スペシャル対談

2006年11月号 BeGood Cafe代表 シキタ純さん


「BeGoodCafe(以下、BGカフェ)」は、地球環境や社会問題など毎回異なったテーマについて、ゲストと一緒に本音で語り合う、若者の交流の場。東京を中心に各地でイベントをしています。高木代表も以前ゲスト出演しました。今回は、紙上で代表のシキタさんとの熱いトークをお楽しみください。(写真左がシキタ氏)

様々な意見情報から選択するBGカフェ


高木 こんにちは。よろしくお願いいたします。私たちの出会いは、2003年、東京でBGカフェが開催されたときにゲストスピーカーで呼んでもらった時でしたね。

シキタ いえ、実はその前に「オピニオンズ」という環境ビデオ映画を制作したときに、取材させていただいたのが出会いです。その何ヵ月か後にBGカフェに来ていただきました。その節はありがとうございました。

高木 ああ、そうでしたね。取材のとき、どのように感じましたか。

シキタ 問題をよく整理されて、豊富な情報で、問題をわかりやすく伝えていく力が、本当にすごい、と思いました。私も人に話すときに、高木さんから伺った話を使わせていただいています。今、全米で、前副大統領アル・ゴアさんの映画「An Inconvenient Truth(「不都合な真実」)」が大ヒットしていて、日本でも新春から公開されます。うちのスタッフが試写会を見てきて言うには、アル・ゴアさんも、さまざまな地球温暖化の情報を、グラフを交えて講演されているのだそうです。そう聞いて、きっと高木さんのように客観的事実を積み重ねていく講演スタイルなのだろうなあと、想像しました。

高木 事実をきちんと伝えるには、「事実を淡々と語る」「熱い思いを伝えない」…。その方が人を感動させることに気付いたのは、20年以上前でした。

シキタ 私たちのBGカフェのアプローチというのは、豊富な情報量を持っていない代わりに、バラエティ的にさまざまな人や情報を提供することなのです。「いろいろな意見の方がいます。情報ブースもあります。さあ、みなさん、情報をお持ちください」というやり方です。

高木 それは、いいやり方だと思いますね。例えば、原発の反対派も推進派も、一緒に話すとおもしろいでしょうね。

シキタ それ、一度やってみたことがあるんですよ。

高木 おもしろいですね。で、どうなりました?

シキタ 推進派には技術者の女性が来て、反対派には男性が来ました。中立の方にも来ていただいたのですが、会場は反対派ばかりなんです。とうとう女性が泣き出してしまいました。すると会場にいる男性の方が、「そこまで言うのはかわいそうじゃないか」と言いまして、場が妙に和やかになりましてね。キツイ言葉や力では解決しない、向こう側にも必ず人がいるんだということや、ケンカをしないで解決するにはどうしたらいいのかということに、会場にいるみんなが気付きまして、あれはあれでよかったと思いました。

高木 その考え方をね、私は「非対立」と呼んでいます。問題解決のためには、相手から学ぶしかない、これが基本なんです。反対派は推進派から、推進派は反対派からしか学べない。相手の立場を理解することによってでしか学べないし、解決できない。「自分が正しい、彼らは間違っている」と思えば永遠に平行線なのです。それを一つの土俵で観客に見せることができるBGカフェは、『地球村』シアター(劇場)という感じがします。

シキタ 互いの意見から学び合う…。それができればすばらしいですね。ただ私は、例えば憲法の問題でも、右から左まですべての意見をまとめ上げる力はありませんから、ファシリテーションといいましょうか、あそこに着地させようという範囲内で意見共有をしているところですね。

白も黒もない、グレーに


高木 憲法9条も靖国問題の話もおもしろそうですね。私も呼んでくださいよ。

シキタ 高木さんと憲法ですか。それは思いつかなかったなあ。

高木 政府は国民に、「軍隊が無くて攻められる国と、軍隊が有って攻められない国とどっちがいいか」と問いかけていますが、それは、昔、戦争に突入する時の問いかけと同じです。しかし、私は、「軍隊が有っても攻められる国と、軍隊が無くても攻められない国とどっちがいいか」と問いかけたいのです。ケンカをやめるには、これまでやってきたことと正反対のことをすればいいのではないでしょうか。

