巻頭言

【巻頭言】日本の農業の危機

日本の農業の危機につながる二つの問題をお知らせします。

★BL米(Blast Resistance Lines)
米の病気である「いもち病」に抵抗性を持つように改良されたコシヒカリのことです。
何が問題かというと、BL米は従来のコシヒカリとは別品種で、「味もコシヒカリより落ちる」
という意見もありますが、販売されるときは「新潟県産のコシヒカリ」と表示されるため、
一般消費者には区別できないことです。
なぜ、そんなことをするのかというと、新潟産(特に魚沼産)のコシヒカリは人気ですから、
他県産のコシヒカリを「新潟産」と産地偽装されると、同じコシヒカリ(DNAが同じ)だから
区別できません。ところがBL米のDNAは従来のコシヒカリと異なるので、
他県産のコシヒカリの産地偽装を見破ることができます。
しかし、従来のコシヒカリとDNAの異なるものを、「新潟県産コシヒカリ」と表示することは、
別の意味での偽装ではないでしょうか。

さらに、BL米は、毎年少しずつDNAを変えることができます。
そのため、仮に他県が今年の「新潟BL米」の種を入手しても、新潟が来年の「新潟BL米」
のDNAを変えれば、DNA鑑定により「これは今年の新潟産コシヒカリではない」
とすることができます。しかし、このことで、農家は毎年、農協から「今年のBL米の種籾」を
買わなければならなくなります。
でないと「新潟県産コシヒカリ」と認定されなくなる可能性があるからです。
これは、「種籾を残して来年に蒔く」という従来の農業の基本が否定されることになります。

すでに2005年から、「新潟県産コシヒカリ」の大部分は「BL米」になり、そ
れが「新潟産コシヒカリ」として販売されているのです。
そして、このBL米の問題は、もっと重大な問題の始まりなのです。

★農作物の種苗にも企業の知的財産権
従来、農家は種苗を購入して、自家栽培(自家増殖)することは自由でした。
つまり、農家の自家栽培の自由は、育成者権利を上回っていました。
ところが、企業が、種苗の知的財産権(独占権)を主張し始めたのです。
2007年農林水産省は、企業の権利を認める方向に大きく舵を切り、まず83種類の農

作物の種子採取を禁止しました。さらに、禁止品種を年々増やし、近い将来には、
購入した種苗について、種子採取は原則禁止の方針が明確になってきました。
「違反者には3年以下の懲役、300万円以下の罰金。法人には1億円の罰金」
  (参考 http://www.hinsyu.maff.go.jp/hourei060801/060801.html
このことはすでに世界的な広がりがあり、次のような事件も起きています。
1998年カナダの農民が、巨大企業(モンサント社)から告訴され、
本人は身に覚えが無いのに「DNA鑑定」によって、
その企業のGM(遺伝子組み換え)作物を栽培しているとして有罪となりました。

この問題の危険性は、
1.企業が農業を支配し、小規模農家に壊滅的な打撃を与える
2.GM作物は、有害性、他の植物との交雑など、多くの問題がある
3.最大の問題は、環境の変化に弱く、大規模な不作、食糧危機を招く

この危険な流れを防ぐには、
1.GM作物(遺伝子組み換え)、BL米を買わない
2.「コシヒカリ」を買う場合、「BL米」でないことを確認する(難しい)
3.農作物は、有機もの(無農薬)を買う
4.季節もの、路地もの(ハウスものではないもの)を買う
5.多くの人に、この事実を知らせる
6.農水省に対し、反対の意志表示をする
さらに、おすすめしたいのは、
7.家庭菜園を始める
8.有機農家とつながり、農作業に参加する
9.安全な食(食育)に関心を持つ

日本は、食糧自給率が、主要国として世界でもっとも低いのです。戦後60年以上、
ずっと経済成長を最優先してきた日本は、根本的な政策転換が求められています。