巻頭言

【巻頭言】エコ・スフィア

『地球村』事務局の応接室に、直径十数センチのガラスの球体があります。
中には、三分の二くらい水が入っています。底には1センチくらい小石があり、
水中にはサンゴの破片と小さな水藻があります。
水中には、よく見ると、小さなエビが一匹泳いでいます。
6年前にも、ここで紹介しましたので、覚えている方もおられるかと思います。

名前は、エコ・スフィア。エコは環境、スフィアは球体という意味です。
6年前、スミソニアン博物館(ワシントン)で買ってきました。
NASAが開発したもので、地球の生態系を現す最もシンプルなモデルです。
球体は完全密閉なのに、エビが6年以上も生きているのです。

私が、これを始めて見たのは、40年近く前のことでした。
当時はミクロコスモス(小さな宇宙)という名前でした。
見たときは衝撃でした。密閉されたガラスの水の中にエビが生きているのですから。
エビが吸う酸素は水藻が作り、エビが出す二酸化炭素は水藻が吸うことで
大気循環が成り立っているのです。エビは水藻を食べて生きていて、
エビの出す糞を微生物が分解して、水藻はそれを栄養として生きているのです。
水は、微生物がいることで腐らずに保たれているのです。

つまり、大気の循環、食物連鎖、水の循環が成り立っているのです。
これらは、とても微妙なバランスによって保たれているのです。
たとえば、温度が少し高くなっても低くなってもエビは死んでしまいます。
すると、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、
食物連鎖が崩れ、水藻も死んでしまいます。
すると微生物も死んでしまい、水も腐ってしまいます。
実際に見たことがありますが、水も濁り、汚くなってしまいます。

エビ、水藻、微生物、温度、大気、水・・・
バランスが壊れるとすべてが壊れてしまうのです。地球も同じなのです。
私たちはすでに、その危険な道を歩き始めたのです。

4匹いたエビは今、1匹ですから、世代交代をすることができません。
もう長くないと思いますが、事務局に来られたらぜひごらんください。