巻頭言

【巻頭言】いじめ ~ひとりじゃない~ (1)

「いじめ」問題を中心に、「いのち」「生き方」について連載しようと思います。「コーチング」とも大きなつながりがあります。

★はじめに
ここでは、「私はこう思います」「こうすればいいです」という講演スタイルではなく、「どう思いますか」「どうすればいいでしょう」というワークショップスタイルで進めたいと思います。
でも、実際にご意見をお聞きすることもできませんし、次号まで一ヶ月かかりますので、実際のワークショップのようには進められません。できるだけ共に考え、意見を述べながら、誌上ワークショップに参加してください。

★いじめとは
ちょっと意地悪をする、ちょっとふざける、ということは自然界にもありますし、社会でもよくあることです。ただし、それが長く続いたり、エスカレートするのはおかしなことだと思います。
ここで、問題は二つに分かれます。「ともかく、現状、どうすればいいか」という具体的な対策と、「なぜ、長く続いたり、ひどくなるのか」という根本的な問題解決です。

★具体的な対策(深刻ケースや緊急対策)

状況によって、その対応は異なりますが、とにかく最悪の事態を避けるための具体案を挙げておきます。
・ 状況によっては学校(会社)を休ませる
・ まず学校(会社)と相談、解決を頼む
・ 対応が甘い場合、教育委員会(労働局、労働基準監督署)に訴える
・ それでも対応が甘い場合、警察に訴える
・ または、加害者の親と話をする
・ または、転校(引越し)する
・ それで、また問題が起これば、また転校(引越し)する

★いじめは、なぜ起こるか
(誌上ワークショップです。まずは、お考えください。考えた上で次をお読みください)
答えは一つではありません。答えも考え方もいろいろあって当然です。

でも、一つ言えるのは、「幸せな人は意地悪はしない」ということです。ストレスがたまり、むしゃくしゃしているのでしょう。腹が立つのでしょう。それを他人にぶつけたくなるのでしょう。
子どもだけではありません。おとなの方が問題は大きいです。
おとなの場合、もっと問題が大きい場合には「犯罪」「事件」と呼びます。それがさらに大きくなると、「紛争」「戦争」と呼びます。

子どもの「いじめ」も、おとなの「いじめ」「事件」「犯罪」も、国家レベルの「紛争」「戦争」も、根本は同じではないでしょうか。ストレス、不満、怒り、さらには利害の対立、意見の対立などが原因です。学校だけではなく、職場でも起こっていますし、地域でも起こっていますし、国内でも、国家間でも、世界規模でも起こっています。

昨年の「郵政の民営化」をめぐって、反対した自民党議員が党から追放されました。あれは、意見の相違によるいじめではなかったでしょうか。
また何かで目立った人や成功した人が、周りからねたまれて足をすくわれたり、足を引っ張られたりも、ある種のいじめではないでしょうか。

気に入らない部下に仕事を与えない、昇格させない、左遷する、クビにする、それもいじめと紙一重ではないでしょうか。私も、大企業でいろんな人事問題(悲劇)をよくよく見てきました。その経験で言えば、客観的な評価よりも、個人的な好み(報復人事)の方が優先する場合があります。採用も、給与も、昇格も、問題があります。
学歴による格差も、派閥も、差別であり、いじめではないでしょうか。現状の社会では、つねに利害の対立、不自然な競争が続いているのですから。

自然界にも競争はありますが、自然界の競争は生きるための競争です。
ライオンは手当たりしだいに狩りをしません。必要なだけしか食べません。必要以上の競争や蓄積はしません。ここが決定的に違います。

それに対して、私たちの社会の経済競争には限度がありません。
最初は「就職できてラッキー!」だった人も、収入が増えるにしたがって、月収50万円でも、100万円でも満足せず、
「○○さんは○○万円もらっている!うらやましい!」
「私は○○万円しかもらっていない!腹が立つ!悔しい!」
などと際限のない欲望とストレスを膨らませているのです。

企業の競争にも限度がありません。売上100万円、1億円、100億円となっても競争に終わりはないのです。「新製品」「新規事業」「事業拡大」など際限ない拡大をめざすのです。
そして、お互いに足の引っ張り合いをしているのです。

私たち豊かな国の人々は、貧しい国の人々の100倍の贅沢をしています。それが、環境破壊、資源枯渇、世界の破局に導いているのです。にもかかわらず、いまだに総理大臣も、政治家も経営者も、会社員も主婦も、口を開けば経済拡大を求め、「もっとお金がほしい」と思っているのです。
お金は最悪の麻薬です。際限のない欲望を煽ります。言うならば、この社会は「お金の中毒患者」でいっぱいの狂った社会です。このままでは世界の破局が避けられないのに、その事実を認めようとせずに、まだ経済拡大をやろうとしているのです。
話がちょっと進みすぎたかもしれませんが、これは全国ロードショーが始まったアルバート・ゴア(前アメリカ副大統領)監修の映画「不都合な真実」でもはっきりと述べられています。

ここまで読んで、どう思われましたか。

・ 現状の社会は、不自然な競争、際限のない競争の社会
・ そこでは、勝っても負けても、競争から逃げられないからストレスがたまる
・ ストレスがたまると、むしゃくしゃするし、何かに発散したくなる
・ 発散は、趣味、リクレーション、スポーツならまだいいのですが、酒、タバコ、ギャンブル、性、麻薬、暴走、暴力、犯罪・・・など
(これらの線引きは難しいです。これらを法律で禁止している国もあります)

この社会は、際限のない競争社会、ストレス社会、その中で勝った者も、負けた者もストレスがたまり、いっぱいいっぱいになっているのです。(つづく)

 

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