巻頭言

【巻頭言】自然の驚異 素数ゼミ

夏、大合唱をしているセミは、地上の生活はわずか1週間、
その前の地中の生活がとても長い。
「セミは長い間、幼虫時代を地中で過ごし、
やっと成虫になったらたった1週間で死んでしまうなんて・・・」という気がするのですが、
専門家は、「それは違う。セミを地上の昆虫だと思うからそう思うだけで、
セミはもともと地中の昆虫であって、交尾、産卵のために地上に出てくるだけ」と話します。

同じような例はたくさんあります。
シロアリは、もともと腐った木の中で暮らしていますが、
交尾のときだけ羽が生えて空中に飛び出してきます。
カイコも(私も実際に飼ったことがありますが)幼虫は桑の葉だけを食べ、
1ヶ月で大きく成長して繭(まゆ)を作り、2週間で成虫(蛾)が出てきます。
成虫は交尾して産卵しますが、飛ぶこともできず、食べることもできず数日で死にます。
すべての生物は、命をつなぐために必要なことをしているだけなのです。
人間だけが、よけいなことをして、環境を破壊したり、他の生物を絶滅させたり、
自分自身を滅ぼしているのです・・・ 最も愚かなのかもしれません・・・。

ところでセミの地中生活の期間は、7年、11年、13年、17年とのこと。
この数字を見ると、素数ですね。では、なぜ、素数なのでしょう。

素数の特長は、割り切れる数がないということ。
たとえば、素数でない数、12は2,3,4,6で割り切れます。
仮に、地中の時期が2年,3年,4年,5年,6年などさまざまな種類のセミがいたなら、
地上に出てきたとき、
2年ゼミは、4年ゼミ、6年ゼミ、8年ゼミとぶつかって競争が厳しい!
3年ゼミは、6年ゼミ、12年ゼミとぶつかって競争が激しい!
4年ゼミは、8年ゼミと、12年ゼミとぶつかって競争が激しい!

こう考えるとだんだんわかってきますが、素数ゼミは、
他の周期のセミとぶつかることがないので、生きやすいということになります。
自然の仕組み、長年の知恵、他の生物とのバランスはすごいですね。
私たち人間だけ、それらの自然の仕組みに反して生きられるのでしょうか。