シキタ いいですね ! 確かにその通りです。領土問題にしても、メディアが伝えるのは「上陸した。占拠した」というようなポイントだけ。私も含めて普通の人たちは「取られたら大変じゃないか。もっとガンガン行けよ」という気持ちに陥りやすいのです。そうじゃなくて、全体としてどういう状況なのか、俯瞰(ふかん)して物事を伝えてくれればと思います。

高木 例えばね、「結婚したんだから、飯はおまえが作れ」と、いくら言っても、相手が「作りたくないわ」といえば仕方がないんです。「君のご飯はおいしいな ! 作ってくれない ? 」とか「面倒ならいっしょに外食する ?」と言えばいいんじゃないかな。お互いに、相手を尊重するか、もっと大人にならないと。領土問題はお互いに譲らないと軍事的衝突もありえます。そうなったらどれほどの損害(ダメージ)があるか冷静に考えれば、仲良くするしかないんですよ。

シキタ 高木さん、テレビに出て、そういう話をドンドン言ってくださいよ。メディアは、どうもそういう論調になりませんね。

高木 そうしたいです。ぜひ、呼んでもらうよう、働きかけてください。今の風潮は、どちらがいいか悪いか、白黒をつけたがるのです。

シキタ ぜひグレーにしてほしいですね。北朝鮮のミサイル実験の報道にしても、危険だなと思います。

高木 私をBGカフェにどんどん呼んでください。どんなテーマでもグレーにしますよ。互いの意見が聴ける場にしますよ。

シキタ アースデイ(4月22日)の頃、そういうのをやってもいいですね。

高木 いいですね ! ぜひやりましょう !

シキタ アースデイは環境がメインですが、平和に暮らすことが、環境の基本だと思います。高木さんの憲法や平和のお話、きちんと伺いたくなってきましたので企画を考えます。ネタとしても使わせてもらいます。

エコビレッジのため協力し合いましょう


高木 ところで、BGカフェは、2期に入ったということですが ?

シキタ BGカフェは、トークイベントを開催して情報を共有したり、価値観が似ている人たちがつながったりする、ソーシャルハブ(人々の出会いや結束)としての活動をしてきました。東京では93回、そのほか全国12ヵ所で年に1~3回開催しています。それが1期の活動で、現在は2期と言いますか、ソーシャルハブの力で、コミュニティソリューション(地域の問題解決)という活動ができるようになったんです。例えば、小田原で「オレンジプロジェクト」というのをやっています。以前はみかんの産地だったところが、国産みかんの値下がりで農家離れが始まり、雑草も伸び放題。このままではツタにやられて、みかんの木が死んでしまうということで、行政からボランティアの依頼があったんです。そこでBGカフェとして農業体験しようと呼びかけ、人を集めて雑草取りをしています。そこは、放ってあった農園ですから無農薬なんです。それを年末に収穫してエコプロダクトで販売するプロジェクトを始めました。ほかにも、富士急行が山中湖に持っている土地を、持続可能型ライフスタイルを体験できる宿泊施設にするプランを、我々が提案して、彼らの資金で建設をしているところです。このように、地域で問題が起きているとき、我々が持っているネットワークや知恵で解決し、その上、若者の農業体験とか、地域起こしとかプラスの効果も創造できるようになりました。これを2期と捉えています。トークイベントも相変わらず続けていまして、毎月100人くらいの方がいらしてくれています。

