地球は今

【地球は今...】グリーン・ニューディール政策

イギリスのNPOがイギリス政府に提言した報告書『グリーン・ニューディール』がきっかけとなり、国連や各国でも『グリーン・ニューディール』が発表されています。
日本の政策は世界各国の政策とどう違っているのでしょうか。


●「グリーン・ニューディール」とは 
イギリスのNPO「NEF(ニュー・エコノミックス財団)」が、2008年7月に英国政府へ向けて公表した報告書『グリーン・ニューディール:
金融恐慌、気候変動(地球温暖化)、原油高騰の3重の危機を解決する政策集』が世界的に高い評価を受け、国連環境計画もグリーン経済構想を打ち出しています。
「NEF」は、現状の危機を解決するために、

・金融部門の縮小(メガバンクの失策は大規模なダメージを市民生活に与える)
・低炭素社会、低炭素経済の実現(京都議定書の遵守、2050年に温暖化ガス8割削減など)
が必要であるとし、イギリス政府へ下記の政策を提言をしました。

・エネルギー効率改善のためにビル単位での小規模発電などへの政府主導の投資
・低炭素社会へのインフラ整備によるグリーンジョブの創出
・新エネ開発や省エネのため、石油、ガス関連企業への課税強化
・英国の金融システムの再構築(環境優先への転換、メガバンクの解体)
 など

※「ニューディール(新規まき直し)政策」とは?
1929年、フランクリン・ルーズベルト米大統領がウォール街大暴落とその後の世界恐慌を克服するため行った社会・経済政策。
自由市場への規制強化や公共事業への公的資金投入で、失業者の雇用、基幹産業の救済などにより経済の建て直しを行おうとした。
しかし、アメリカの実質的な経済復興は、第2次世界大戦の軍需のためとも考えられ、政策としては失敗との評価も多い。


●国連の「グリーン・ニューディール」
国連環境計画(UNEP)は、グリーン経済構想「グローバル・グリーン・ニューディール」報告を公表。
世界のGDPの1%(7500億ドル)で「再生可能エネルギーの推進、持続的農業、生態系保護、グリーンジョブの創出、社会的弱者の保護、温室効果ガスの削減、生態系の劣化防止、水不足への対応など」が可能であるとし、アヒムシュタイナーUNEP事務局長は「新たな経済の始まりになる」としています。


●アメリカの「グリーン・ニューディール」
オバマ米大統領は、「再生可能エネルギーへ1500億ドルを投資し、500万人のグリーン雇用を創出する」と公約、ブッシュ政権とは180度違う環境重視の政策、意識改革を打ち出しています。
例えば、自然エネルギーを軸とするグリーン景気刺激策は、ばら撒き公共事業ではなく、民間の投融資を引き出し活性化させる施策になっています。


●欧州では、すでにグリーン化
ドイツ、オーストリア、北欧諸国を中心に、公共交通の復権、環境配慮型の都市づくり、再生可能エネルギーの拡大などが行われています。
例えば、ドイツでは、再生可能エネルギー産業だけで300億ユーロ(4兆円)規模、28万人の雇用を生んでいます。(環境トピックス参照)


●日本版「グリーン・ニューディール」
環境省が中心となり、「日本版グリーン・ニューディール」を提案しています。
しかし、経済産業省(資源エネルギー庁)の圧力からか、欧米に見られる根本転換
 ・石油多消費産業に対する環境税の実施(財源確保)
 ・公共交通利用への優遇
 ・農林業重視(バイオマス利用も含めて)への政策転換
などが盛り込まれておらず、従来のばら撒きを、太陽光発電や電気自動車など環境関連分野で行おうとしているだけにとどまっています。

※電気自動車や太陽光発電の普及が「グリーン・ニューディール」と言えるのか?
電気自動車や太陽光発電は、エネルギー効率(燃費)が改善すると言われていますが、仮に効率が2倍になったとしても、電気の消費量、自動車台数が10倍になればどうなるでしょう?
先進国は、貧しい国の100倍の豊かさを享受しています。
その先進国の消費量を下げずに、その生活レベルが発展途上国の目標になれば大変なことになります。
全世界、地球全体を考えた方向転換が必要です。


かつての「ニューディール政策」が、現状の経済への転換(自由経済から保護経済)であったように、今回の「グリーン・ニューディール」が新たなグリーン経済への大きな転換であってもらいたいものです。
残念ながら日本の「グリーン・ニューディール」は、従来通りの経済優先、ばら撒き公共事業、赤字国債の発行など負の遺産を大きくしてしまいます。
グリーンコンシューマが増え、「世直し」の機運を盛り上げていきましょう。

●先進国(特に日本)に必要な方向転換
・ GNP(国民総生産) ⇒ GNH(国民総幸福)
・ 環境調和  =  低炭素、低消費、自然エネルギー
・ 安心社会  =  食糧自給、森林保全、水資源保全、核兵器の廃絶
・ 福祉社会  =  福祉、医療、教育の充実
・ 平等社会  =  格差の是正(金融、投資に制限、所得に上限)