巻頭言

【巻頭言】いじめ ~ひとりじゃない~ (3)

★基本的な認識

その1
いじめは、基本的に、いじめている側に問題があります。
いじめている人は、ストレスが高い、不満が大きい、我慢している。
そのストレスを弱い者に発散させる。
だから、そのストレスを減らすことが必要なのです。

その2
いじめは、ストレスの発散でもありますが、そのベースは、「自分を認めてほしい」「自分には力があるんだ」というアピールでもあります。
だから、スポーツやクラブ活動などで十分エネルギーを発散したり、活躍したりしている人は、いじめはしません。
その人が活躍できる場、認めてあげる雰囲気を作ることが大切なのです。

その3
いじめの最大の原因は、「無知、無関心、無責任」「放置、何もしないこと」です。
「いじめは犯罪なんだ」という意識を持ち、機会あるごとに、「それはひどい、それはかわいそう、それは許されることではない」という話をして、いじめを許さない風土を作ること。

★いじめへのアプローチ

いじめに気がつけば、まずいじめている側にアプローチすること。
その際、「いじめをやっているだろ!」「いじめはだめだ!」というアプローチはよくありません。かえってストレスを高めてマイナスになることが多いです。
「先生に相談したら、よけいいじめがひどくなった」ということも少なくありません。
まずは、「最近、どうしてる?」「うまくいってる?」のような感じ(コーチング、カウンセリング)で、じっくり話を聞くことです。
すぐには素直に話さないかもしれません。それは、信頼がないからかもしれません。
その改善のためにも、やさしく話しかけ、じっくり話を聴くことです。
そのことで、「自分を認めてくれている」という安心感と、「いじめを知っているのかなあ」という自覚が始まり、いじめの改善に効果があります。

★いじめられへのアプローチ

いじめは全員に向かう場合は少ないです。
つまり、たくさんの中から、いじめやすい人が標的にされます。
いじめやすい人とは、どんな人でしょう。

1.目立たない
人より小さい、細い、弱い、おとなしいなど目立つ特徴を持っている場合、標的にされやすいです。その場合、できるだけ、みんなとつながること。
友人を増やす、たくさんと一緒に行動する、誰とでも話す。
学校であれば、先生とも仲良くなる、などなど。
自然界で、弱いものはたくさんの群れで行動します。あれと同じです。

2.黙っていない、我慢しない
いじめる側は、人に言われるのを恐れます。
はじめは「人に言われないか」とびくびくしながらいじめます。
しかし、人に言っていない様子がわかれば、だんだん安心してエスカレートします。
いじめの予防は、早い段階で、「周りに言う、人に言う」ことを実行することです。
もし、タイミングが遅れても、気づいたときに、いつでも、「もう我慢できない!これ以上続くなら、みんなに言う!警察にも言う!」と毅然たる態度が必要です。
「これ以上したら」と言うことで、相手を追い詰めないこともポイントです。

3.孤立しない、引きこもらない
いじめる側は、自分が悪いという気持ちはあります。
しかし、いじめられる側が、学校を休んだり、孤立したりすることで、「相手が悪いんだ」と自分を正当化し始めます。できるだけ、孤立しないように、みんなとつながりを持つこと。
友達を増やし、別のグループ、別の場所、別の機会につながること。
 
4.悲劇の主人公にならない
「自分はだめだ」「何もできない」「誰も救ってくれない」
「死ぬしかない」などと思い込まないこと。
それはすべて自分の思い込みです。
自分の作ったフィクションです。
人生、何とでもなるのです。

★人間力のアップ

いじめに限らず、いかなる場合でも大切なのは、「人間力」です。
「人間力」とは、私は「人間としての力量」という意味で使っています。
「人間としての力量」とは、「理解力、判断力、実現力」でしょう。
 
・現状の理解
いま、どんな状況なのか。何が起こっているのか。相手は何を言わんとしているのか。
いままでの自分の想像、解釈は、ほんとうにこれでよかったのだろうか。
状況の見直しや、より深い理解に大切なのは「三事」です。

・「三事」とは
「よく観る、よく聴く、受け止める」ことです。
これが、意外と手ごわいのです。その原因は、「自分の思い、思い込み」です。
人はなかなか「あるがまま」を見ようとせず、「自分の見たいように」見るものです。ついつい自分勝手な思い込みで、色メガネで見てしまいがちです。
だから、そこに複数のカメラ、視点、見方が必要なのです。

・「複数のカメラ(視点)」とは
1カメ ・・・ 自分の目で見ること。
2カメ ・・・ 相手の目で見ること。
3カメ ・・・ 第三者の目で見ること。
4カメ ・・・ 過去(歴史)をベースに見ること。
昔はどうだったか、以前はどうだったかという視点。
5カメ ・・・ 未来をイメージして、未来の視点で見ること。
このままでは今後どうなるか、将来どうなるか、という視点。

・笑顔、笑声、笑心
私は、『人間塾』『経営塾』「ワークショップ」や多くの相談を通して、つくづく笑顔の大切さを実感します。ひとことで言えば、笑顔の人は大丈夫です。シケ面の人はあぶないです。
笑顔であれば、よく聴くことができるし、受け止めることもできる、じっくり話すこともできるし、相手に伝えることもできる。誤解も受けないし、パニックに陥ることもありません。

紙面が尽きましたので、ここで中断します。