スペシャル対談

2008年12月号 サステナ代表 マエキタミヤコさん

 
「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表や、「ほっとけない 世界のまずしさキャンペーン」アドバイザーなど、数々のNGOキャンペーンを展開し、成功させてきたマエキタミヤコさん。難しい社会問題も、彼女の手にかかれば、誰もが気軽に参加できる楽しいプランに変わっていくと、注目を集めています。
対談では、日本の未来を政治から変える方法が話し合われました。


■ 国民には知る権利がある !

高木:今日はようこそ。会うのは1年ぶりかな?

マエキタ:そうですね。前にお会いしたときは電通の社員で、今は㈱サステナの代表取締役になりました。まあ、やっている仕事は一緒なんですけどね。

高木:サステナの仕事は、どんなお仕事ですか。

マエキタ:国民の知る権利を守る」という姿勢で広告に取り組む人たちがいてもいいじゃないか。そんな意味で意識啓発も広告、教育も広告。そういった情報発信のお手伝いをしています。

高木:サステナでは、どんなことに取り組んでいるのですか。

マエキタ:今、目をつけているのは、情報の行き渡らせ方です。今は、国民の知る権利や世論がきちんと機能していないんじゃないかと思うんです。私は一般大衆の良識を信じていますので、情報や世論がちゃんと機能すれば、社会は自然によい方向へ向かっていくという確信があるんです。ところが、世論へのリスペクトが、永田町にも、マスコミにも、ジャーナリストにも足りていない。永田町は世論の操作、プロパガンダばかり上手になっていく。そして国会議員と市民、役人とNGOなどが、アドボカシー(政策提言)の場で、どうもギクシャクしてしまう。子どもの頃から、どっちが上でどっちが下みたいなことを教わるから、対等に話し合うことに慣れていないんじゃないかと思うんです。

高木:私も、それを痛感しています。そこをサステナが何とかしたいと?

マエキタ:そうですね。国会と市民をつなげたり、選挙を国民の手に取り戻したり、そういうキャンペーンの構築に力を入れようかなあと思っています。


■ ギャンブルはカジノでどうぞ!

高木:それは面白い。楽しみだね。ところで、最近の話題で、サブプライムローンの破綻から世界的に広がった「金融危機」をどう思いますか。

マエキタ:金融って私まだ不勉強なんですけど。株価が上がった下がったで騒いでいる友だちはいるんですが、少なくとも私たちには関係ないかなって。

高木:私は、あなたにもこの問題に関心を持ってもらって、政府が行おうとしている方向が間違っているという情報も発信してもらいたいと思うんだけど。

マエキタ:私、ゼミは一応、財政学なんです。でも金融は経済じゃないと思うんです。経済は「経世済民」でしょ ? 金融には、経世済民も哲学もない。あれはギャンブルであって、バーチャル経済。ギャンブルが好きな人は、好きな人だけでカジノに閉じこもってもらって、そこで存分にやってほしい。私たちには一切迷惑をかけないでほしい。

高木:あはは…(笑)。それには同感! でも、ギャンブルで使っているコインと、実際のお金とを、ごちゃ混ぜにしたことが問題なんだ。ギャンブルの穴埋めに、公的資金、つまり我々の税金を投入しようとしていることが間違っているんだ。

マエキタ:ギャンブルのコインは別にしてくれないと。そしてこの騒ぎが収まった頃には、格差は更に広がっているわけでしょう? あの手この手で、税金を好きなところに持っていかれてしまうから。だから国民は国会をしっかり見張らないと…って思います。

高木:そうなんだ。サブプライムローンは、低所得者層に「家を買うためのお金を融資してやるから」といって貸し付け、結果的には更に貧乏にさせたんだよ。格差を広げる仕組みだったといってもいい。

マエキタ:現在は、政治が3%しか機能していなくて、97%は死んでいるって感じるんです。つまり瀕死の状態。そこを何とかしなくちゃって思うんです。

■ 国民は知ることで発言する!
高木:政治が3%しか機能していないなら、国民も3%しか関心を持っていない、ということだね。
マエキタ:それもあると思います。ニワトリが先か卵が先かと一緒。今、永田町を観察しているんです。するとね、選挙と選挙じゃないときと、全く別人なんです。こんなに違っていいのかというくらい別人。それにNGOの人たちも、ロビーイング(政府関係、政治への働きかけ)をほとんどしていない。「何でやらないの?」って訊くと「政治家に利用されるのが嫌だから」っていうんです。
高木:あなたの考えているロビーイングと、NGOの考えているロビーイングは、意味が違っているのかもしれないね。
マエキタ:そうなんです。ロビーイングを「利益誘導」って訳す人もいるし、どうにも悪い印象なんです。日本の場合、悪いロビーイングの例ばかりですから、いい大人を見たことのない子どもみたいなの。
高木:政治がそもそも嫌いだとか、官僚のいいなりになっている政治家への不信感もあって、ロビーイングをしても無駄、自分たちで動いた方が簡単、と考えているのかもしれない。
マエキタ:私は、政治を嫌いなのはもったいないと思うんです。「立憲君主民主主義、主権在民、三権分立、シビリアンコントロールをこの国に!」って思う。行政は国会議員が決めたことに従って仕事をしなければならない存在だし、その国会議員は国民に選ばれるんだから、国民は選んだ責任として、国政調査権を駆使して物事を明らかにするよう、国会議員にいう権利がある。そこを明確にさせたいんです。その情報発信のために、民主主義の鏡になるテレビを作ろうと画策中なの。国民の知る権利を守るためのメディアがないから、それを作りたいの。
高木:Green TVの水野雅弘さんが作りつつあるじゃない。
マエキタ:そうなんです! 水野さんとは、一緒にやっているところ。あと、神保哲生さんのビデオニュース ドットコム。こちらは課金で運営しているんです。月額525円の会員制なので、ぜひみなさん協力してください。市民のメディアを作りましょう !  
高木:いいね! 政治を変えて社会を変えたいね。まずは教育と情報の流し方、そこを変えなくちゃならないと強く思う。今こそ政権交代のチャンスなんだ。

マエキタ:国民の知る権利、それと対等な対話。この2つが必要だと思うんです。知れば対等に話せるようになる。選挙に向けてエコ投票のスコアカードの準備もしているんです。ぜひ協力してくださいね。
高木:有効に力を合わせていきたいね。情報をシェアしあって、がっちりスクラムを組んで。それがネットワークの力なんだ。今後もいい繋がりを作りましょう。

■サステナ
http://www.sustena.org/
■Green TV
http://www.japangreen.tv/
■ビデオニュース.com
http://www.videonews.com/