコ思想が強く、人と競争することをよしとしない価値観を持っているんです。

「ロハスも『地球村』もジョイントしましょう」


高木 ロハス的に、例えばこれから5年後、10年後に目指すところはどんなイメージですか。

イデ ロハスというのは一つの言葉に過ぎないと思います。5年後、10年後は、ことさらにロハスといわなくても、それが普通になりマジョリティ(多数派)になっているといいですよね。現在、ロハス的といわれる人は全体の1/3といわれていますけど逆転したいです。

高木 1/3ですか。それはかなり多く見積もっていますね。

イデ 本当にコアなロハス層と、そうでない人たちがいるとは思いますが、大体これくらいいるだろうという数字です。それが50%になり、70%になり、こっちが主流になり、最初は小さな地域や職場などでロハス的な現象が起こり始めて、ひいては国家や地球レベルで、さまざまな現象が起きていくのではないかと思っています。日本では、ヨーロッパの「オリーブの木」や「緑の党」という現象も今まではなかなか起きなかったけれど、ロハス的な市民、自分で考えて自分で選択する人が増えることで実現すると思います。そういう流れに、僕も何らかの形で参画したいし、リードしていく立場になっていたいです。僕はアーティストでもあるし、自己表現の活動をしていきます。本を書くこと、ギターを弾いてアルバムを作ること、そういう部分をやりながら、自分を高めていって、そこに共感してくれる人が増えたらいいなと思っています。

高木 なるほど。その路線で、一緒にやれることがあるかもしれませんね。お互いの活動で何かハーモニーが生まれるといいですね。

イデ 僕もこの対談で、高木さんの目指すものと、ロハスの方向性が、同じだというメッセージが出せればいいなと思います。

高木 それははっきりしています。ロハスのイメージはおしゃれでクールでスマート。ぜひそこからたくさんの人に入ってきてほしいです。入り口は入りやすいものの方がいいのです。そして「根本は生き方」ということを理解してもらいましょう。

イデ 高木さんにご協力いただくと、ロハスの流れも、より原点に戻せると思います。流行じゃないロハスにしたいです。『地球村』にはロハス的な人が多いと思いますし。

高木 ありがとう。もちろん、『地球村』には、ロハス的でない人はほとんどいないと思いますよ。

イデ そうですね。ロハスの消費者層とオーバーラップしていくでしょうし、消費者運動にもなるのではないでしょうか。

高木 今度、「ロハス」というタイトルで講演をします。私もイデさんとジョイントしたいし、イデさんのセミナーにも、私を呼んでくださいね。潜在的ロハス人口は意外と多いかもしれませんね。私の講演を聴いてくれた人は100万人以上います。同じ価値観の層はたくさんいますよ。

イデ 龍村仁(監督)さんの映画「ガイアシンフォニー」を見た人は180万人いるそうです。この層も同じ側にいる人たちだと思うんです。高木さんやロハス、そして「ガイア」、いろいろとジョイントすることで同じ側にいる人たちが手をつなげますね。

高木 ぜひ今後もコラボレーションしていきましょう。

イデ よろしくお願いします。
■ 「いきいきロハスライフ ! 」 ホームページ
http://lohas-life.jp

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『Simply Natural - Music for LOHAS -』 To Be Acoustic (ユニット名)著
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