地球は今

【地球は今...】海洋酸性化

「海洋酸性化」は、まだまだ聞きなれない言葉ですが、私たちの身近な問題として注目されています。これは地球温暖化と同じ、人間の活動によって実際に起きている現象です。その実態はどうなっているのか。これからどんなことが起こるのでしょうか?  


●海のpHの濃度は?

地球上にある天然水のpHは、酸性からアルカリ性まで非常に多様です。
例えば、日本にある温泉一つとって見ても、酸性の温泉(草津温泉はpH1.6)からアルカリ性の温泉(長野県白馬八方温泉はpH11.28)など様々です。
ところが海水は、わずかにアルカリ性を示す狭い範囲でしか存在していません。


▲自然界の水と海水のpHの幅
(独立行政法人海洋研究開発機構講演資料より)


●徐々に酸性化している海水

しかし今、大気中のCO2の濃度上昇に伴って、海水に溶け込むCO2が徐々に増加しています。CO2が水に溶けると弱酸性の炭酸水になります。つまり、大気中のCO2濃度が徐々に増加することで、非常に少しずつですが、海水の酸性化が進行し始めています。安定しているはずの海水が酸性化すると、様々な現象が海の中で起きはじめるのです。


▲徐々に酸性化する海水のpH
(IOC,UNESCOのWEB上のグラフに加筆)

 


 ●過去に起きた大規模な酸性化

今から5500万年前の地球は、非常に暖かい時代(暁新世始新世温暖極大期)で、地球の平均気温は、現在よりも7~8℃(高緯度域では9℃)高くなっていました。そのため、南極などの氷床も現在よりも少なく、海面も高くなっており、右図から、内陸部まで海進があった様子がわかります。
この時代、大気中のCO2濃度は1200ppm(現在、約380ppm)あり、そのため海洋酸性化により、炭酸カルシウムの殻を持つ有孔虫を始めとして、海洋生物の5割が絶滅。この時代のCO2の増加の速度は、今の半分以下の0.8ppm/年(最近10年間は1.9ppm/年で増加)でしたが、それでも海洋生物に大きなダメージを与えました。
この異常気象は、メタンハイドレート(海底にあるメタンガスを含んでいる地層)の崩壊などによるといわれており、海洋酸性化が回復するまでに10万年かかっています。

※参考
5500万年前の地球上の大陸分布
(Physical Oceanography & ClimateDynamics Winguth's Webpage)
 http://www.uta.edu/faculty/awinguth/PETM-Home.html


●酸性化すると何が起きるのか?

・海は人間の活動によって放出されたCO2の約3分の1を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度を抑える重要な役割を果たしています。現在の地球温暖化の進行速度は、海洋のCO2吸収分を考慮して算出されています。海洋酸性化によって、CO2が吸収されにくくなる可能性があり、CO2の濃度予測を根本から見直さなければならなくなります。
・海洋中の炭酸カルシウムを持った生物(サンゴ、ホタテなど二枚貝類、ウニなど)が絶滅する可能性があります。また、炭酸カルシウムの殻を持つプランクトン(有孔虫など)が絶滅すると、海洋の生態系が維持できなくなり、魚類など多くの生物が絶滅する可能性もあります。

海洋酸性化については、2004年頃から研究論文が増え始めたばかりで、よくわかっていないことも多く残されています。しかし、地球温暖化をさらに加速したり、海の生態系が大きく変化していくことが考えられます。



【 私たちにできること 】

海洋酸性化の原因は地球温暖化と同じ、私たちの生活に伴う二酸化炭素の排出です。まず、私たちの生活を見直すことが大切です。

・これから少しずつ報道が増えてくると思います。関心を持つようにしましょう。

・二酸化炭素の排出を減らすために、マイカー利用を減らし、節電、節ガス、省エネを日常生活の中で心がけましょう。


 

※ 引用文献:
・独立行政法人海洋研究開発機構 「海洋酸性化~生態系への影響」講演会要旨集

・Intergovernmental Oceanographic Commission(UNESCO)
Ocean Acidification Summaries for Policymakers
http://ioc-unesco.org/index.php?option=com_content&task=view&id=148&Itemid=76

・Physical Oceanography & Climate Dynamics Winguth's WebpageのPETMホームページ
http://www.uta.edu/faculty/awinguth/PETM-Home.html


※ 参考図書
 温暖化危機―地球大異変part2 (別冊日経サイエンス 158)