2006年7月号 特集 脚本家 倉本聰さん
6月3、4日の2日間、北海道富良野市を訪れた高木さんと『地球村』富良野自然塾ツアーの31名は、富良野塾公演「地球、光りなさい!」を観劇し、脚本家・倉本聰さんが塾長を務める「SMBC環境プログラム C・C・C富良野自然塾」を体験してきました。その夜に、倉本さんがプロデュースした「Soh's BAR」において、お二人の対談が行われました。
豊かさも便利さもストップ !
高木 この2日間、本当にありがとうございました。4月に「報道ステーション」で「富良野自然塾」を紹介しているコーナーを見て、すぐに先生に電話をさせていただきました。地球の歴史46億年を460メートルで表現した「地球の道」のところで、「人間のやっていることなんか、この赤い線の1ミリの線以下なんだよ」とおっしゃるのを聞いて「ぜひ、先生とお話したい」と思いましてね。それで今回、地球村団体会員『hanna』の木下さんにツアーを組んでもらいました。
倉本 高木さんとお会いしたのは、いつでしたっけ。
高木 2001年3月、富良野の講演会に、先生においでいただき、翌日私が先生のお宅におじゃましましたので、5年ぶりです。ところで、『北の国から』の舞台、富良野の大自然を見せていただきましたが、本当に長い構想で始められたドラマなのですね。
倉本 いや、そうでもなくて、最初の1シリーズで終わる予定でしたが、あまりにも反響が大きかったのと、実際の子どもたちの成長がおもしろかったんですね。1年間で、背も10~15センチ伸びましたし、この変化を追いかけていきたいという気が起きちゃって、それから延々とああいうことになっちゃいました。
高木 そうだったんですか。素晴らしいメッセージを感じるドラマでした。
倉本 最初に僕の中にあったメッセージは、昭和40年代の暮らしで、豊かさや便利さをストップしたいという考えがあって、それを五郎さんの生き方で伝えたいというものでした。
高木 豊かさを止めたいというお考えは全く同感ですが、そういうお考えは、いつ頃からですか。
倉本 やっぱり富良野に来てからでしょうね。こっちへ来て一番衝撃的だったのは闇です。東京からこちらへ越してきたとき、大工さんの予定が遅れていて電気が入っていなかったのです。東京では体験できない真っ暗闇ですから、最初の夜はもう一睡もできなかったですね。朝、白々と明けてきたとき、こんなにも太陽は明るく暖かなものだったのかと感動しました。そのことを忘れていた自分に愕然としました。あのまま東京にいたら、未だに闇の暗さも、環境問題もわからなかったと思います。
高木 昔の人は、暗黒の夜と、光りの昼とを、常に感じていたのでしょうね。
倉本 そう思います。実は来年、富良野自然塾で「闇の教室」というのをやります。地下に真っ暗闇の部屋を作って横に寝てもらい、動物がカサコソ歩く音や沢のせせらぎを聞いたり、満天の星を見たりする体験を味わって貰おうというものです。
高木 それは楽しそうですね。また来年も来たいです。
ゴルフ場を元の森に戻そう
高木 売れっ子の脚本家が富良野に移住するというのは、考えてみたら大変なことですね。その上、富良野塾を作って文化を創造してこられたわけですから。
倉本 これは、神様の采配だと思います。気がついたら富良野へ来ていたという感じなのです。富良野塾を作ったときは、若者たちがここまでやるとは正直思わなかった。富良野塾を始めて23年目ですけれど、ここまで続いた理由は、彼らの凄いパワーと、それと一切借金をしなかったことだと思います。最初は400万を資金に、それからは、100万、50万とお金が貯まるのを待って塾に使いました。
高木 なるほど。しかし、富良野自然塾の方は、そうはいかないのでしょう。
倉本 こっちはスポンサーと会員さんの支援がないと難しい事業です。年内に会員1000人をめざしています。読者のみなさん、『地球村』のみなさんも会員になって支援してください。
高木 わかりました。呼びかけさせていただきます。
倉本 ところで、今日の僕の説明はどうでしたか。科学者から見て間違っているところはありませんでしたか?
高木 間違っているわけではありませんが、少し気になったところが2ヶ所ありました。一つは「コラーゲンが調子に乗って恐竜になった」という説明はユニークでした。生物が巨大化したのは、地球の温暖化でシダ類など植物が豊富になり、草食動物も肉食動物も巨大になっていったという説明の方がいいでしょうね。
倉本 なるほど。じゃあ、アメリカ人の食事と体型を例に出せばいいね。あと1ヶ所は?
高木 6500万年前の巨大隕石の衝突で、「地球の裏側までめくれた」という説明はちょっと言いすぎですね。
倉本 ああ、僕、そう言っていますね。
高木 衝撃波は地球の裏側まで届きましたが、クレーターの跡が残っていますから、めくれあがったわけではありません。あの場面では、「イリジウムという珍しい金属が地球全土にばら撒かれた」という説明を補足するといいでしょう。
倉本 イリジウムですか?
高木 ユカタン半島に落ちたイリジウム小惑星は、地球に落ちて大爆発を起こし、地球全土にイリジウムを撒き散らし、地球の温度を下げて恐竜を絶滅させたということです。
倉本 僕たちは文科系の人間ばかりだから、そういうことがよくわからないんですよ。高木さんがいてくれるといいなあ。そういえば、以前いただいた温暖化のデータも、とても参考になりました。これからもよろしくお願いします。
高木 いつでもお役に立ちます。こちらこそ、これからもよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。
http://www.furano-shizenjuku.yosanet.com
富良野プリンスホテルの元ゴルフ場(6ホール、33.4ヘクタール)を、元の森に戻す植樹と環境プログラムとを行う事業。土地の生態系にあった樹木を、実生(みしょう)から育てて苗にして植えています。
【年会費】個人会員3,000円、法人会員3万円
【加入者名】C・C・C富良野自然塾 【口座番号】02750-4-95693