巻頭言

【巻頭言】いじめ ~ひとりじゃない~ (2)

★いじめとは
人間社会の現象は、自然界を調べることでヒントが見つかる場合が多いです。
自然界にはいじめはありませんから、いじめは不自然な社会の社会現象です。
しかし、人工的に動物を飼う場合、たとえば狭いオリに多くの動物や家畜を飼う場合には、いじめや殺し合いが起こります。虫かごに虫をたくさん入れても、水槽にたくさんの魚を入れても、同じことが起こります。

実は、自然界でも、個体数が一定の数を超えると、交尾しなくなったり(産児制限)や育児放棄(子殺し)もあることを考えると、いじめは過剰な個体数を減らそうとする本能かもしれません。つまり強いものが、弱いものを排除して一定の数を保とうとするのかもしれません。

これを読んでショックを感じるかもしれませんが、根本原因を知ることで、問題解決を考えなければいけないと思います。

★いじめはどこにでも
いじめは、学校、職場、家庭、親戚、地域どこにでもあります。
昔からあった嫁と姑(しゅうとめ)の対立も、亭主関白も、村八分もいじめと言えなくもありません。
個人情報、プライバシー、著作権なども、時代によってどんどん解釈が広がり、適応範囲が拡大してきましたが、いじめも解釈によっては、どんどん適応範囲が広がってくるでしょう。
会社などの上下関係、支配、管理、統制、秩序も、いじめかもしれません。
国が、法律や権力で、個人に何かを強制することもいじめかもしれません。
人によって、感じ方は異なるのだということを理解しなければならないのです。
自分がなんとも思っていないことでも、相手は「傷つけられた、いじめられた、耐え難いダメージを受けた」ということもあり得るのです。
現状の社会は不自然な社会で、つねに不自然なストレスがかかっているのです。
その不自然なストレス、過剰なストレスによって、身も心も病んでいる人が非常に増えているのです。

★心身を病んでいる人の数
学校で、いじめ、勉強、宿題、受験のストレスなどで悩んでいる子は5割以上でしょう。職場で、いじめ、仕事、人間関係などで悩んでいる大人も5割以上いるでしょう。むしろ、「悩みはない」と言い切れる人は1割くらいではないでしょうか。
厚生労働省の統計では、「心身を病んでいる人は約250万人」ですが、病院に入っていないけれど自覚症状のある人や予備軍を含めるとその20倍、5千万人、全人口の半分に達します。つまり二人に一人は危ないのです。

★その原因はストレス
人口の半分が危ないというのは異常な事態であり、その数は50年間で50倍に増えています。その原因は、ほとんどがストレスです。
学校、職場、家庭、地域、仲間などのストレスの原因は、
・過剰な競争、無意味な競争
・目的が無い生活、先が見えない生活
・希望が無い状態、目的がわからない仕事
・生活苦、人間関係、経済的苦労

★いじめの予防、防止(根本的解決)
根本的には、いじめている側(大人、子供)のストレスや環境を改善すること。
学校では教師や校長に、職場では上司や責任者に多くの責任があります。
まずは、基本的な(納得性のある)ルールや規律、秩序をつくること。
・ストレスがたまらないように努力すること
・開放的、風通しのいい環境を作ること
・不当な圧力、不自然な雰囲気を改善すること
・目的のわからない勉強や、意味不明の仕事をなくすこと
・言いたいことが言える雰囲気を作る
・密室、死角を作らない
・過度な冗談、ふざけを見過ごさない
・互いを尊重する風土を作る
・まずは、教師が生徒を、上司が部下を馬鹿にしない
・教師が生徒の意見を、上司が部下の意見を、よく聞く、受け止める
・いつも納得のできる会話、対話をする
・明確な目標、はっきりした希望を持たせる
・信頼関係、よい人間関係を築く
★いじめの対策(具体的な対策)
・クラス、職場、チームを 「よく見る、よく聴く、受け止める」 (「三事」)
・できるだけ、ふだんから会話、対話をする
・できるだけ、個人、チーム、グループの意見を聞く場を作る
・意見をよく聴く、受け止める。
・要望、意見、クレームには、納得できる話し合いをする
・必要なら個人の話を聴く
・いじめを確認できたら、周囲の人の意見を聞く
・関わっている人(加害者、被害者)の様子をよく理解する
・関わっている人物の性格、性向をよく理解する
・3台のカメラ(視点)をもつ。1カメ(いじめられている人の視点)、2カメ(いじめている人の視点)、3カメ(周りの人の視点)
・緊急度の判断と確認
・人の意見を聴くとき、「言わんとしていること」をよくつかむ。被害者はよく「大丈夫です」と言いますが、本音が言えない状況かどうかを見抜く。
・親が子供と相談せず、学校に怒鳴り込んだり、大騒ぎをしたりするのは最悪です。その場合、かえって問題を大きくする。問題の解決にならない。
・緊急性の高い場合、慎重に責任者に状況を伝える
・絶対にあきらめない。長期戦を覚悟する。
・一人で悩まない。抱え込まない。相談所、専門家に相談する。
・人の意見はよく聴くこと。しかし、振り回されない。人の意見は、「受け止める」こと。
・しかし、人の意見は、「受け入れない」こと。つまり、信じ込んだり、無条件に従わないこと。
・いろんな意見を聞く、よく考える、当人とよく相談する
・当事者の意見を尊重する
・自分のメンツやプライドで衝動的に動かない
・自分の判断のベースは何か、よく確かめる
・自分の判断のベースが「怒り、憤り、正義感」であれば危険
・すべてのトラブルは、「怒り、憤り、正義感」が原因
・すべての争いや戦争は、双方の強い「怒り、憤り、正義感」が原因

今回はまず「いじめについての全容」をつかんでもらうために、要点をまとめて書きました。
次回から、この中の重要な問題について、説明していこうと思います。