【巻頭言】今年は環境元年
今年は「環境元年」。
地球温暖化防止の京都議定書の発効の年、つまり行動開始の年です。
京都会議(1997年)からすでに10年経ちましたが、いままではスタートのための準備期間でした。
「2012年までに、1990年の排出量を基準として何%減らすか」
各国が自主的に定めた目標数値に向けて、今年から削減を開始するのです。
環境先進国は積極的な目標値を設定し、すでにはっきりとした成果を出していますが、
残念ながら日本やアメリカは逆に増えています。
目標 現状
ドイツ -25% -18%
イギリス -23% -15%
アメリカ -7% +16%
日本 -6% + 6%
この大きな違いは、国としての取り組みがぜんぜん違うからです。
ドイツやイギリスでは、例えばガソリンは環境税が上乗せされ「1リットル230円以上」になり、
ガソリンの消費が大幅に減りました。その環境税が、環境だけではなく福祉や年金に
使われていて、市民から広く受け入れられています。
別件ですが、タバコはイギリス800円、ドイツ500円など、環境や健康に悪いものは
価格を上げ、消費量(喫煙率)は確実に下がりました。
これも、グリーンコンシューマが多いことで可能となったのです。
昨年12月、インドネシア・バリ島で温暖化防止会議(COP13)が開催されました。
目的は、「京都議定書」以降、つまり2012年以降の削減目標を決定するはずでした。
環境先進国や議長国(インドネシア)が準備した案は、「2020年までに先進国が25~40%
削減する」でしたが、アメリカの強い反対と日本の同調によって数値目標が削除され、
2012年以降の削減の数値目標は、今後に持ち越されました。
日本は、排出権取引、原子力発電などを推進しましたが、排出権取引は、
双方に経済的メリットがあり、結果的に経済成長により排出量が増える可能性があります。
むしろ目標達成できない国に罰金を課す方が、効果があります。
●世界全体で265億トンの二酸化炭素を排出
・世界人口67億人で割ると、1人当たり3.95トン
・1位 アメリカ (3億人) 59億トン(22.1%) 1人当たり 19.5トン
・2位 中国 (13億人) 48億トン(18.1%) 1人当たり 3.7トン
・3位 ロシア (1.4億人) 16億トン (6.0%) 1人当たり 11.4トン
・4位 日本 (1.3億人) 13億トン (4.8%) 1人当たり 10.0トン
・5位 インド (13億人) 11億トン (4.3%) 1人当たり 0.85トン
出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2004年度 (※2006年度には中国が排出量1位に)
ロシア(暖房により排出量が多い)などの例外を除くと二酸化炭素排出量は生活水準(GDP)
とほぼ比例しています。インド(13億人)、アフリカ(10億人)、東南アジア(10億人)、
南米(5億人)、中国の農村人口(10億人)の途上国人口は48億人で世界人口の7割。
わかりやすくまとめると、
19.5トン×3億人+10トン×16億人+1トン×48億人≒265億トン
(アメリカ) + (他の先進国) + (途上国)
今年7月、日本で開催される先進国首脳会議(G8)「洞爺湖サミット」では、
「2050年までに世界全体で50%削減」について議論されます。
仮に、「2020年までに先進国全体で20%削減」を目標とするならば、
その時、世界人口は80億人に達しているでしょうから、
途上国が年8%ずつ排出を増加すると1人当たり2.5トンに達します。
8トン×20億人 + 2.5トン×60億人 =310億トン(115%)
(先進国全体) + (途上国)
地球温暖化は、3割の豊かな人たちの生活によって進行していますが、
今後、途上国の人たちが経済成長することを考えると、「2050年までに世界全体で
二酸化炭素排出量を半減」どころか、「削減」すら難しいのです。
「現在の温暖化は先進国の責任だから、途上国に削減義務を求める前に、
まず先進国が削減すべきである」という途上国の主張は正当ですが、
圧倒的多数を占める途上国の削減努力なしには、世界全体に未来はありません。