スペシャル対談

2009年1月号 日本UNHCR協会事務局長 根本かおるさん

難民を保護・支援する国連機関UNHCR(国連難民高等弁務官事務所・本部ジュネーブ)の、日本における民間からの公式支援窓口が日本UNHCR協会です。今回は『地球村』から日本UNHCR協会へ、アフリカの難民支援のために募金が渡されることになり、事務局長の根本かおるさんと対談が行われました。



■ 難民問題に取り組むUNHCR

高木:こんにちは。日本UNHCR協会とは数年前からお付き合いがありますが、根本さんとは初対面ですね。

根本:そうです。私が事務局長に就任したのは2007年6月で、それまで10年あまり、アジアやアフリカなどの最前線でUNHCR職員として働いておりました。

高木:では、UNHCRの活動を、簡単に説明してもらえますか。

根本:UNHCRは、1950年に設立された国連機関で、およそ120カ国に事務所があります。難民の人たちが逃げてきたときに、安全を確保して、当面の食料や寝床を提供します。その後、キャンプを設営することもありますし、受入国の政府と掛け合って支援を提供してもらうこともします。

高木:以前の10年間の活動は、具体的には、どこで、どんなことをされていたのですか。

根本:トルコのアンカラ、アフリカのブルンジ、ルワンダ、コソボ、ジュネーブ本部、WFP(国連世界食糧計画)に出向していたこともあります。ネパールで、ブータン難民の生活支援もしました。

高木:すごいね。そういう活動をすることになった動機や理由は何だったのですか。

根本:31歳まではテレビ局でアナウンサーと報道局の記者をしていました。記者をやる上で専門性をつけたほうがいいと思って、2年間休職して留学したんです。その留学中に、国連難民支援の現場にインターンとして関われることがあって、それまでは記者として人道問題を専門に追いかけていくつもりでいましたが、直接、アクターとして関われる可能性もあるんだとわかって、それから試験を受けて今に至ります。

高木:なるほど。実際に現場で活動したくなったのですね。

■ ハイテクよりもローテクを

根本:この度は、『地球村』から多大なご寄附をありがとうございます。

高木:どうぞ、難民支援に活用してください。用途についてリクエストを出しましたが、いかがでしょうか。

根本:リクエストに沿って、一つは、ザンビアの難民キャンプ近くの植林と農地の再生に、もう一つは、スーダンのダルフール地方難民キャンプの食糧支援に使わせていただきます。

高木:それはよかった。私たちは、アフリカの最も悲惨な難民に対して、緊急支援と自立支援をしたいと思っています。状況を話してもらえますか。

根本:ザンビアには、今年3月に視察に行ってきました。アンゴラ難民の帰還はだいぶ進んでいましたが、難民キャンプでは環境破壊が相当進んでいるんです。水にせよ木材にせよ、大量に消費されてしまったんです。そこで植林が必要になります。難民と地元民に仲良くプロジェクトに関わってもらい、同時に環境教育を行うためのトレーニングも行います。熱効率がよく、薪(たきぎ)が少なくて済む「かまど」の提案とか。まあローテクな話ですけれど。

高木:ローテクが一番ですよ。ハイテクは、製造エネルギーが大きいし、修理も大変、コストも大変だからね。総合的にはローテクの方がいい場合がほとんどです。アフリカなら、太陽熱利用のソーラークッカーがいいんじゃないかなあ。

根本:私もネパールのブータン難民キャンプで、ソーラークッカーを実際に使いました。お天気のいい日なら30分で5人分の食事が炊けてしまうんです。

高木:いいね!ソーラークッカーならCO2が出ないし森林破壊もない。そういうローテクになら、今後も支援を続けたいと思います。

根本:ネパールで成功したので、他の地域にも広めていこうという動きになっています。ネパールでは、最初は恐る恐るクッカーに触っていたおばあちゃんたちが、数週間経つと、喜こんで使いこなすようになったんです。感動的でした。

高木:いいね!そういう支援なら、私も嬉しいし、現地に実際に行ってみたくなりました。

根本:ぜひよろしくお願いします。今回のザンビアの環境保護プロジェクトは、『地球村』さんが最初の支援者です。これを元に来年からの事業ができます。


■ 一等船客は二等船客へ

高木:難民問題の本当の解決には、日本やアメリカなど豊かな国が、より豊かになることをやめなくてはならない。現状の「貧しい人を生み出す社会システム」を改めなければいけないと思います。一等船客(豊かすぎる人)に二等船客(ふつうの人)になってもらうことで、三等船客(貧しすぎる人)にも二等船客になれるのです。その大きな社会改革が私の願いです。環境問題も難民問題も結果であって、原因は経済にあるんだということを、多くの人に知ってもらいたい。それが『地球村』の願いです。

根本:同感です。一等船客よりも三等船客の方が、いい笑顔をしていると思うんです。極限状態に置かれてもエネルギーがあってたくましいんです。でも一等船客の人たちはいつも不満げで…。

高木:そうですね。一等船客はいつも不満で不安だね。いつも、比較して、競争して、「もっともっと」と欲張っているから、いつまでたっても幸せになれない。日本では自殺が年間3万3000人。世界でワースト10、先進国では最悪だからね。

根本:私は先日、プライベートで2週間、ブータンへトレッキングに行ったんですが、ブータンの人たちは非常にいい顔をしておりました。身の丈に合った幸せというものを、よく知っているなあと感じました。

高木:ブータンはGNH(国民総幸福)の国として注目されているから、私も一度行きたいなあ。

根本:キャンプ地がヤクの放牧地の中にあって、夜中にヤクの鼻息で起こされることもありました。

高木:ははは・・・それはヤクの方が驚いていますよ。自分たちの世界に人間が寝ているんだから。

根本:そうですね(笑)。まさに自然と共生する感覚を味わってきました。

高木:いい経験をしましたね。それでは、これからも日本UNHCR協会とは、よいパートナーシップを結んでいきたいと思います。よろしくお願いしますね。

根本:こちらこそ末永くよろしくお願いいたします。いつもギリギリの活動費で動いております。みなさんのご支援、心よりお待ちしております。


■ 国連難民支援 日本UNHCR協会
 http://www.japanforunhcr.org/