スペシャル対談

2007年12月号 ディジュリドゥ奏者  KNOBさん

 ディジュリドゥ奏者のKNOB(ノブ・本名:中村亘利)さんは、映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第六番」の「虚空の音の章」に登場しています。6月には大阪で行われた環境セミナー『地球からのおくりもの』に出演されました。しかしその前身は何とジャニーズ事務所所属のアイドル歌手!さあ、KNOBさんが芸能界の華やかなステージを捨ててまで、ディジュリドゥの道へ入った想いとは?

君子は可八、腹八分目で


高木 こんにちは。今日はよろしくお願いします。おおーっ、和服とはすてきですねえ。いつも和服なんですか。

KNOB いつもというわけではないのですが、和服を着ていると、丹田(たんでん)を意識できるので…。

高木 若いあなたが丹田とはおもしろいなあ。ところで『地球村』を知ったのはいつ頃ですか。

KNOB 東京に「地球交響曲」を1万人に伝えようと活動されている方がいて、4年くらい前から上映前に演奏させていただいております。ディジュリドゥを吹きながら、映画とお客様をつなげるトンネルになりたいと思ってきました。ガイアのスタッフには、『地球村』の会員さんがたくさんいらして、高木さんの講演会のチラシもずいぶん拝見して、すばらしい活動をされている方がいるんだなあと思っておりました。ようやくお目にかかれたのが、6月のジョイントイベントになります。

高木 ではその時、初めて私の講演も聴いていただいたんですね。いかがでしたか。

KNOB 僕は普通の生活をしていて、特にベジタリアンでもなく、タバコは吸いませんがお酒はいただきます。高木さんのお話を聴いて、耳の痛い部分がありました。急に全てを変えることはできませんが、考えるきっかけになりましたし、心に衝撃を受けた講演でした。

高木 ドンマイ ! ドンマイ !講演では、生活を見直すひとつのきっかけとして私の生活をお話しているだけで、酒を飲むな、肉を食べるなという話ではないんだよ。私がみんなにわかってもらいたいのは、「日本人は必要量の100倍の贅沢をしていること」「現在すでに消費が地球の限界を超えていること」。破局を避けるためには、まず日本やアメリカが変わらないといけないのです。

KNOB 僕の好きな言葉で「君子は可八」という言葉があるんです。「優れた人は10ではなく8をもってよしとする」そんな意味です。満腹ではなく腹八分目の美徳が、昔の日本人にはあった気がします。今の飽食の時代は、高木さんのおっしゃるようにおかしいと思います。

ディジュリドゥとの運命の出会い


高木 ディジュリドゥは不思議な楽器だね。音階を作るための指穴もなく、ただの棒だけなんだね。

KNOB そうなんです。ディジュリドゥはシロアリが食べて空洞になった木の筒で、人間の方が筒に合わせていかなければ成り立たない楽器です。5万年もの間、アボリジニの人々が伝承してきました。

高木 ディジュリドゥとの出会いについて聞かせてください。ジャニーズ事務所にいる頃ですか。

KNOB 僕は13歳のときにジャニーズ事務所に入って、少年忍者というチームで少年隊のバックで踊っていました。その後、萩本欽一さんのオーディションに受かってCHA-CHAでデビュー。CHA-CHAを解散してからは1人で活動しました。踊りが好きなので、それを突き詰めたくてやっていたんですけれど、タレントというのは何でもやらなくちゃいけなくて、自分でも何がやりたいのか段々わからなくなって、心のバランスが取れなくなったこともありました。精神世界の本を読んだり、毎日座禅に通ったり、そういう自分探しの時期に、たまたま仕事でオーストラリアに行き、ディジュリドゥに出会うことができました。

高木 それは何歳くらいのとき?

KNOB 25歳でした。3週間近く滞在していたのですが、現地のコーディネーターさんが偶然にもディジュリドゥを持っていて、アボリジニの文化や精神性についても詳しい方で、僕も1本買って帰りました。

高木 そこからは日本で練習を?

KNOB はい。独学で学びました。30歳までは事務所に所属していましたので、ディジュリドゥで食べていこうとは思っていませんでした。でもある日、夢を見て、この楽器と共に一生、生きていこうと決めました。

高木 どんな夢だったの。

KNOB 暗闇の中から光が差して、光の中から2人のアボリジニの方が現れて、1人はディジュリドゥを吹き、1人は拍子木を鳴らして歌を歌いながらこちらに向かってくるんです。どんどん近づいてきてディジュリドゥの先が僕に当たると思った瞬間に、ググ…とディジュリドゥとアボリジニの2人が、僕の体の中に入りました。すると僕の体の中に伝統的な音が流れ出して、僕の胸からディジュリドゥが現れて、それを吹いた途端に目が覚めました。その時に、アボリジニの伝統は、既に僕自身の中にあるのだと思いました。その時、日本に生まれた自分として日本の文化・精神を軸に、この木の筒と一緒に生きて行くんだと決めました。それで生きて行くと決めたら、それで食べられないはずがないと、1ミリの疑いもなく信じ切ったんです。そうでなければ世の中がおかしいと思うくらいに覚悟を決めて、今に至っているんですが、不思議と裏切られたことがないですね。ありがたいなと思うことだらけです。

ディジュリドゥは自然の翻訳機


高木 それは「引き寄せの法則」だろうね。あなたがはっきりとイメージを持っているから、そこに引かれて人が集まってくるんだろう。あなたの中には、ディジュリドゥを5万年守り続けてきたアボリジニのDNAがあるんじゃないかな。あなたがディジュリドゥに運命を感じているなら、ディジュリドゥで世界を救うのかもしれないね。

KNOB どうなるかわかりませんが、ディジュリドゥで有名になるとか、お金を稼ぎたいとか、そういう意識は全くないんです。そういうこととは次元の違うことで、ただただ一日を一生懸命やらせていただくという意識しかなくて、結果としてどこに辿り着くのかはまだわからないし、とてもワクワクしているんです。

高木 なるほど、わかるよ。これからの活動が楽しみです。ディジュリドゥの他にも何かやっていますか。

KNOB 実は、長く書(書道)をやってきたのでそれも続けていきます。小さい頃から縁があって、小野田雪堂という方について学んできました。芸能活動に迷いがあったときも、師匠に書を書いて持っていったんです。すると師匠は書を見るなり「何かあったか」と心配してくださって、この人に嘘はつけないんだという絶大な信頼を感じました。そこから、この人の書く書を、書の向こうにある人物を突き詰めたいと思って、真剣に学んで32歳で師範になりました。

高木 じゃあ、ディジュリドゥと書を極めていくんだね。

KNOB はい。第六番のテーマは「すべての存在は響きあっている」でした。僕もあの木の筒を通して、自然と語り合えるというか、不思議な体験をいろいろしています。ディジュリドゥというのは、いろんなものと僕をつなげてくれる翻訳機みたいなものです。これからも縁のある方とお会いできることを楽しみにしております。

高木 あなたが本当にやりたいと思うことを、思いっきりやってもらいたいと思っています。あなたとはもっと話したいなあ。またいつか話しましょう。

■公式ホームページ「天然空洞木」
http://www.knob-knob.com/