巻頭言

【巻頭言】記憶の仕組み

 行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。
 よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまることなし。
 世の中にある人とすみかと、またかくの如し。       鴨長明「方丈記」より

今年も最後の月、あわただしいけれど、物悲しい感覚があります。
年齢と共に、年月の経過は早くなりますね。なぜだと思いますか。

★記憶とは
物心が付くのが5歳だとすると、5歳の子どもの1年は、真っ白なメモリーに
最初の1年分の体験がすべて書き込まれます。
6歳の子どもの1年は、メモリーにさらに1年の体験が書き加えられます。
7歳の子どもの1年は、そこにさらに1年の体験が書き加えられるのです。

★記憶は振り返ることと似ている
5歳の時点からの人生をみてみると、6歳の子どもが振り返ると、1年で進んだ距離が見え、
10歳の子どもが振り返ると5年の距離が見えるでしょう。
15歳の人が振り返ると10年の距離が見えますが、距離は遠くほど小さく見えるために、
10歳の時に振り返って見た5年の距離の2倍よりも短く感じます。
25歳の人が振り返ると、20年の距離は10年の2倍より短く感じます。
45歳の人が振り返ると、40年の距離は20年の2倍より短く感じます。
こうして、最近の1年は、年齢とともに早く、短く感じるのでしょう。

★刺激や変化が大切
記憶には、メモリーを節約する機能があり、変化が少ない場合、記憶を省略します。
だから習慣的なことは記憶があいまいになります。きょう何を食べたか、
きのう何をしたか、さっき鍵をかけたか、電灯を消したか、記憶があやしいことが多いでしょう。
同じ仕事、同じ生活など、変化の少ない生活をしていると記憶が鈍ります。
「何もしないうちに、年をとった」ということになりがちです。
若くても記憶が怪しくなったり、想像力が落ちたり、認知症も出ます。
若さを保つには、日々新たな取り組み、新たなチャレンジが必要です。