巻頭言

【巻頭言】洞爺湖サミット

★洞爺湖サミットとは
先進国首脳会議G8は、今年、日本が議長国となり「洞爺湖サミット」を主催することになりました。
今回の主要テーマは「地球温暖化防止」。
京都議定書以降、2012年以降どうするかを決めます。

★基本的な理解
現状は、二酸化炭素の排出量は、全世界で 266億トン。
先進国8カ国(9億人)は 117億トン、一人平均 13トン。
中国、インドなど途上国180カ国(57億人)は149億トン、一人平均 2.6トン。
今後、先進国の人口は増えませんが、途上国は57億人⇒83億人(2050年)

★予測
仮に、途上国の人たちが先進国並みの生活をするようになると
 13トン×92億人=1196億トン(現状266億トンの4.5倍)
異常気象、海面上昇、食糧危機、世界の破局(最悪のシナリオ)
仮に、途上国の人が、今のままの生活レベルに留まったとしても
 13トン×9億人+2.6トン×83億人=333臆トン(25%増加)
世界全体で、現状より25%増加することは、きわめて危険です。

★長期目標
昨年ドイツで開催されたG8では、「2050年までに半減」を目指すことを決めました。
現状の266億トン(先進国117億トン、途上国149億トン)を半減するということは、
133億トンとなり、現状の途上国の149億トンだけでも、すでにオーバーしています。
しかし、途上国は人口増加しますから、現状の生活レベルのままでも216億トン。
先進国の117億トンを無視しても、目標の133億トンを軽く超えてしまいます。
133億トンを実現するには、先進国は90%削減、途上国は50%削減が必要です。

★福田ビジョン
福田総理は6月9日、「低炭素社会・日本をめざして」というスピーチをしました。
【1】 2050年までに世界全体で50%削減をめざさなければならない
【2】 2050年までに日本は60~80%削減しなければならない
【3】 EUの中期目標「2020年までに20%削減」は、現状からは14%削減を意味するもので、日本も2020年までに現状から14%削減は可能

以上、日本として【1】【2】は、かなり積極的な発言だと思います。
しかし、【3】には国際的な反発がありました。
ドイツのボンで開催されている温暖化防止会議では、
温暖化防止を妨害する国に与えられる「化石賞」が与えられました。
なぜなら、日本は京都議定書の削減目標6%ですが、
現状は6%増加したので、2012年までに12%を削減しなければならないのです。
「日本は2020年までに現状から14%削減は可能」は、90年比で8%にしかなりません。
「これは論理(数字)のすり替えである」とのきびしい指摘がなされました。
さらに福田ビジョンの問題点は、日本として具体的な削減策、中期目標が無いことです。
その点については、国内メディアからも厳しい批判が出ています。

★大きな問題点、排出権の取引
たとえば、日本政府は、景気後退でCO2が削減したハンガリーから、
200億円で1000万トンの排出権を買いました。
これはどういうことか、具体例で説明します。
たとえば、自動車1台は1年間に3トンのCO2を出すので、
1000万トンの削減は自動車333万台にあたります。
自動車1台200万円とすると、333万台は6.7兆円相当。
1000万トンを削減するには6.7兆円の販売をやめなければなりませんが、
排出権取引なら200億円で済みます。
なんと6.7兆円の0.3%で済むのです。

★真に必要なこと
すでにドイツなど環境先進国は、次のような政策を実行しています。
【1】
 二酸化炭素を発生するものに環境税。その税金で自然エネルギーを推進
 ドイツはガソリンに高額の環境税を課税し、その税収で市民の風力発電などを通常価
 格の3倍で買い上げ、自然エネルギーを50%にしてCO2半減をめざす。

【2】
 家やビルの熱効率を上げる断熱工事の費用を半額補助

【3】
 自動車から公共交通にシフト
 街中には自動車の乗り入れ禁止。駐車場の廃止。自動車道路を作らない。
 公共交通を非常に便利にし、低価格(または無料)にする。

★道路財源60兆円
日本は道路財源60兆円で、まだ自動車道路を作ろうという動きがありますが、
これは温暖化防止に逆行。この60兆円は、上記の【1】【2】【3】に使うべきです。
福田総理は、「道路財源60兆円はすべて環境に回す!」くらいの英断が必要です。