【巻頭言】日本の経済の仕組み
新聞に、「鳥取のかんぽの宿、1万円で売却、落札業者は6000万円で転売」とありました。
調べてみると「建設費は10億円」でした。
つまり国民の10億円で建てた施設が、赤字経営だから1万円でたたき売り。
落札業者は6000万円で売って暴利をむさぼった。ひどい話です。
さらに、「かんぽ79の施設をオリックスに109億円で売却予定」。
調べてみると「建設費2400億円」。それを96%の値引きでたたき売る予定なのです。
その損失は、国民(あなたや私)の郵便貯金と簡保なのです。
この施設を作った責任、赤字経営の責任、たたき売りの責任はどうなるのでしょう。
貯金、保険金、年金は、私たちは「自分のお金を預けている」と思っていますが、そうではありません。
郵便貯金や簡保は日本郵政(以前は総務省・郵政省)が、
銀行預金や保険金は銀行や保険会社が、年金は社会保険庁が運用しています。
つまり私たちは「投資している」のであり、それを国や民間の金融機関に任せているのです。
投資にはリスクがあるのは当然で、儲かれば増える(利子が付く)し、損をすれば減ります。
場合によっては無くなってしまう場合もあるのです。
現在、日本の赤字(地方の赤字を含めて)は世界最大の1000兆円以上。
これは、国民が背負っているのです。一人当たり約800万円。家族4人なら3200万円。どういう意味かおわかりでしょうか。
この巨額の赤字はなぜ生まれたのでしょう。
国は、福祉や医療、教育、公共事業をしていますが、その中には多くの無駄があります。
特に公共事業は、無駄なダム(先月号で書いた熊本県の川辺川ダム、淀川の大戸川ダムなど多数)、
車の走らない自動車道路、ムダな埋め立て(長崎県諫早湾、島根県中海の干拓など)、
見通しのつかない空港(静岡空港、茨城空港など)、
各地に作ったリゾート(シーガイヤ、グリーンピア、チボリ公園など)、
数えきれないくらいです。同じ場所の「掘ったり埋めたり」の無駄な道路工事や護岸工事。
その中には、いまも赤字を垂れ流しのものもたくさんあります。
「かんぽの宿」もその一つ。その他にも、厚生年金にも多くの赤字施設があります。
さらに、赤字施設が信じられない価格で売却されているのです。
会社なら倒産したり、社長は辞任しますが、国は倒産もせず、
責任者は辞任もしないから、赤字の垂れ流しが続いているのです。
巨額の赤字の大部分は、間違った投資、まちがった公共事業です。
さらにたちが悪いことに、その張本人(政治家や官僚)は、
公共事業を発注する「特殊法人」や公共事業を受注する「特定企業」に天下りして
不適切な公共事業を推進し、「天下り」を転々とすること(渡り)で高額の退職金を
何回も受け取るのです。それが、政、財、官の悪のトライアングル。官僚政治です。
そのような仕組みの結果、1000兆円を超える巨額の赤字が生まれたのです。
そして、その赤字が毎年20~30兆円ずつ増えているのです。
★その赤字は、なぜ放置されたのか。
国家予算には、国会で審議される一般会計と、国会で審議されない特別会計があります。
一般会計は新聞やテレビで報道されている「83兆円」ですが、特別会計は「200兆円」。
一般会計よりはるかに大きいのです。
それを動かしているのは国会ではなく官僚(霞が関)であり、
それが、「官僚政治」「政権が代わっても政治は変わらない」と言われる理由です。
一般会計と特別会計の総額が本当の国家予算ですが、その実態は非常に複雑で
重複もあり、実際の国家予算の総額は約214兆円です。
★より重要なこと
一般に知られているのは「国家予算83兆円、税収54兆円、赤字29兆円」ですが、
実際は「国家予算214兆円、税収54兆円、赤字160兆円」です。
では、その赤字は誰が?
それは、国民(あなたや私)の預貯金、保険金、年金なのです。
つまり、国民の預貯金、保険金、年金1400兆円のうち、
1000兆円はすでに投資されて損失になってしまったのです。
★事実を知ること
国民の預貯金、保険金、年金の大部分は、無駄な公共事業、
不適切な公共投資によって失われたのです。今も、その張本人の官僚の給与や、
官僚OBの不正な給与や退職金や賄賂に使われているのです。
いま、議論されていることや、考えられる可能性は、
1.消費税を上げて税収を増やす。
2.鎌倉幕府の「徳政令」のように、借金をすべてなかったことにする。
3.政府が1000兆円のお金(紙幣)を発行する。
いま、みんなが一斉に預貯金を引き出そうとしたら、どうなると思いますか。
10年後、20年後、年金は全額支払われると思いますか。
10年後、20年後、死亡時の生命保険は全額支払われると思いますか。
※参考 「日本人が知らない恐るべき真実」(安部芳裕著 晋遊舎)