2007年7月号 マルシェ株式会社 代表取締役社長 谷垣雅之さん
今や「マイ箸地蔵」の呼び名で通るほど、マイ箸推進運動のキーマン的存在の谷垣社長。マルシェグループの洗い箸導入は、業界のみならず、社会的にも大きな話題となりました。提唱する「愛のマイ箸1億人運動」の広がりも顕著で、ついには海を越えて、ワンガリ・マータイさんにまでマイ箸の輪が広がっています。さあ、話題満載の対談です。(写真右が谷垣氏)
マルシェ全店で洗い箸導入へ!
高木 谷垣さん、こんにちは。スペシャル対談には2回目の登場になりますが、初めての読者もおられますので、出会いからご紹介ください。
谷垣 10年ほど前、「フナイオープンワールド」で先生の講演を聴かせていただいたのが出会いです。その時はショックを受けて入会させていただいたんですけれど、徐々にショックが薄れてしまい、継続せずにおりました。ところが2年前の1月ごろ、環境について勉強しようと思ったときに、ふと『地球村』のことを思い出しました。
高木 よく思い出していただけました(笑)。
谷垣 お恥ずかしい話なんですが、まずは社員2名を『地球村』に伺わせたんです。するとその2名が興奮して帰ってきまして、「社長を連れていらっしゃいと先生がおっしゃっている」と申しますので、「あ、これは順番を間違えた !」とあわてて飛んで参りました。すると2時間くらい、お忙しい中、マンツーマンで教えていただき、『経営塾』もご紹介いただきました。
高木 そうでしたか(笑)。この2年間はいかがでしたか。
谷垣 それはもう、まさに激動の2年 !当時、経営では大変悩んでおりました。それが先生の『経営塾』に参加して、「闇の中で光が見えた !」というのが正直なところです。『経営塾』の帰り際に、先生から、「谷垣さん、まず割箸をやめてみたら~?」と、笑顔で声をかけていただきました。その言葉が頭の中で大きく響きまして、まずは幹部を集めて話し合いをしました。
高木 居酒屋で洗い箸 ? … といった抵抗や反発はありませんでしたか。
谷垣 まずは、実験的に直営店で洗い箸を始めました。はじめは確かに、「割箸なんかケチるのか」「洗い箸は不衛生じゃないのか」という声もありました。
高木 でも、茶碗や皿やコップを1回使って捨てる人はいないのですから、お箸も実は同じこと。そう思えば、どうってことないね。
谷垣 本当にそうなんです。半年くらいしますと、不思議なことに応援してくれるお客様が現れ始めました。その年の暮れには、直営店250全店が洗い箸に変わり、翌年の2月末には、加盟店さん500店も変わりました。
高木 その反響はいかがでしたか。
谷垣 大きかったですねえ ! 新聞、テレビ、雑誌など、マスコミのみなさんが、一斉に取材に来られました。
高木 取材はいくつくらいありましたか。
谷垣 ちょっと数え切れないくらい…30数回はありました。
高木 それはすごいね。記事は、どんなトーンでしたか?
谷垣 批判的な記事は一つもありませんでした。それと、去年の4月に「中国が、森林保護のために割箸の輸出を2008年にやめる」という記事が日経新聞に載って、ちょうどタイミングがよかったんです。
高木 それは、すごい偶然の一致の追い風でしたね。
谷垣 はい、おかげさまで。これも先生のおかげです。
「愛のマイ箸 1 億人運動」スタート!
高木 続いて「愛のマイ箸 1 億人運動」ですね。
谷垣 私たちマルシェグループだけが割箸をやめても、たかが知れています。みんなとその点を考えた結果、「国民のみなさん全員がマイ箸を持つことで、自然に割箸は使わなくなるだろう」ということになり、昨年4月に、マイ箸を広めるための『愛のマイ箸 1 億人運動』を始めました。この運動は、ひいては食事への感謝、命への感謝につながるだろうと考えています。
高木 私の体験「モモコ、いただきます」の話の中にも、命をいただくという重いテーマがありますが、谷垣さんはどんなところからその考え方を見つけたのですか。
谷垣 先生の『人間塾』で伺ったさまざまなお話がきっかけではあるのですが、もう一つは、お店を回ってマイ箸の話をさせてもらっているときの気付きです。現代の若者たちが「いただきます」「ごちそうさま」を言わなくなっているんですね。ご飯を食べる道具を大切にしないということは、食事を大切にしないことにつながっているのではないかと気付きました。マイ箸には、森林保護という環境面もあるけれど、食事や命への感謝もあるのだという話をすると、若者たちもすぐにわかってくれました。昨年9月には、奈良の帝塚山大学で、マイ箸の講演をさせていただく機会がありました。100人の学生さんに「いただきますを言っていますか」と尋ねたところ、手を挙げたのは3人だけ。それからは、ますます「いただきます」「ごちそうさま」の話に力を入れて、マイ箸のお話をさせていただいております。
高木 一億人運動は、昨年4月にスタートして、現在はどういった展開になっていますか。
谷垣 マイ箸を命がけで広めてくださる人をとにかく増やそうということで、「火の玉会員」を募集しております。昨年は100人ほどでしたが、今年は1000人にしようと考えているところです。その1000人が火の玉になることで、1万人、10 万人と一気に加速していくのではないかと思います。おかげさまで、『地球村』のみなさまのご協力もいただきながら、全国から会員になりたいというお申し込みが続々届いているところです。
高木 現時点では、どのくらいまで行っていますか。
谷垣 5月で、すでに200人を超えました。
高木 この対談を読んだ人は、ぜひ「火の玉会員」に申し込んでいただきたいですね。
谷垣 『地球村』会員の皆様、「火の玉会員」へのお申し込みお待ちしています。マイ箸にかける熱い決意を聞かせてください。
経営とは、見えない根っこ作り!
