地球は今

【地球は今...】日本の温暖化対策は進むのか?

選挙の結果、政権交代が実現しました。
民主党は選挙前のマニフェストで、地球温暖化対策として温暖化ガスの25%削減を提示し、新政権はそれを目標とすると発表しました。
今月は、地球温暖化について見ていきましょう。


●中期目標 8% ⇒ 25%削減

麻生政権の中期目標はマイナス8%でしたが、これは京都議定書の削減目標6%に2%上乗せしただけで、国際的には意味のない数値でした。
新政権は削減目標をマイナス25%と発表(9月12日現在)し、国内外から注目されています。

※京都議定書は、「1990年基準で2012年までに何%削減するか」を決めたもの。
※中期目標とは、「1990年基準で2020年までに何%削減するか」ということ。

<温暖化ガス削減中期目標 (1990年基準)>
     06年実績  12年目標 20年目標
ドイツ   -19%   -25%   -40%
イギリス  -16%   -23%   -30%
アメリカ   +14%   - 7%   ± 0%
日 本    + 9%   - 6%   - 8%
      ⇒日本の新目標     -25%


●「乾いた雑巾は絞れない」のか

新政権の新目標に対して、国連や環境先進国が歓迎のメッセージを発表する一方、国内の産業界からは「日本の省エネ技術は世界的にも優秀で、乾いた雑巾はこれ以上絞れない」と反発しています。
この点について、事実関係を検証してみます。

1.欧州諸国は1980年代から地球温暖化対策に取り組み、CO2排出を削減しているのに対して、日本とアメリカは、増加させてきました。

 
       <アメリカ国立オークリッジ研究所>

2.GDPあたりのCO2排出の効率改善を比較した場合、70~90年にかけてのオイルショック期の効率改善も欧州のほうが良く、日本はそれ以降ほとんど改善されていません。

<GDPあたりのCO2排出効率の改善率(IEA)>
     1971~1990年   1990~2006年
日本        -35%       -8%
ドイツ       -40%       -33%
イギリス      -42%       -34%
アメリカ      -38%       -26%


 ●日本に求められる政策

ドイツ、イギリスは政府が強い方針を出して産業界を動かしていますが、日本は、政府が産業界にノルマをかけず、産業界が申告した目標数値を積み上げるというやり方です。
このため、産業界は、従来の利益優先の考え方で「削減は困難」 乾いた雑巾は絞れない」という甘い認識、甘い取り組みで推移してきました。
今後、日本も政府が大きな目標を立て、必要な法整備をし、その目標が実現するよう強い指導力を持たなければなりません。重要な柱は次の4つです。

【1】 環境税
右の表のように多くの国が実施しています。日本はガソリン税(暫定税率)などの
エネルギー税はありますが、利権と結びついているため使途が限られています。
環境税としての新たな取り組みが必要です。

<各国で導入されている環境税>
フィンランド  1990  炭素税
スウェーデン 1991  炭素税
ノルウェー   1991  炭素税
デンマーク  1992  炭素税
オランダ    1992  炭素税
ドイツ     1999  電子税、鉱油税
イタリア    1999  鉱油税
イギリス    2001  気候変動税
フランス    2007  石炭税
スイス     2008 炭素税


【2】 再生可能エネルギーの固定買取制度
ドイツでは、産業界に市民発電(自然エネルギー)の買取を義務化したところ、
爆発的に風力発電、太陽光発電が増えました。デンマークやスペインなども、
この成功に習い、導入が広がっています。日本でも買い取り制度が実施されましたが、
買い取り枠の上限などの条件があり、効果を挙げていません。

【3】 排出権取引制度
「削減できなかった企業や国が、削減目標以上に削減した企業や国から余剰分を
買い取ることで自分が削減したこととする」というおかしな制度です。
「削減するより、買った方が安い」というように、削減の逃げ道になるなど
多くの問題があります。

【4】 気候変動法
「気候変動法」は、昨年イギリスが世界で始めて制定した法律です。長中期削減目標を
法律で設定したり、気候変動の専門化委員会を制定したり、国内排出権取引を強化する
など総合的な法律になっています。日本も早急に制定に向けて動くことが必要です。



【 私たちの意識が大切 】

こうした政策が日本に導入されるためには、新政権の動きを注視し、意思表示をしていくことが大切です。
今年は2012年以降の削減計画が決まる「地球温暖化防止会議」が開催される年です。
日本が試されるということは、私たち自身が試されているのと同じなのです。



※参考・引用文献 :「世界の地球温暖化対策」  浅岡美恵 ほか (著) 学芸出版社