巻頭言

【巻頭言】 ヒトはどこから来たのか

★ヒトの進化
ヒトは、46億年の地球の歴史上で、ほんの数百万年前に現れました。
ヒトの先祖は1800万年前にテナガザルから分岐しました。
1400万年前、オランウータンから分岐しました。
900万年前、ゴリラから分岐し、700万年前、チンパンジーから分岐しました。
ヒトは直立になり、手が自由に使えるようになり、頭脳が発達しました。

★群れで暮す
身を守るにも狩りをするにも群れの方が有利です。
弱いものほど大きな群れを作り、強いものほど少数で暮らします。
シマウマは何百頭の大きな群れを作り、ライオンは数頭の群れで暮らします。
動物によって、群れには適正規模があり、ヒトの群れは100人まででした。

★ヒトの暮らし
ヒトは、他のサルや霊長類と同じように雑食だから、狩りもするし採集もします。
女性は多産で育児期が長いから育児や保育に専念、男性が狩りに出るなど社会的分業が発達します。
チンパンジー、ゴリラも、この程度の分業を行なっています。
食料が多ければ群れは大きくなり、食料が少ないと群れは小さくなります。
群れの大きさは、得られる食料の量に比例します。

★群れの拡大
環境に恵まれ分業がうまくいくと群れが大きくなります。
群れが大きくなると、優秀なボスが求められます。
優秀なボスがいなければ、群れは小さくなります。
優秀なボスが現れると、群れは大きくなります。
さらに群れが大きくなると、もっと優秀なボスが求められます。
優秀なボスが現れると、群れはさらに大きくなります。
優秀なボスが続くことで、群れが大きくなります。
とはいえ、群れの大きさは自然の許容量を超えることはできません。
ここまでなら、ヒトはまだ自然と調和して生きていました。

★自然からの逸脱
優秀なボスが続いた群れは、食料の必要性が高まりました。
その中で、ヒトは農業を発見しました。農業は自然の逸脱の第一歩でした。
農業によって、自然からは得られない食料を得ることができるようになりました。
そのことで人口が増大し、群れが大きくなりました。
群れが大きくなると、より多くの食料が必要となりました。
農地の拡大のために、森林破壊が広がりました。
食料生産が増加すると、人口も増加しました。
食料生産に余剰が出ると蓄積が始まりました。
食料の備蓄が、富のスタートとなりました。
富の増加が、ボスの権力の増大となりました。

★文明の誕生
農地の拡大(森林破壊)、食料の蓄積(富の蓄積)、人口増大が始まりました。
自然の中で生きてきたヒトは、新たな道を歩み出すことになりました。
人口増加すると、それを支配するためには階級が必要となりました。
一般の人々を支配する人を作り、それを支配する人を作り、それを支配する人を作りました。
そして一番上の者を王と呼ぶようになりました。
ここに支配する仕組み、支配する秩序(社会)が生まれました。
社会を維持するために、強い権力が生まれました。

★権力、支配
王は強大な権力を求めるようになり、多くの富を求めるようになりました。
王は、権力や富を自分一代では終わらせたくなくなりました。
王は、わが子を次の王にしたくなりました。王権の世襲制を求めるようになりました。
世襲制を可能にするには何が必要か。作り出されたのが宗教。全能の神。
王権は、全能の神から与えられたもので誰も逆らうことができないもの。
王権の世襲制が実現した社会は、領土を拡大し、富を拡大し、その権力を誇示するために、
巨大な建造物を作りました。巨大なピラミッド、宮殿、城、万里の長城・・・。
富の象徴、権力の象徴として、より大きなものを作るようになりました。
それらの建造には、多くの労働力、多くの資源、多くのエネルギーを浪費しました。
それが森林破壊、砂漠化などの環境破壊を起こし、結果として巨大文明は全て滅亡しました。
現在、私たちは過去に繰り返してきた過ちを、最後の実験で確認をしているのかもしれません。
地域文明での崩壊は一地域の滅亡ですが、今回は世界文明なのです。