2009年7月号 市民活動家 安部芳裕さん
『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』、『日本人が知らない恐るべき真実』の著者である安部さんは、かつて地域『地球村』の仲間でもありました。
久しぶりの再会に、お金の仕組みのおかしさとそこに縛られない生き方を伝えていく同志として、がっちり握手が交わされました。
■ 社会の仕組みがおかしい
高木:こんにちは。はじめまして…ではなかったのですね。
安部:15年くらい前、『地球村宣言』を読ませていただいて、講演を聴きました。お話が大変面白くて、横浜の地域ミーティングにも参加させていただいて、講演会のお手伝いもしておりました。
高木:そうでしたか。それはお世話になりました。当時、お仕事は何を ?
安部:普通の会社員です。私、子どもの頃からちょっと変わっていて「人間って何で生きているんだろう」ということにすごく興味があったんです。子どもながらに哲学の本を読んだり、心理学や宗教、精神世界などを勉強したりしました。
高木:そうでしたか ! 私もそうでしたから、親近感がわきます。
安部:そういうことを話せる友だちもなく、本が友だちで、カウンセリングやヒーリング、セラピーも勉強するようになりました。そのうち、いろんな方の相談に乗るようになっていきました。相談者は増えていったんですが、カウンセリングは対処療法だから、きりがないなと思うようになり、追い詰められている人間はどんどん増えているという実感がありました。人間を追い詰めているのは何だろうと考えるようになったことで、社会の仕組みを勉強しようと思うようになりました。
高木:同感です。環境問題、貧困問題、人口問題、紛争・戦争、事件・犯罪など、すべての問題の根本原因はすべて社会の仕組なのです。社会の仕組みを変えない限り、問題は解決しません。アインシュタインの言葉「問題を引き起こしたマインドセットを改めない限り、問題は解決しない」のとおりです。改めなければならないマインドセットは、「経済拡大」「便利快適」ということです。
■ 地域通貨から出版へ
安部:環境問題を勉強するうちに、高木さんや田中優さんを知り、結局、めざすは地域循環型社会だとわかりました。NHKで「エンデの遺言」という番組を見まして、お金の仕組みのおかしさ、それを変えるための「地域通貨」の試みが世界各地で行われていることを知り、日本でもやってみるべきだと思って、すぐに始めてみたんです。
高木:どんなふうに始めたのですか。
安部:レインボーパレードというNPOのメンバーたちでレインボーリングという地域通貨を始めました。実際には、モノとしてのお金ではなく、交換リングという方法で、各自通帳を持ってプラスとマイナスを記録するというやり方です。地域通貨を広めるという目的で、日本中どこでもネットで決算できるようにして、一時期は700人くらいのメンバーがいました。
高木:それはユニークな方法ですね。ただ、全国区では難しいと思うのですが、それは続いているのですか ?
安部:あるにはあるんですが、ピークは過ぎています。というのも、空き店舗を生かした地域活性化のお話が来て、オーガニックカフェを始めることになって、地域通貨に手がまわらなくなったんです。
高木:そうでしたか。ではその後、阿部さんはどうされたのですか。
安部:日本の財政状況や世界経済の状態を調べて、アメリカは破綻するとか、日本の年金は既に破綻しているとか、そういうことを話していたのですが、誰もわかってくれない。そこで本にして出版しようと思ったのですが、無名ですから取り合ってもらえない。ならばブログに載せる方が早い、とブログで発表するようにしました。1年くらいで、1日のアクセス数が5千人くらいになって、当時のブログとしてはトップレベルになりました。2年くらい続けた後、「反ロスチャイルド同盟」のホームページを作りました。「反ロスチャイルド同盟」のサイトは公開1日目で3万人の閲覧がありました。
高木:それはすごい数ですね。今もそのくらい ?
安部:今も、1日1万は超えています。その後、講演会をやって、講演録を作ったんです。出版社から声がかかって、その講演録を出版することができました。売行きがよかったので、他の出版社さんからも声がかかって2冊目、「日本人が知らない恐るべき真実」を出すことができました。
■ お金のない社会をめざそう
高木:この本の内容は、私が、「環境と経済」というテーマで長年話している内容が、実にわかりやすく書かれています。私自身、ショックを受けたくらいです。多くの人に読んでもらいたいので、紹介や宣伝をしています。私も、「経済はゼロサム」、つまり現在の貨幣経済はプラスマイナスゼロで、経済成長ではなく、格差が広がり、いつかは必ず破綻すると言ってきました。安部さんの本は、このことがわかりやすく書かれています。
安部:ありがとうございます。
高木:一番大きな問題は、私たちの預貯金、保険金や年金(総額1400兆円)は、現実には、国の赤字、無駄遣いで、どんどん消えていること。現在すでに1000兆円が赤字になっていること。近い将来、国が破産すること。個人としては、預貯金の解約、保険の解約をした方がいいことになりますが、安部さんはどうお考えですか。
安部:難しいところです。経済が停滞すると、真っ先に困るのは生活弱者なのですから、景気対策もやらないと、失業者が増えますしね。
高木:政府は、所得税を10%上げることで、財源確保を考えていますが、垂れ流しやばらまきをやめる方が先決ですね。
安部:財源があるうちに、日本を循環型社会に変える公共事業をすることです。自然エネルギーや食糧の自給自足とか。あとはベーシックインカム(基礎所得)を取り入れるべきだと思います。国民全員、一律に生活に困らないだけのお金を配るんです。たとえば、毎月1人5万円配ったとして、年間予算は72兆円。実は福祉予算は80兆円以上あるんです。このベーシックインカムを取り入れると、生活保護も失業手当も育児手当も年金も、全部を一本化できるんです。手間がかからない、行政コストも削減できる。みんなが平等になれる。昔、高木さんの講演を聴いて、お金のない社会の方がいいじゃないかと思うようになって、そこへ向かうにはどうしたらいいかとずっと考えてきたんです。このテーマをこれからも提案していきます。
高木:よくわかります。ぜひ協力していきましょう。
■『日本人が知らない恐るべき真実』
安部 芳裕 著 (晋遊舎) 945円
http://www.nihonjin-ga-shiranai.com
■反ロスチャイルド同盟
http://www.anti-rothschild.net