スペシャル対談

2008年4月号 横浜市長 中田宏さん


「大都市では実行不可能」と思われていた、ゴミの分別収集やゴミの30%削減など、自治体における行政改革のモデルづくりに尽力する、若き市長・中田宏さんには、これから実行に移すビジョンやプロジェクトがまだまだたくさんある様子。熱い思いにあふれた対談になりました。


G30で、行政改革のモデルに


高木 こんにちは。今日はお忙しい中をありがとうございます。まずは大きな成果をあげている、「横浜G30プラン」について教えてください。

中田 私は平成14年に市長になりまして、最初の議会で施政演説をして、横浜市のこれからの都市像を、「環境行動都市」という言葉を作って表現しました。

高木 環境宣言都市という言い方はよく聞きますが、「行動」と、はっきり打ち出したのは、中田さんが初めてではありませんか。

中田 そう思います。環境宣言だとか、環境に優しいだとか、語ることや宣言することではなく、これからは、どう行動するかが問題なのです。そこをまず打ち出しまして、メインの行動として「ヨコハマはG30」(横浜G30プラン)を掲げました。
ゴミのG、減量のG、横浜のゴミを30%減らすんだという明確な目標、それがG30というわけです。
高木さんが講演の中で何度もおっしゃっているように、日本ほど焼却炉が多い国もないわけで、次から次へと物を消費して、焼き尽くして、埋め尽くす。その消費文化を文化水準の高さだと思う概念があって、それを一番大規模に行ってきたのが、横浜市を初めとする大都市です。この概念を覆すために、ゴミを削減するG30を掲げたわけです。
また、「ゴミを燃やすために税金を使うことが望ましいのか。もっと他のことに税金を回すべきではないのか」と、財政面から説得力を持たせるアプローチもしました。
というのも、ゴミのリサイクルを目的にするなら、市民に分別を強いることなく、行政が税金でリサイクル工場を建てて分別リサイクルをするという選択肢もあるわけです。でも、誰かがどこかで税金を使って始末していては、市民の学びにはなりません。市民自身が分別し、そのことによって、物の購入そのものを考え直すことにつなげていこうというわけです。そこで、分別は、15品目に細分化しました。

高木 それはまた細かいですね。G30以前は、どういった分別でしたか?

中田 分別は粗大ゴミだけで、それ以外は全部一緒でした。横浜市は24時間回り続けている町だし、昼間寝ている人もいるし、外国人も多いし、一人暮らしで町内会に入らない人もいる。
ゴミの分別方法を伝えることが、まず無理なのだという論調があって、最初はみんなが強硬に反対でした。そこを「伝えることが難しいなら、伝える努力を何年かかってもやれば良いのではないか」と説得し、伝える努力を平成14~15年と2年間行いました。
1万回を超える説明会を開き、ありとあらゆる場所で「横浜市は平成17年から分別します。わかってください」とひたすら伝え続けました。
バスや地下鉄に乗れば「G30」のアナウンス。市役所や公共施設に行けば「G30」のノボリ。もちろん当初は、G30がどういう意味か誰も知りませんから「G30って何?」というところから始めました。

高木 それは素晴らしいことですね。このG30は、全国各地に波及するかもしれません。

中田 実は我々も、日本のモデルを作ろうと思ってやっています。人口363万人、153万世帯、日本一大きな市である横浜市が、G30を実現したとなれば、他の市町村は言い訳できない。だからこそ我々がモデルとなる意義があるというわけです。

市民も事業者も行政も環境行動を !


高木 ゴミ行政では、500億円と600億円の焼却場の計画をストップして、1100億円の予算が浮いたと聞きましたが、本当ですか。

中田 本当です。横浜市には7つの焼却工場があって、老朽化していく順に、容量を大きくする改修工事を行っていました。私が市長になったときに、G30の取り組みをするからということで、改修工事にストップをかけて、そのまま2つの焼却工場を廃止しました。
それで、改修工事の1100億円を節減。当然2つの焼却工場のランニングコストがいらなくなりましたから、これが年間30億円の節減になっています。

高木 それはすごい。30%のゴミ削減は、大きなメリットを生んだわけですね。

中田 当然ですけれど、分別収集のための要員を増やさなくてはなりませんでしたが、仕事のやり方を工夫しまして、全体として職員は増えていません。

高木 資源のリサイクルという面でも、メリットは出ていますか。

中田 ペットボトルは、中国に輸出されている量がかなりあります。しかし、それをやり始めると、日本国内の再資源化のルートをつぶしてしまうことにつながります。そこで、横浜市では、国内の会社に売却しています。

高木 なるほど、そうですね。では、G30以外に、進めている環境行動はありますか。

中田 CO2削減のために具体的に何ができるかという検討を積み重ね「横浜市脱温暖化行動方針(CO-DO30)」を策定しました。例えばレジ袋のあり方、包装のあり方、使い捨て容器のあり方などを検討することを盛り込んでいます。
製造者も販売者も、これまでは「消費者のニーズなのだ」といって、過剰包装や個別包装をしてきました。しかし、「消費者のニーズはゴミを減らすことを望んでいる。そのために363万人の横浜市民は、ゴミの分別をしている。いつまでこの分別を市民にやらせるつもりなのだ」と、横浜市は消費者を代表して、業界に物申していこうと思います。

高木 日本の廃棄食糧は30%と言われています。その上、賞味期限の問題でますます食糧廃棄が進む…。このことでも、何か行動があるそうですが。

中田 コンビニエンスストアのローソンも、この件では問題意識を持っておられまして、一緒に廃棄食糧再利用のプロジェクトを始めました。
ホームレスの人たちのために、NPOがやっている食堂があるんです。そこへ販売期限切れの弁当を持ち込み、食材として使うという取り組みです。

高木 ゴミ、食糧、CO2、横浜市は素晴らしいモデル都市になりそうですね。

中田 ありがとうございます。高木さんが啓発活動を通して人を動かしているように、私は政治家として、参加型の社会を作りたいんです。

高木 応援します。これからもよろしくお願いします。

■横浜市ホームページ
http://www.city.yokohama.jp/

■「ヨコハマはG30」
http://www.city.yokohama.jp/me/pcpb/

●この連載『スペシャル対談』を改めてお読みいただきたいと、
『地球村通信』に好評連載中の“スペシャル対談”コーナーが、
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