巻頭言

【巻頭言】洞爺湖サミット

★洞爺湖サミット(G8先進国首脳会議)は残念な結果に終わりました。
・「2050年、二酸化炭素排出量を半減」は完全合意できず
・中期(2020年)の具体的目標、決まらず
・来年のイタリアサミット、来年末の国連会議に持ち越されました。
 
★各国の主張、立場
・欧州「G8が積極的な目標数値を決めて世界をリードしなければならない」
・アメリカ「中国やインドなど新興国を含めなければ効果がない。
 G8だけが削減させることは、新興国との経済競争で不利になり、
 国内経済がダメージを受ける。G8だけで目標を決めるべきではない」
・中国、インド「温暖化はG8の責任だから、半減を共通目標とするなら、
 G8は半減以上(80~95%の削減)の努力をすべきである」

★現状認識
(1)世界の排出量は266億トン(2005年公表値)
・1人あたりの格差が大きい(先進国12トン、中進国3トン、後進国1トン)

(2)中進国、後進国では、年率10%くらいで増加している。
・100年後、最大6.4℃の温度上昇(現在はまだ0.7℃)
・異常気象により食糧危機(食糧自給率の低い日本はもっとも危険)
・海面上昇などで大量の環境難民が発生
・紛争、混乱、戦争、世界規模の破局は避けられない

★二酸化炭素は減らすしかないのです。
1.「2050年に温度上昇2℃に抑えるためには半減」を実現するには
  排出量を 266億トン÷2=133億トン に抑えることが必要

2.2050年の世界人口は約90億人だから(国連報告)
  もし平等な生活をするなら、
  133億トン÷90億人=1人1.5トン
【結論】
 これは、日本の「現状の十分の一」だから「90%削減」
 「先進国は90%削減、中進国は50%削減、後進国は現状で抑える」
 日本は、昭和30年代レベルに戻さないと破局は避けられません。

★技術の改善は30~50%が限度
新製品、新技術の開発には多くのエネルギーが必要。さらに原料の調達から輸送、
工場建設、製造エネルギー、販売、製品の消費エネルギー、廃棄時のリサイクルなど
全期間を通して膨大なエネルギーが消費されます。(ライフサイクルアセスメント:LCA)
「新製品は燃費が2倍。消費電力が半分」であっても、
LCAで評価すると、改善されたかどうか疑わしいのです。

★2050年 格差をどうするのか
現在は先進国、中進国、後進国の間に大きな経済格差があります。
この格差を、解消するかしないかで、未来は大きく変わります。
まず、先進国の生活レベルを下げるか下げないか。

1.先進国の生活を下げない
 先進国のエネルギー効率を上げて、排出量を半減する。(1人6トン)。
 他の国(中進国、後進国)も先進国と同じ排出レベルを想定すると、
 6トン×90億人=540億トン(現状266億トンの2倍)となり破局・・・
 もし、他の国の生活水準を先進国の半分で抑えるなら、
 6トン×10億人+3トン×80億人=300億トン(現状の1.2倍)となるため、
 「2050年に半減」は実現できない。
 以上でわかるように、「先進国の生活を下げない」という選択肢は不可能。
 
2.先進国の生活を半分に落とす。
 さらに排出量を半減する(3トン)。
 もし他の国も先進国と同じレベルを想定すると、
 3トン×90億人=270億トン(現状266億トンと同等)となり、温暖化防止はできない。
 もし、他の国の生活水準を先進国の半分に抑えるなら、
 3トン×10億人+1.5トン×80億人=150億トン(現状の60%)となるため、
 「2050年に半減」はほぼ達成できる。
 

【結論】より現実的なビジョン
1. 先進国は生活水準を半分に下げ、エネルギー効率を2倍に上げることで、
   排出量を1/4にする必要があります。(1人3トン)

2. 他の国は、先進国の半分に抑える必要があります。(1人1.5トン)

★低炭素社会とは
現在のように化石燃料を燃やして自動車、電気を大量に使う社会は不可能。
化石燃料以外の選択肢として、
1.自然エネルギー(風力、太陽熱、太陽光)、
2.水素エネルギー、
3.原子力発電となるわけだが、原子力は、あまりに危険性が高い

1、2 を上手に使いながら、世界が平等に実現できる生活水準は、
日本の昭和30年代くらいの生活です。

★私たちにできること
(家庭生活でできることとCO2の削減率)
・自動車をやめると30%削減
・風呂をやめると14%削減、半分にすると7%削減
・冷暖房をやめると10%削減、使用を半減すると5%削減
・電気をこまめに消すと4%削減、白熱電球を蛍光灯に替えると4%削減
・電源を主電源で切ると3%削減、コンセントを抜くと3%削減
・一家団らん(食事、テレビ、お風呂を家族いっしょに)すると15%削減
・三世代同居、一家団らんすると2世帯合算して30%削減
(ふだんの生活面でできること)
・自動車、エレベータ、エスカレーターの使用を減らす
・自動販売機、24時間コンビニの利用を減らす
・飽食、贅沢、肉食をやめる、減らす
・コーヒー、お酒、タバコをやめる、減らす