巻頭言

【巻頭言】ミツバチの驚異の世界

NHKの「ダーウィンがやってきた」という番組で「ミツバチの世界」を見ました。
その驚異の世界を紹介します。

ミツバチの巣は、1匹の女王蜂と1万匹以上の働き蜂がいます。
働き蜂もメスで、オスはいません。ミツバチの巣はメスだけの世界です。
働き蜂の寿命は1ヶ月。女王蜂の寿命は3年。同じメスなのに寿命は30倍。
働き蜂は、蜜を集める係、巣を作る係、育児係、巣の温度調整係など、役割(分業)がはっきりしています。
女王蜂は、3年間の寿命の間、毎日1000個以上の卵を産み続けるのです。
これは、約1分に1個の産卵です。一生で100万個以上の産卵をするのです。

働き蜂の寿命が1ヶ月ですから、女王蜂が毎日1000個以上の産卵を続けると、当然、働き蜂が増えていきます。
そして定員の2倍、2万匹を超えたとき、分封(分家)が始まります。
分封は、女王蜂は1万匹の働き蜂を連れて巣を出ることです。
その途中、ミツバチの大群が信号機に群がったりして話題になります。
大群は新たな場所に巣(新家)を作って、女王蜂が産卵を始めることで、また新しい生活が始まります。

女王たちが出て行った本家の方にも、大きなドラマがあります。
女王が出て行ったので、ここには働き蜂しかいません。
早く体制を整えないと巣は滅びてしまいます。働き蜂の寿命は1ヶ月ですから大変です。
不思議なことに、女王蜂のいなくなったその時だけ、オスが生まれます。
女王蜂は巣を出て行く時だけ、オスを生んだのです。
オスの寿命は、働き蜂と同じく一ヶ月。オスの役割は交尾だけ。
オスは働き蜂に餌をもらいながら、交尾の準備をします。

巣の中では、もう一つ異変が起こります。
育児係の働き蜂は、数匹のメスの幼虫にだけロイヤルゼリーを与えます。
六角形の部屋とは形の違う部屋(王座)の幼虫にだけロイヤルゼリーを与えるのです。
ロイヤルゼリーを与えられた幼虫(複数)だけが女王蜂(候補)になります。
女王蜂(候補)は生まれるとすぐ殺し合いをし、生き残った一匹だけが本当の女王蜂になります。

その幼い女王蜂に、すべての運命が任せられるのです。

働き蜂の寿命は1ヶ月・・・タイムリミットが近づいています・・・。
ある日、その地域一帯のすべてのミツバチの巣から、若い女王蜂と若いオスが一斉に飛び立って上空に向かいます。
空中で、女王蜂は10~20匹のオスと交尾します。
女王蜂は生涯でただ一度の交尾をするのです。
そして精子を体内に蓄え、毎日1000個以上の産卵を続け、3年間の生涯で100万個以上の産卵をするのです。

オスは交尾すると、腹が裂けて、その場で死んでしまいます。
交尾できなかったオスも、自分で餌をとれませんから、やがて餓死します。

まさに驚異の世界ですね。
なんという生き方!・・・なんという残酷な!・・・と思うかもしれませんね。
でもこれは、何百万年の試行錯誤の末にたどり着いた最適な「生き方」なのでしょう。
なぜなら、ミツバチやアリは生きるために大きな社会を作ったからです。
大きな社会を作るためには、このような役割や分業が必要なのです。

「じゃあ、人間社会と同じだ」とは思わない方がいいと思います。
私たちの今の社会は、まだ100年もたっていないのです。
現代社会には、成功の経験も成功の実績もないです。
実績があると言えるのは、数千年の伝統のある先住民の生き方くらいなものでしょう。

過去のすべての巨大文明は、自然破壊と戦争で滅亡しました。
現在の世界文明は、過去のいかなる文明よりも巨大であり、大規模な自然破壊と戦争をしています。
このままでは破局が避けられません。
現状の人間社会は、地球の許容範囲を大きく逸脱しているのです。
それなのにまだ、世界のリーダーも、国のリーダーも、それに気づかないのです、気づこうとしないのです。
 
 一人ひとりが、自然に対して謙虚になり、できることを始めること。
 私たちは、自然を敬い、自然への畏怖を持ち、
 これ以上、自然を破壊してはいけないのです。