【巻頭言】本当に不景気ですか
●情報操作、世論誘導
最近、日本政府の動きやマスコミの情報の流し方に問題を感じます。
・北朝鮮の報道や過激な対応で軍事強化の世論誘導
・自民党の方が圧倒的に問題の多い献金問題で、民主党だけをターゲットに捜査し、民主党の支持率を低下させた世論操作
・「100年に一度の経済危機」と不景気感を煽り、15兆円の財政出動、史上最大のばらまき、史上最大の赤字国債
以上、政府は、経済危機を煽り、対外危機を煽り、軍備強化、財政破綻など、日本を危険な方向にミスリードしていると感じます。
★「100年に一度の危機」ですか?
この50年で日本のGDPは50倍に伸び、「生活に必要なものは十分に足りている」と言われた1980年以降、本当に必要だったのは、
<1> 格差の是正、
<2> 福祉、環境、食糧の自給自足
でしたが、実際には進む方向を真逆に間違えました。
巨額の公共投資、消費の拡大、貿易依存の結果、格差の拡大、過疎と過密、資源とエネルギーの枯渇、環境破壊、食糧自給率の低下を招きました。
GDPが1980年の2倍になった現在、GDPが10%下がろうが、20%下がろうが本当は何も困りません。
給料が半分になっても、物価も半分になるのなら、むしろGDPが半分になった方が問題点が解消するでしょう。
★現在の景気対策はムダ
4月にロンドンで開催された金融サミット(G20)で、「世界経済回復のために500兆円の財政出動」を決めました。
日本政府は15兆円の財政出動を決めています。
これは国民一人当たり15万円!これが公共事業や大企業の救済に使われるのです。
公共事業の多くは「無駄なダム、無駄な道路、無駄な空港」に代表されるように、巨額の資金を使って環境を破壊し、その後、赤字を垂れ流します。はっきりムダです。
また、その巨額の財源はどこから来るのか、知ってもらいたいのです。
「財源」は、国債、地方債という形で、銀行、郵便局、保険会社が投資し融資されます。
つまり「公的資金」は公的資金ではありません。私たちの「私的資金」なのです。
すでに国民の「預貯金、保険金、年金」(総額1400兆円)のうち、
国の赤字で1000兆円は実質、不良債権※ となっています。
新聞でも「○○銀行、不良債権○兆円、○○生命、終身年金保険○○%減額」と報道され始めたのです。
※推薦図書 「恐るべき真実」(安部芳裕著)
★国や自治体がやってはいけないこと
・無駄な公共事業(無駄なダム、無駄な道路、無駄な空港など)
・大企業の救済(自動車、家電、土建、金融)
・環境に悪いものへの助成金(新車購入、高速道路料金値下げ)
・不要な工事、不要な発注(各省庁、各自治体)
・お金のばらまき(定額給付金)
現在、政府や自治体がやっていること、やろうとしていることは、ほとんどは「やってはいけないこと」なのです。
●政府は、何をやるべきか
本来、政府がやるべきことは、今やっているような場当たり的な「対策」ではなく、長期展望に基づく「政策」なのです。日本に決定的に欠けているのは、ここなのです。
★日本はどう進むべきか
戦後60年、日本は経済優先を続けてきた結果、大きな問題を抱えています。
1) 大量消費、大量廃棄の消費社会、格差社会
2) 貿易依存、食糧自給率が主要国で最低
3) 環境、福祉の遅れ
だから、日本のビジョンは次の通り
1) 消費を下げる、格差の是正
2) 自給自足(特に食糧)
3) 環境、福祉の向上
★農業は人手不足
現在、製造分野(第二次産業)で失業が増え、農業では人手不足で困っています。
休耕田が増え、「家も土地も提供するから来てください」という村も多いのです。
現在、日本の農業人口は全労働人口の5%で、60%が65歳以上の高齢者です。
10年後には、農業人口は2%になるかもしれないのです。
世界人口の増大、食糧危機の時代、日本はどうやって食べていけるのでしょう。
現在の失業、余剰労働力を、農業にシフトさせる必要があります。
農業では100万人の人手不足。現在の失業、余剰労働力100万人。
これをうまく対処すれば、日本の将来は明るくなるのです。
農業への生活支援は、1人月10万円、年120万円が必要です。
100万人に支給すると1.2兆円。財政出動15兆円と比べれば、はるかに安いのです。
農業復興は今後、絶対に必要です。そして今が最大のチャンスなのです。
このように、先を見通した財政出動なら国民は納得します。
★食糧の自給率を上げる
日本の農業の弱体化の原因は、国の農業政策、食糧政策の失敗にあります。
「あれはだめ、これはだめ、あれをしろ、これをしろ」という制限によって自主性、自主努力を失ったこと。農協への借金が大きく、抜け出せないことが大きいのです。※
農業復興は、こうした理不尽な借金を帳消しにし、農家の自主性、自由を認め、自主流通を認め、農協から解放すること。
自給自足をめざし、10年計画で実現することです。
キューバでも、それによって自給自足を実現しました。
欧州連合は、実際に食糧の自給自足を強力に実施し成功しました。
※推薦図書 「農協の大罪」(山下一仁著・宝島社新書)
★医療、福祉、教育を無料
日本は老後の不安が、先進国の中で最も大きい。
日本は、「税金が高い、税金の使い方がおかしい」という不満があり、老後の不安も大きいのですが、税金や社会保障の国民負担率が、日本(40%)よりもはるかに高いデンマーク(73%)では、税金が高いという不満もなく、老後の不安もありません。
なぜならば、医療、福祉、教育が無料だからです。
日本も遅ればせながら、土建国家から脱して福祉国家をめざすべきです。
★マインドセット (考え方、価値観)
「その問題を生んだのと同じマインドセットでは、その問題は解決できない」
アインシュタイン
この言葉の意味は深い。
これまで、日本も多くの先進国も、経済優先で突き進んできました。
その結果が、環境破壊、経済格差、資源の枯渇、紛争、戦争なのです。
経済優先というマインドセット(考え方)を改めない限り、「環境保護」と言おうが、「世界平和」と言おうが問題解決はしないのです。
現在、政府は「新車購入には20万円の支援金」「高速道路を千円にする」、民主党は「高速道路を無料にする」などと言っていますが、しかし、自動車を乗りやすくすることで何が実現するのでしょうか。
環境面でも、資源面でも、まったく逆方向です。
むしろ、自動車やガソリンに高い環境税をかけ、欧州連合(EU)のように自動車を乗りにくくすることが必要なのです。
日本では毎回、「ビジョンなき人気取りの、金のばらまき対策」が行われてきました。
いつになったら、改めるのでしょう。
マインドセットを、「目先の経済優先」から「未来志向、環境優先」に変えない限り、問題解決できないのです。