スペシャル対談

2009年2月号 グリーンTVJapan社長 水野雅弘さん

グリーンTVとは、イギリスに本部を置く環境映像専門のグローバルメディア。「地球温暖化」「自然環境」「生物多様性」「エコノミー」「トーク」などの専門チャンネルから、世界に向けて環境情報を発信しています。NPOの活動紹介のコンテンツもあり、昨年11月には高木さんのインタビューも加わりました。


■ 結論は視聴者が考える番組を

高木:こんにちは。水野さんと出会ったのは、ちょうど1年前でしたね。

水野:はい。いつかお会いしたいなと思っていたところ、昨年の1月、お電話いただき、お会いすることができました。

高木:世界の環境情報をインターネットで配信していると聞いて、ぜひ会ってみたいと思って急きょ連絡を取ってもらったのです。

水野:お話はショックでした。よかれと思っていたエコ商品が実はエゴ商品であることなど、気付かされる点がたくさんありました。その後も何度か講演を聴かせていただき、エコ商品とは、最終的に省エネ商品かどうかではなく、LCA(ライフサイクルアセスメント:商品の総合的な環境負荷)を考えた上で判断しなければならないことを知りました。

高木:ハイテク商品は巨大なエネルギーピラミッドの頂点に存在するだけで、その商品のエネルギー消費は少なくても、トータルではエネルギー効率が悪い場合が多いのです。そのことを、読者のみなさんにもぜひわかってもらいたいと思います。

水野:私も物事を総合的に見なければならないという視点に気付かせていただきました。

高木:私もグリーンTVのコンテンツを見させていただいて、あんな短時間で伝えていく番組には、学ぶべきところがたくさんありました。

水野:ありがとうございます。3分、5分という短い時間で、起承転結の「結」を出さないようにしています。もちろん伝えたいメッセージはあるのですが、結論は番組を見た方に考えてもらいたいのです。

高木:本場のイギリスでもそういう手法を?

水野:実は、私も以前は一件20~30分と考えていたのですが、3年前、イギリスに行った時、彼らは「3分、5分でやるんだ」と言うんです。結論は言わずに相手に考えさせるというのは、先生の講演も同じですよね。

高木:そうですね。「これが正解」というティーチングではなく、事実や問題を投げかけて、聴いた人に気づいてもらうというコーチングが大切です。

水野:昨年、経営塾に参加させていただいたときも、先生が多角的な視点で、淡々と投げかけていかれる様子に、大きな学びがありました。


■ 世の中を変えるムーブメントを

高木:昨年11月には、私のコンテンツも作っていただいてありがとうございました。

水野:こちらこそありがとうございました。あのインタビューは、講演会を主催される方々に、講師紹介のツールとして使っていただけたらうれしいです。今回はグリーンコンシューマについて伺いましたが、これからはいくつかのテーマに分けて、コンテンツを作ってみたいと思います。

高木:よろしくお願いします。ところで現在は、どのような番組を、どれくらいの頻度で配信しているのですか。

水野:月に12本以上です。イギリスと組んでグリーンTVを始めましたけれど、最近は日本のすばらしさに気付くことが多くて、その気付きを伝えていくことが大切だと感じています。

高木:私がグリーンTVに期待しているのは、ムーブメントを起こせるツールだということです。グリーンTVの本当のミッションは、『地球村』のミッションと同じで、「世の中を変える」ということでしょう? 入口は、地球温暖化でも、グリーンコンシューマでも何でもいいけれど、「こういう世界にしようよ」という、共通のメッセージに向けて取材をして、ムーブメントを起こしていくことが大事だと思います。畑作り、自給自足、スローライフなど、生きるために必要なメッセージを発信していってくださいね。

水野:わかりました。実は私も近々に鎌倉に引越しをするんです。今は東京の世田谷に住んでいて利便性はいいのですが、庭で家庭菜園をしたり、地元の樹木を植えたりしたいと思っています。移住の一番の目的は子どもです。緑があって、海の匂いがして、歴史と文化がある、そんな場所で育てたいと思って鎌倉に決めました。

高木:それはいいことですね。不自然な都会は、不自然が多く、子育てにはよくないですね。

水野:私も今までは、都会の利便性や快適性を勘違いして生きてきたんです。でも、子どもの感性が育つ時期には、土の匂いや木の匂いが大切だとわかりました。新居はオフィスも兼ねるので、広めの3階建てになりましたが、何とか国産材で建てたいと思って、苦労してあちこちから取り寄せました。

高木:国産材で優れた技術を持っている住宅メーカーや、優れたポリシーをもった住建企業のネットワークもあります。私もよく講演で招かれています。もっと前にわかっていれば、ご紹介できましたね。

水野:そうでしたか。ご相談すればよかった。今度、庭や畑ができたら、ぜひ遊びにいらしてください。


■ 自分・主体・自立のSOHOを

高木:ではこれから鎌倉で子育てをして、在宅でも仕事をされるのですね。

水野:そうです。私は「日本SOHO協会」の理事もしているんです。SOHOとは「スモールオフィス・ホームオフィス」の頭文字で、スキル(優れた技能)を持つ人たちが、企業に属さずに在宅で仕事をしていくスタイルのことです。ITができる、絵が描ける、翻訳ができるといった方がたくさんいるんです。その人たちが、自分の持つスキルを仕事として成り立たせるために、ネットワークを作りたいと思って理事を引き受けました。11月1日を「SOHOの日」として呼びかけています。

高木:11月1日にしたのはなぜですか。

水野:111と1が並ぶので、1をアルファベットの「I」に見立てて、identity、individual、independentという意味を持たせています。「自分らしく主体的に自立して生きていこうよ」という意味です。

高木:なるほど。私の目指すところもそこですよ。では最後に、読者のみなさんにメッセージをどうぞ。

水野:ぜひ、グリーンTVを見てください。230本ありますので、まずは興味のあるチャンネルからどうぞ。

高木:私からも推薦します。まずご覧ください。

グリーンTVJapan
 http://www.japangreen.tv/
 高木さんのインタビュー
 http://www.japangreen.tv/journal/#/000444