2007年11月号 NPO法人日本政策フロンティア理事長 小田全宏さん
『地球村』の理事のお一人、小田全宏さんは「日本政策フロンティア」の代表。松下政経塾出身。政治、経済での多くの提言、若手リーダの指導、市民活動のリーダー、音楽にも多才など、高木代表とは共通点が多い。対談では、富士山の世界遺産のお話から日本のエネルギー問題まで、話題は広い範囲に及びました。
この20年、環境意識は低下しました
高木 こんにちは。今日はよろしくお願いします。この対談は、まず、出会いからお聞きしています。
小田 うわあ ! 初対面のとき、私が「君が高木くんかね」と言ったとかいう、あの話ですか ! あれは捏造です ! 僕には全然身に覚えがありませんよー !
高木 初対面は90年頃でしたね。東京の某ホテルのロビーでお待ちしていて、小田さんが来られると、周りに人垣ができて、私は順番待ちで、名刺を一枚いただいて、握手をして、ほんの数秒の出会いでした。当時すでに、小田さんの知名度は高かったですね。
小田 もう言わないでくださいよ。僕が覚えている正式な出会いは、その1,2年後です。そこから、私はワンデイセミナーを連続で開催して、高木さんをお招きし、全テーマを聴かせていただきました。高木さんの講演は、当時から、論理の展開が見事でした。映画『不都合な真実』を見たとき、ゴアさんの講演が高木さんにそっくりで驚いたくらいです。
高木 当時は、92年のリオサミットに向けて、日本も環境意識が高揚してきた時期でしたね。
小田 私も90年に、地球人間ルネッサンス会議というのを開いて、人類が地球の中でどう共生していくかをテーマに話し合いました。ところで、「地球を救おう」という言葉がありますが、あれは大変におこがましい話ですね。
高木 その通り。いま滅びようとしているのは、地球ではなく人類ですからね。タイタニックに乗っている人が「タイタニックを救おう ! 」と言っているようなものです。
小田 そうそう、その感覚。「どうか我々を生かしておいてください」というだけの話で、「地球を救おう」「地球に優しい」と言うのは違うんじゃないかと思います。地球温暖化という言い方もおかしいし。
高木 温暖化なんて生易しいものじゃないからね。
小田 地球の「高温化」「高熱化」と言うべきでしょう。それが「温暖化」や「今年の夏は暑かったね」で済んでいることがおかしいと思います。
高木 ところで、この20年、日本の環境意識、環境への取り組みは進んでいるのではないかと思うかもしれませんが、私から見ればNOだなあ。講演していても、以前のほうが手応えは大きかった。当時は、環境情報が少なかったので、講演でショックを受け、本気でやりだす人は多かった。今は、「分っているんですがねえ、なかなかねえ、高木さん、がんばってください !」という人がけっこう多いですね。クールビズでネクタイを外した、エコカーに乗ってる、エコ商品を使っている、高額の浄水器を買った、そんなことで満足している人が増えたように感じます。
小田 ああ、それは感じますね。20年前は、環境情報は少なかったけれど、人々の感覚は、もっと鋭かったと思います。
高木 今は、「自分が何とかしよう ! 」ではなく、「企業が、行政が、政府が、何とかすべきだ」という感じ、つまり無知、無関心、無責任が気になります。
幸せは自分自身が決めること
高木 最近の活動について教えてください。
小田 僕は基本的に人間学の研究をしています。人間学とは、「人間が幸せになるための考え方」と、僕は定義しています。コップに水が「半分しかない」と考えるか、「半分も入っている」と考えるか。この陽転思考(前向きの考え方、ポジティブ思考)が、その人の人生を決めると伝えています。また、自分がいくら幸せに暮らしていても、誰かにブスッと刺されたら、たちまち不幸になります。つまり社会全体が幸せでないと、個人の幸せもないんです。そういったことを講演や研修で伝えていき、人が変わっていく瞬間に立ち会えることが、僕の最大の喜びなんです。
高木 おお、私と同じですね。私の伝えたいことは、「みんなの幸せこそ、本当の幸せ」「みんなを幸せにすることが、自分を幸せにする」ということです。すなわち、「幸せの種まき」「虹の天使」という考え方です。
小田 そうですか。まったく同じです。元々どちらかというと、悲観的な人間で、厭世的でもあったんですよ。
高木 よくわかります。私も虚無主義でした。小田さんに厭世観があったと伺って、同じ運命を感じます。
小田 だからこそ、陽転思考だと思うんです。
高木 私もだからこそ、人を幸せにしたいんです。
来年はエネルギー政策を考える年に
高木 ところで、富士山を世界遺産にしようとされているのですね。
小田 富士山は日本一の美しい山ですが、きれいな円錐形の山という特徴だけでは、「世界自然遺産」には無理です。そこで、山岳信仰など日本の歴史、文化を含めてもっと大きな位置づけで、「世界文化遺産」としての登録をめざして運動を起こしています。なんとか、今年の1月25日に暫定登録されまして、あと3年くらいかかるかと思いますが、いよいよあと少しというところまで来ました。私は、日本人の心の象徴でもある富士山を世界遺産にするプロセスを通して、自分たちの郷土、町、国、あるいは地球を、美しくするよい変化が起こせればと思っています。
高木 そうですか。よく、ここまで進めてきましたね。楽しみにしています。
小田 ところで、ご相談したいことがあります。来年3月23日に日比谷公会堂に2000人集めて、日本のエネルギー政策を考える大会を開催する予定です。日本の自然エネ技術は世界トップレベルだと思います。ただ、現状のエネルギー政策は原子力に特化してしまっている。そこで、太陽光など自然エネルギーのための政策提言をまとめて、国民側から風を起こしたいと考えています。
高木 すばらしいことですね。私も協力しますよ。私が懸念するのは、エコ技術、エコ商品は次々出てきますが、エコを利用したニセモノ、エコっぽく見えるだけ、素人だましが多いことです。エコかどうかは、LCA(ライフサイクルアセスメント・原料調達、製造、使用、廃棄後のリサイクルを含めた総合的環境評価)で厳正に審査しないといけません。太陽電池も、燃料電池もLCAでは、エコかどうかは不明です。また、「CO2を出さない」「燃費がいい」ということだけでは、エコカーと呼んではいけません。それと、しっかりとしたプランを立てることが必要だと思います。永続可能な自給自足の暮らしを取り戻す本気のプランA、現状と折り合っていくプランB、企業論理のプランCがありますが、私はプランAをはっきりイメージしています。
小田 プランAが重要だと思うのですが、いきなりは難しい。まずは、プランBから入ろうと考えています。
高木 最終ゴールがわかっているならいいでしょう。最終的にプランAしかないことは、みんなが気付きますよ。きっと小田さんなら、そこをうまく伝えられますよ。これからも協力し合っていきましょう。
■小田全宏オフィシャルホームページ
http://www.odazenko.jp