スペシャル対談

2008年5月号 不二熱学工業(株)副社長 近藤康之さん

住宅設備の設計施工を行う不二熱学工業(株)の副社長、大阪青年会議所市民自治醸成室室長の肩書きを持つ近藤康之さん(写真左)。1年半前の「経営塾」に参加し、大きな気づきを得て、価値観のベースが確立したという34歳の経営者です。

マイ箸一本地球を救う !



高木 こんにちは。副社長就任、おめでとう。まずは、私たちの出会いからお話ください。

近藤 2006年9月の『地球村』の経営塾に、青年会議所の友人に誘われて参加させていただいたんです。そこでコーチングと環境の現状を聴かせていただいて、すごく衝撃を受けました。
環境のさまざまな事実は、新聞でも読んでいたのですが、ここまで一生懸命に関わって何とかしようとしている人の話を聴いたのは初めてでした。
経営塾では「マイ箸を持ってきてください」と案内にも書いてあったのに、私は持っていかなくてそのことにもショックを受けました。それ以来、割り箸は1膳も使っていません。知り合いに藍染の箸袋を作ってもらって、韓国製の鉄の箸を入れて持ち歩いています。
箸袋には「一日一善、箸一膳、マイ箸一本地球を救う」と入れてもらいました。鉄の箸は常に2膳持っていて、興味を持ってくれた人には1膳プレゼントしています。

高木 それはうれしいね。それだけ手間をかけたマイ箸を作って、広めてくれているんだね。

近藤 こちらの気持ちがこもっているものは、渡した相手も使ってくれるようです。


高木 経営塾に参加してから、何か変化や気づきはありますか。

近藤 はい、いくつかあります。一つは「事実を知る」ということです。それが何よりも大事だと思っています。二つ目は「押し付けるのではなく、相手のやり方を認める」ということです。

高木 なるほど。二つ目は、私の表現では、「受け止める」ですね。

近藤 そうです。「受け止める」です。三つ目は、「ねばならないと比較を外す」ということ。

高木 なるほど。私は、そのことを「モノサシ」と言っています。

近藤 はい、そのモノサシが、自分にはたくさんあることに気がつきました。家内とも、モノサシをはずす話をよくするようになったんですが、そうしたら、とても夫婦仲が良くなりました。

高木 おお!それはよかった。

リーダーのイメージ力が大事


高木 今、近藤さんが一番力を注いでいることについて教えてください。

近藤 青年会議所においても、事実を伝えるという事業をやってみたいというのが、身近な夢です。具体的に何をしたいのかといいますと、ノンフィクションの映画を作りたいんです。大阪に住んでいる子どもたちや親子を主人公にして、彼らと一緒に、私たちが普段使っているものや、食べているものが、どこでどんな環境で作られているのか、パンの小麦やお箸の木はどこから来ているのか、ルーツを辿っていく映画を撮りたいんです。それを持って小学校を回って、現地に取材に行った人がスピーカーになって話をしたり、どんな風に感じたか話し合ってもらったり、そういう媒体になる映画を作りたいんです。

高木 おもしろい試みだね。それはぜひやってほしいんだけど、青年会議所としてやれるものですか。

近藤 大丈夫です。みんな変わってきていて「何か僕たちにできることはありませんか ?」と、社会貢献したくてしょうがないんですよ。

高木 それはうれしいなあ。でもそれは、近藤さんの熱い思いがそうさせるんだろうね。「メンバーはやる気がないんですよ。みんな忙しいから、新たなことは無理です」という委員長のもとでは、そんな言葉は出てこないからね。「みんな、これやろうよ。おもしろいよ !」というと、メンバーも「そうだね。やりたいな !」と思うし、「大変だとは思いますが、お願いします」なんて遠慮されちゃうと誰も動かない…。

近藤 本当にそうだと思います。引っ張る側の人間のイメージ力なんですね。

高木 そう。最近話題の「引き寄せの法則」で書かれているとおり、自分の思い描いた通りのことが実現する。「やれるさ ! やろうよ ! 僕はやるよ !」というリーダーだと、みんなもついてくる。元気なあなたを見ていると、これからがとても楽しみです。

 リーダーのイメージ力が大事



高木 では、不二熱学工業の業務や、環境への取り組みを教えてもらえますか。

近藤 農業で使われるビニールハウス、あのビニールは従来埋め立てられてきたんですけれど、再利用できないかという取り組みを行っています。まだこの部門は赤字なんですが、働く人たちの意欲がすごいんですよ。顔が、それまでと全然違うんです。これが成功したら世の中に貢献できるんじゃないかと思って。

高木 そういうモチベーションがあれば、世の中が逆転するくらい大きく変わるね。赤字も解消するね。

近藤 はい。来年辺りから黒字になると思います。これからは産業廃棄物のことも、法律の枠組みを作っていかなければならないし、行政に対して発言していけるポジションを掴んでいきたいとも思っています。

高木 それは大事なことだね。環境先進国では、まずビジョンや全体の仕組みを考えて、実現の道筋を作っていくけれど、日本にはそうした「政策」が無く、対処療法的な「対策」が多いですね。対処療法や一時しのぎの「対策」は、無駄な予算を使って現場を混乱させ、「もぐらたたき」のように問題を複雑化し、かえってマイナスになります。

近藤 でも私は何かをきっかけに、一気に変わっていく可能性もあると思うんです。

高木 そうです。きっかけは食糧とエネルギー。この輸入にブレーキがかかったとき、現在の仕組みは根本から崩れるでしょう。ドミノ倒しやオセロのように、一気に変わる可能性があります。それにはグリーンコンシューマが必要なのです。ぜひ、グリーンコンシューマを増やしませんか。

近藤 はい。協力し合えるといいですね。

高木 今後の活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

■ 不二熱学工業(株)
 http://www.fujinetsu.co.jp/

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