巻頭言

【巻頭言】自動車と二酸化炭素

今年は「環境元年」。京都議定書のスタートの年ですから、時々その話題も書きます。
日本の現状を知っておいてください。
二酸化炭素の削減目標と現状は、次のとおりです。

       目標     現状    2012年までに
ドイツ    -25%    -18%     あと 7%
イギリス  -23%   -15%     あと 8%
アメリカ    -7%   +16%    あと23%
日本      -6%   + 7%     あと13%

※ 今年1月19日、国連世界銀行は各国の評価を公表しました。
 日本は、主要排出国70カ国中61位。先進国で最低の評価となりました。

★原油価格高騰
この原稿を書いている現在、1バレル(159リットル)110ドルをつけています。
1970年はなんと2ドル、1975年にはオイルショックで10ドル、
1990年には湾岸戦争で20ドル、2003年にはアメリカのイラク戦争で30ドル、
2005年には50ドル、昨年から加速しています。しかし、1リットル約70円。
これでもまだペットボトルの水よりも安い。ということは、以前の2ドル、
10ドルがいかに無茶であったかわかるでしょう。
そのことを人口大国(13億人以上)の中国やインドが指摘しているのです。

「先進国が長い間無茶をしてきた結果が現在の環境問題なのに、
これから発展しようとしている途上国に同じような規制を求めるのは筋違い」

途上国から見ればそのとおり。
かといって、「では、途上国は安くどうぞ。ご自由にどうぞ」とも言っていられません。
ともに問題解決に向けて努力、協力しないといけないのです。

★問われるアメリカ、日本
アメリカは、ブッシュ大統領が就任後、京都議定書から離脱。
日本は、京都議定書の主催国でありながら、CO2を増加させています。
しかも日本政府は、国民に対して削減努力を求めるよりも、「これ以上の削減は難しい」
と間違ったメッセージを出しています。
ドイツなどでは、風力発電が立ち並び、自然エネルギーの比率は大きく伸び、
ガソリンの値段が日本より100円も高く、マイカー利用を減らすための多くの政策、
施策、努力が行われています。

★道路特定財源の問題
いま話題の「道路特定財源」は、ガソリン税に上乗せされた特別税で、
自動車道路の建設に使われてきました。その期限が3月に切れます。
いままで利益を受けてきた業界や族議員が、継続を合唱していますが、
ここに来て、まだ自動車道路を建設しようというのは無意味(ナンセンス)です。
すでに小泉政権で、「道路財源は一般財源に」で決着していたのに、
今になって復活を持ち出すのは、利権に群がる業界や政治家の愚行です。
⇒道路特定財源(年間5~6兆円)は、環境税、炭素税として継続して、
二酸化炭素削減など環境保全に使うべきです。

★最大のCO2を排出する自動車
・自動車は、1台当たり年3トンのCO2を排出します。
・自動車は、日本では昨年2100万台生産され世界中に販売されました。
・これだけで毎年6300万トンのCO2が増加することになります。
・これは日本の排出量13億トンの4.8%に当たります。
・日本は、2012年までの5年間でCO2を12%減らさなければなりません。
・しかし日本の自動車生産は年4.8%、5年間で24%増加させることになります。
⇒自動車の生産、販売は、「企業の自由、企業にお任せ」でいいのでしょうか。
⇒自動車や電気製品は、国、業界として自主規制をすべきです。
⇒自主規制ができないなら、国際的な規制が必要でしょう。

★CO2排出権の取引
京都議定書には、いろんな問題があります。そのひとつが「排出権の売買」です。
これは、余分に削減した国から、排出権を買い取ることです。
日本は昨年末、景気後退で大幅削減したハンガリーから、
1000万トンの排出権を200億円で買収しました。その結果、どうなるでしょう。
ハンガリーは200億ドルを得て景気が上がり、二酸化炭素が増えるでしょう。
日本は、200億円払って、1000万トンを削減しなくて済みます。
つまり、双方、二酸化炭素を削減する、という本来の方向と逆行します。
この制度は、途上国の弱みに付け込んだ先進国のごまかしです。

⇒削減目標が達成できない国から罰金を取り、それを途上国の二酸化炭素削減に
使うほうが、双方に大きな効果があります。