地球は今

【地球は今...】日本の農業政策の勘違い

先月号で取り上げた「日本の温暖化政策の勘違い」と同じように、日本の農業政策は他の先進国と正反対の政策を実行してきたため、多くの制度疲労が生じ、崩壊寸前の状況になっています。
欧州との農業政策の違いを見ていきましょう。 


●主要国の自給率の推移

戦後、戦場となった欧州(イギリス、ドイツなど)や日本は農地も荒れ、自給できない状況が続いていました。戦後の復興と共に欧州は食料自給率100%を目指したのに対し、日本はどんどん自給率を下げる方向へ政策を進めていきました。
日本の自給率が先進国の中で最も低いのは、農家への過保護施策などによる歪な農業政策の結果なのです。


●日本とEUの戦後の農業政策

[ 日本の戦後の農政 ]
・アメリカの政策によって日本人の食事は、米食からパンなど小麦食へと変わっていきました。当時、アメリカは小麦の生産量が増え、日本を余剰在庫の販路としたのです。

・政府は、米の消費量が減少しているにもかかわらず、農家を保護するために米価を維持する政策として、「作らせず(減反)+農家へ補助金」を打ち出したため、米価は高く維持されましたが、米価が高いため消費はいっそう減少しました。これを40年近くも実施しています。

・米や麦など以外の農産物の関税率は、アメリカの圧力により他の国に比べて低いため、輸入が増え、ますます自給率が下がっています。

[ EUの戦後の農政 ]
・高い農産物価格で農家を保護しています。農家は作りたいだけ作ることができるため過剰生産になりますが、過剰生産物は補助金で価格調整をし、国際市場に輸出しています。食料の自給率が高くなるのは当然のことなのです。

【PSE(生産者支持相当量)の総額 2003年】
 日本    447億ドル
 アメリカ  389億ドル
 EU    1214億ドル

・EUの保護政策の負担額は、日本よりも大きい(PSEの表)のですが、日本とは税金を使っている方向が全く違っているため、制度疲労を起こさないシステムになっています。

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日本の農業 : 生産調整(減反、価格維持) ⇒  自給率低下、輸入依存
EUの農業  : 生産性アップ(コストダウン) ⇒  自給自足、輸出増加
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 ●日本の農業政策の問題点

[ 日本の農業政策は過保護 ]
各国政府が農業に対する保護をどの程度しているか、農家の総収入に対する保護の割合というOECD(経済協力開発機構)の指標%PSE(農業保護率)を比較すると、日本はダントツの率になっています。
保護の仕方に問題があることがよくわかります。


【%PSE(農業生産額当たりの保護率)】
  日本     58%
  アメリカ   18%
  EU      37%
  OECD平均 32%

[ 農産物の関税率と生産 ]
日本の農産物は、平均関税率が低いため自給率は下がります。ほとんどの品目の関税率は低い(裾野は広い)一方、米など特定の品目には関税による保護が偏在(米490%、バター330%、砂糖270%など、一部品目が突出)するという富士山型の関税構造をしています。これを示すOECDの指数(品目間の助成格差)は、アメリカ29、EU59に比べ、日本は118と際立っています。保護されている品目については、国際的な競争がほとんどない状況です。


「食糧自給は国家安全保障の問題。食糧自給をできない国は国際的圧力と危険にさらされている国だ」
(ブッシュ前アメリカ大統領)


【 私たちにできること 】

政府方針に係わらず、私たち自身が農業を支えていくことが大切です。

・農家から宅配などで、無農薬などの農産物を購入しよう
・農家のお手伝い(援農)に参加しよう
・家庭菜園などで自分の手で農作物を作ってみよう
・政府に対して意思表示(パブリックコメント)をしよう



※参考図書
『図表で見る OECD諸国の農業政策 2004年版』  明石書店
『農協の大罪』  山下一仁 著  宝島社