高木 激動の2年間、他にも何かありましたか。
谷垣 一番大きな変化は、経営面で、考え方が180度変わったことです。それまでは、会社も上場しておりますので、業績や利益などの数字に捉われていました。これまでは数字を達成するための経営を勉強してきたのです。しかし、あの『経営塾』以降、もっと大切なものがあって、それを見ずに経営をしていたことに気付きました。というのは、人間も会社も一人では何もできないんですね。働いてくれている方々、取引をしていただいている方々、お客様がた、株主さま、家族、地域のみなさま、そういう方々に生かされながら今があるのだということです。とするならば、その方々としっかりした信頼関係を作り、つまりしっかりした根っこを作って、台風が来ても飛ばされないような、そんな人間関係づくりを目指すことが経営ではないかと、気付いていきました。それまでの自分は、目に見える樹木の大きさや形や、そこに生った果実だけに捉われていました。しかも、他の樹木を見ては、種類も違うのに「あんなリンゴがいいな~」と思ったり、目に見える部分だけを比較したりしてきたわけです。僕は、目には見えない根っこ作りをしっかりとして、みんなと一緒に、長く生き続けられる会社にすることが経営なのだ、そういう会社を目指そうと、そう、決めました。
高木 よくぞ、そこまで ! とても素敵な気付きですね ! すばらしい ! では、会社はどう変わりましたか。
幹部会などで、数字の話はしなくなりました。社員や契約社員さんが楽しく働いていただける場作りが何より大事だということを、話すようになりました。
高木 先ほどの根っこの話で、思い出した人があります。みんなは肥やしを根元にまくんです。でもその人は根元ではなく畝(うね)と畝の間にまくんです。「根元にやったら吸収はするけれど、根っこが伸びない」と言ってね。その分、その人の田畑は育ちが悪いけれど、「見ていてごらん」と言うのです。大きな台風が来たとき、周りの田畑はすべて倒れたのに、その人の田畑だけ稲はしっかり立っていました。これは、「大事なのは根っこ」という農法を実践した人の話です。そして、根っこ作りのためにもっと大切なのは土作りなのです。
谷垣 ああ、そうですか…。なるほど…。本当にそうですね。ありがとうございます。僕は、根っこ作りの考え方から、社員のやりたい会社作りが大事なのだと思いました。今回で3年目になるのですが、マルシェは今期こういう方針でいくべきだという冊子を、社員たちが作って配布してくれるようになりました。先生に教えていただいた海図(チャート)作り、「自分の人生をどう生きるか」を描くことが、大変参考になりまして、目的、目標、課題というのを、M2K(マルシェ、みんなの幸福のチャート)と名付けて、全幹部、全社員が、自分のM2Kをそれぞれ書いています。さらに契約社員のみんなにもM2Kを広めていこうとしています。
高木 チャートに関しては、以前、通信の巻頭言に書きましたが、本当に、谷垣さんは私の言わんとするところをグリップしていますね。では次に、ワンガリ・マータイさんのお話をしましょう。
谷垣 マータイさんが樹を植える運動でノーベル平和賞を受賞されたのを聞いて、私たちの『愛のマイ箸 1 億人運動』も目的は同じではないかと思い立ちました。みんなで英語の手紙を書いてケニアまでマイ箸を送らせていただきました。すると予想もしていなっかたのですが、お返事が返ってきました。「マイ箸はもったいないスピリットの素晴らしい実践例。次に来日する際にはお会いしたい」と書いてありまして、先日、高木先生とご一緒にお会いすることができまして、ついに夢が叶いました。
高木 『地球村』の「森林保護募金」の一部を、マータイさんを通じてケニアに送ることは、とてもいい形だったと思います。ご一緒させてもらってありがとうございました。
谷垣 いえ、こちらこそありがとうございました。
高木 では最後に、今後の夢やメッセージをお願いします。
谷垣 経営者としてやりたいことは、いろんな方々ときめ細やかな信頼関係を作り、絆を作り、根っこを這わせ、みんなに喜ばれる倒れない樹木を作っていくことです。それをとことん実行していきたいと考えています。『地球村』のみなさまには、大変お世話になっておりますが、これからも「マイ箸運動」、「いただきます」を広げていきますので、ぜひお力をお貸しください。ぜひ火の玉会員になってください。
高木 私からもお願いします。熱い想いで参加してくださいね。
■マルシェグループ
http://www.marche.co.jp/
■愛のマイ箸 1 億人運動
http://www.marche.co.jp/contents/act/my_hashi.htm
マイ箸を広める「火の玉会員」大募集!
上記ホームページより、応募用紙をダウンロードし、熱い想いで「火の玉宣言」をご記入の上、FAXください。 審査の上、合格された方に「火の玉会員認定証」をお送りいたします。