高木 なるほど。おもしろい展開ですね。そういったプロジェクトに参加する人は地元の方が多いのですか。

シキタ ほとんどが東京の方ですね。我々のメールニュースを読んで参加したという方が多くて、BGカフェも知らずに、オレンジプロジェクトにだけ来る人もいます。

高木 もし、必要なら、私も『地球村』の仲間に呼びかけますよ。

シキタ そうですか! これから山中湖や、いくつかの案件があります。お力添えいただけるとありがたいですね。来年は、奥多摩の日原というすごい山奥で、子どもを対象にしたサマーキャンプをやろうと思って、助成金集めに走り回っているところです。日本では、林業は崖っぷちですし、そこは年寄りたちと外から来たインタープリター(自然案内人)しかいないんです。そこで交流の場ができればと考えています。

高木 お話を伺っていると、コミュニティソリューションを進めていくと、エコビレッジになるなあと思いました。

シキタ 私も、行く先の大きな目的は、エコビレッジだと思っています。みんなが支え合う地域というのを本当に作りたいと思っています。できれば、自分もそこの一員になりたいと思っております。

高木 エコビレッジは、日本語訳は『地球村』となります。実は、25年前、私もこのことをイメージしたんですよ。地球と調和する『地球村』が生まれ、『地球村』がどんどん増えていくことで、「美しい地球」が実現することを。それがネットワーク『地球村』の名前の所以です。シキタさんのなさっていることはまさに『地球村』です。

シキタ そうなんですか。がんばります。若い人たちが、本能的に現在の価値観に違和感を覚え始めて、私たちの世代の動向に対して、非常に関心を寄せていると思いますよ。思いっきりいいお手本として、農的暮らしをして見せてあげるのがいいんじゃないかと思いますね。

高木 虚構の世界、仮想現実の世界であるマネーゲーム社会を、本能的に嫌っているのでしょうね。本能には、マネーや経済拡大はありませんから。人類の歴史100万年の中に、マネーが登場したのは、本当にごく最近ですので、DNAが受け付けないのは当然ですね。

シキタ 今まで持たされてきた価値観とは異なる選択でもっと楽に生きていけることに、目を向け始めている人たちがいることに、楽観的に思っています。もちろん、地球温暖化のことを考えると、とたんに悲観的になってしまいますが…。ところで温暖化といえば、メタンハイドレートというのは、開発すればブクブクと温暖化ガスを出しますし、とても危険ですよね。でも、開発を進めたほうがいいという話はあっても、やめたほうがいいという論調は聞きませんが…。

高木 とても危険なことです。メタンハイドレートはメタンガスがシャーベット状に固まったものです。メタンガスは二酸化炭素の20倍の温暖化係数をもち、大気中に放出すると温暖化を加速します。もちろん燃やすと二酸化炭素を発生します。もし、海水温度が数℃上昇すれば、突沸が起こり大量に噴出します。過去にも起こった痕跡があり、北欧の海底には巨大なクレーターが無数にあります。その時は、地球の温度が10℃上昇したらしい。メタンハイドレートは、こうした多くの問題を抱えています。

シキタ 何という危険な問題でしょう ! 最近の高木さんの講演を聴いていなかったから知らないことが多いです。もっと勉強させてください。

高木 国や企業の宣伝する「環境にやさしい技術」は、企業利益を誘導するために、多くの誤りや意図的なウソがあります。9割は、地球環境に逆効果です。どうぞ、そうした事実をよく知って、間違いのないエコビレッジを作ってください。エコビレッジは、人類の未来の希望です。そこに大きな誤りがあってはいけません。

シキタ そうですね。現状をきちんと知っていないといけませんね。伺ったことは、また受け売りさせていただきます。

高木 シキタさんは、今後も、多くの機会に恵まれていますから、「これはおかしい、これはあやしい・・・」など、疑問を感じることもあるでしょう。そんなときは、どうぞ遠慮なく私に訊いてください。私は、どんな問題でも、大切なポイントを調べて、お知らせできると思います。

シキタ それはありがたい。よろしくお願いします。ところで、来年4月のアースデイは、 BGカフェ100回記念でもあるんです。そこで、もっと影響力のあることをしたいなと思っておりますので、ご一緒に何ができるか、考えていければうれしいです。メタンガスが噴出する前に解決できるようによろしくお願いします。

高木 では、具体的に相談していきましょう。


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