巻頭言

【巻頭言】相談の受けかた

コーチングやカウンセリングについて、少々述べます。

セミナーやワークショップのあとは、一ヶ月間メーリングリストで、
自分の取り組みや変化について情報交換しています。
このメーリングリストでは、参加者全員でメールのやり取りをします。
誰かが自分の状況、取り組みなどを述べると、誰でも自由にレス(返事)ができます。
そのやり取りの中で、参加者全員に、驚くほどの気づきや変化が生まれます。
うまくいっている場合は、コーチング、カウンセリングがうまくいっているのです。
コーチング、カウンセリングは、他の人の悩みの解決だけではなく、
自分の悩みの解決、自分の成長や変化にも大きな効果があります。
うまくいっている場合について分かち合いましょう。

★よく聴く
相手の話をよく聴くこと。メールはよく読むこと。
途中で、すぐに質問したり、自分の意見を述べたりせず、よく聴くこと。
そのときに必要なことは、笑顔と包容力です。
うなずいたり、軽く合いの手や気持ちを表現することも大切です。

★相手の言葉をリピートする
相手が話し終えると、まず相手の気持ちを受け止めることです。
レス(返事)は、相手の言葉をそのままリピートして、
「・・・・・なのですね」で始めます。これが、「受け止める」ことなのです。
そうすると、相手は、「そうなの!そうなの!」という気持ちになり、
心を開き始めるのです。このとき、自分の言葉に置き換えないこと。
相手が、「自分を責めたり、自暴自棄な日が続いている」と言ったなら、
「自分を責め、自暴自棄な日が続いているんですね」と言えばいいのです。
それを、「自己嫌悪があるのですね」とか、「引きこもりですね」などと、
別の言葉で置き換えないこと。
これをすると、1カメと2カメのギャップが生まれ、相手は、
「そうじゃない・・・わかってくれていない・・・」という気持ちになり、壁ができてしまいます。
どれだけ信頼関係をつくるか、信頼関係を壊さないかが大切です。

★気持ちを整理するお手伝い
相手は、不安や不満を言うことで、気持ちが楽になり(コップの法則)、
人の意見を聴けるようになってきます。
しかし、そこであなたは、「自分はこう思う、こうすべきだ」とは言わないこと。

  「ご自身の中に『あるべき自分』というものがあって、
   それが心を重くさせてしまっているのかもしれませんね」

このように、相手の気持ちを受けとめて、少し整理します。
やさしい気持ちで、相手と歩調(気持ち)を合せるのです。
そうすると、だんだん相手も心を開いてきます。
そういう流れを生み出すことが基本です。

★「正解さがし」をしない
「どうすべきか」という正解さがしをしないこと。
正解さがしは、ティーチングや○×教育の弊害です。
「答えは七つある」と言われるように、答えはいくらでもあるのです。
むしろ、「あなたはどう思う?」「どうしたいの?」と聞くことが大切です。

★良い悪いはない
相手の意見を聞いても、それに対して「良い、悪い」を言わないこと。
「それをすると、どうなるかなあ」「それをしないと、どうなるかなあ」と聞くことで、
相手が考え、相手が判断することを手伝う。

★自分はずし
相手が何かに悩んでいたり、腹を立てていたり、自分を責めていたりする場合、
多くの場合は、自分の見方、主観(1カメ)に囚われているのです。
コーチングもカウンセリングも、そういう状態に気づいてもらうためのものです。
しかし、囚われている人に「あなたは囚われている」と言うのは逆効果になります。
自分の意見を述べるのは最小限にすること。
「私ならこうする」と言わない。言うにしても、相手が聴くまで言わないこと。
トラブルの原因は「1カメ」(自分の視点)です。2カメ(相手の視点)、
3カメ(第三者の視点)に気づいてもらうことが大切です。
いちばん大切なことは、「自分はずし」なのです。