スペシャル対談

2007年10月号 NPO法人テラ・ルネッサンス理事長 鬼丸昌也さん

鬼丸さんは大学在学中に、地雷問題を扱うNPO・NGO「テラ・ルネッサンス」を設立しました。そして27歳の現在、地雷、小型武器、子ども兵の問題に国内の第一人者として取り組み、活躍されています。その鬼丸さんが活動の機軸と考えているのは、『非対立』。10代の頃に高木さんと出会い、学んだことが大きく影響しています。

「非対立」を活動の機軸に !


高木 こんにちは。あなたの活躍は本当にすばらしいですね。7月、ネットワーク『地球村』は、テラ・ルネッサンスに国際協力基金から支援させていただきました。今日は、その紹介もしましょう。

鬼丸 ありがとうございます。今日は、いい機会をいただいてとてもうれしいです。

高木 ではまず、『地球村』との出会いについて、話してください。

鬼丸 最初に高木さんのことを知ったのは、14年前。中学生のときでした。船井幸雄さんの本を読んでいたら、そこに高木さんのことが書いてありました。

高木 中学生で船井さんの本かあ、すごいね !

鬼丸 ちょっと早熟だったのかなあと思います。高木さんの存在にはショックを受けまして、ずっと記憶に残っていたんです。高校3年生のときに初めて、高木さんの講演会に行きました。前から2列目真ん中の席、まさにS席でした。非常にショック (Shock)を受けるというS席です。すごく感動したとか、そんな生易しいことではなく、それは「衝撃」でした。京都の大学に進学することになりましたので、それからは『地球村』事務局のMMに参加したり、高木さんの講演会のお手伝いをさせていただいたり、ワークショップにも何回か参加させていただきました。

高木 それから、テラ・ルネッサンスの設立ですね。何年のことですか?

鬼丸 設立は2001年10月、21歳のときでした。そのきっかけは、やはり高木さんの存在と、『地球村』です。そもそも、私が人生において最初に出会ったNPO・NGOは、『地球村』でした。そしてそれは、私にとってすごく幸運なことでした。平和や環境の問題を扱いながら、戦わない姿勢、「非対立」を機軸において、さまざまな活動をしたり、多くの人をネットワークしたりする『地球村』の活動が、私に染み込んでいきました。私だけではなく、テラ・ルネッサンスのスタッフには、『地球村』の会員が何人かいますから、テラ・ルネッサンスの姿勢には、『地球村』の影響が大きく出ています。

高木 会員はどのくらい、いますか?

鬼丸 個人が700人、法人が30社くらいです。

高木 会員は増やしていく方針ですか?

鬼丸 はい、1000人は超えたいと考えています。 設立から丸6年ですが、これまでは事業を展開するのに一生懸命でした。ようやくこれからは、会員を増やしたり、ネットワークしたりすることにも力を割いていこうと考えています。

地雷から、小型武器、子ども兵へ…


高木 では、活動について教えてください。

鬼丸 活動の柱は4つあります。1つめは地雷の問題、2つめは小さくて誰でも扱える小型武器の問題、3つめは18歳以下のいわゆる子ども兵の問題、4つ目はそのような問題を啓発するための講演やワークショップ、スタディツアーの開催など平和教育です。

高木 活動は、地雷からスタートしたんでしたね。

鬼丸 そうです。設立当初は地雷だけでした。国内で募金をいただいて、現地で地雷除去を行う団体に資金援助をしたり、義手義足の支援を行ったりしてきました。ところがカンボジアで、地雷被害者の方と出会ううちに、DV(ドメスティック・バイオレンス)で妻を殴ったり、子どもを虐待したりというケースが多発していることを知ったんです。そして、科学的な因果関係はわかりませんが、DVが起きているほとんどの家庭で、ご主人は元子ども兵だったのです。そこから、「子ども兵って何だろう?」と思って、調べ始めました。すると、大変な問題であることがわかったんです。「これは何とかしなければ」と、子ども兵の問題を扱っている団体を探したのですが、その当時は、日本国内で子ども兵問題を扱っている NGOが無かったんですね。無いなら自分がやるしかないと思って、活動の幅を広げました。

高木 そしてさらに、子ども兵から、小型武器の問題へと活動が広がっていったんでしたね。

鬼丸 そうなんです。子ども兵が増える原因の一つには、子どもでも扱える小型武器の存在もあったんです。でも、データや知識があっても、現場を知らなければ話にリアリティがないなと思いましたので、2004年4月に、ウガンダ北部へ行きました。そこで、子どもを戦闘マシーンにしていく状況をはっきり知ったのです。軍隊や反政府勢力に誘拐され、麻薬やアルコールを使われて、武器を持たされ、戦場に行く前のテストと称して、「親を殺せ」というようなことまで命令されている子どもたちがいたんです。こうした経緯で、活動の柱は4つになりました。

子ども兵の問題を知ってください !


高木 では、元子ども兵の社会復帰プログラムについて教えてください。

鬼丸 現在、ウガンダに、職業訓練、カウンセリング、識字教育を行う社会復帰センターを4 つ建てて運営しています。プログラムは3年間です。最初の1年半は、職業訓練や計算、識字教育、平和や環境の勉強をします。勉強に専念してもらうために、食費や医療費に使えるクーポン券を渡しています。職業訓練が終わってビジネスを始めた人には、クーポン券の支給を止めて、融資に切り替えます。

高木 実際にビジネスを始めた人もいるのですか。

鬼丸 洋裁の技術を学んで洋裁店を開いた子、炭の小売事業を始めた子、植林活動のために松の苗木を育てる事業を始めた子もいます。

高木 それはすばらしいなあ。その社会復帰プログラムも紙面でアピールしましょうね。

鬼丸 ありがとうございます。私は、環境を整えることが大事だと思うんです。子ども兵は、戦争という環境の中では、親でも殺してしまう。逆をいえば、社会復帰の環境を整えていけば、人とコミュニケーションもとれるし、自力で生活することもできると思うんです。

高木 その通りですね。今年、『地球村』から、あなた達の活動に対し、ジープ購入費用を支援しました。このプロジェクトを応援していますよ。

鬼丸 今回のお申し出は、本当にありがたかったです。元子ども兵が私たちの施設に通うだけじゃなくて、奥地に調査に行くときも、四駆のジープじゃないと厳しいので、非常にありがたかったです。

高木 『地球村』の会員さんへ、メッセージをどうぞ。

鬼丸 戦争の原因はほとんどの場合、資源です。石油であったり、携帯電話で使われるタンタルという金属であったり…。子ども兵の問題から、私たちの生活を見直し、自分自身が変わっていくことの大切さを感じてもらえればと思います。あとは会員になっていただく、ご寄付をいただく、もしくは子ども兵の問題に関心を持っていただくだけでもうれしく思います。

高木 今日は本当にありがとう。これからも目的とビジョンに向かって、一緒にがんばりましょう。

■テラ・ルネッサンス
http://www.terra-r.jp/