スペシャル対談

2010年4月号 株式会社アメニティグループ 伊志嶺勲さん・伊志嶺智子さ

 沖縄で、「健康食彩レストラン だいこんの花」や居酒屋「赤とんぼ」「海のちんぼらぁ」「あうん」などをチェーン展開している(株)アメニティの伊志嶺(いしみね)ご夫妻は、1年半前に徳島県で高木代表と出会い、経営方針と生き方を大きく変えました。現在は4200坪の畑を社員と共に耕し、安心安全な食材を作ることにも挑戦中です。


■ 運命を変えた食事会

高木:こんにちは。今日は沖縄にお招きいただき、ありがとうございます。出会いは徳島でしたね。

勲:一昨年の08年8月、ご紹介してくださる方がいて、お昼をご一緒しました。その1時間が私たちにとっては運命の出会いです。人生観が一変しました。

高木:えっ、そうでしたか。うれしいです。

智子:そうなんです。一言でいえば「ショック」でした。お話を伺ってすぐ、大阪の経営塾に4人で参加しました。たった1時間のお話でしたが、「自分たちがまず試しに参加してみよう」じゃなくて、4人で連れ立って行ったことでも、そのときの1時間がどんなに大きなインパクトだったか、おわかりいただけますでしょう。

高木:そうでしたか。で、経営塾はいかがでしたか。

智子:世の中を見ている自分の視点が違っていることに気付けたことが大きかったです。意識や価値観が変わり、生きることがとてもラクになりました。

勲:私は、現状認識や根本的な問題を勉強させていただいたので、その後の世の中の動きに右往左往しなくなりました。ちょうど、リーマン・ショックなどで経済が悪化している時期でした。先生のセミナーを受ける前の自分だったら、「どうしよう。売り上げが下がっている」と、オロオロしたと思うんですよ。それが、自分でも不思議なくらい平静で「なるほどな。じゃあ、どんなふうに対処したらいいかな」と、気持ちがすぐに切り替わるようになりました。「経済は永遠の右肩上がりではなく、縮小していくもの」と理解できたので、縮小していくときの対応を考えられるようになったんですね。予算もだいぶ下方修正しました。前年を下回った予算を組んで、それで会社が成り立つ仕組みを考えています。


■ 願いは「みんなの幸せ」

高木:経営方針がかなり変わったのですね。

勲:はい。それまでも、建前としては「社員の幸せ」と言ってきたわけですが、本音は、「もっと会社を大きくしたい」、「もっと儲けたい」という欲望がありました。先生と出会ってそれがなくなりました。いまは本当に、心から社員やスタッフたちみんなに幸せになってもらいたいと思います。いえ、なってもらいたいというより、できれば私が幸せにしたいという思いが出てきました。いいことも悪いことも、喜びも苦しみも、みんなで一緒に分かち合っていきたいと思っています。私も以前は本当にワンマンでしたが、この頃は、スタッフに任せることができるようになりました。

高木:智子さん、少し涙ぐんでいらっしゃいますが、どうされました。

智子:ああ、すみません。経営者はある程度はワンマンであるのは当然だと思うのですが、以前の主人は「自分についてこられない者は、辞めてもらって構わない」というスタンスで、スタッフを切り捨ててきました。私もそういう社長を止められない歯がゆさを感じてきました。それが先生との出会いで、ここまで意識が変わってくれて、「みんなを幸せにしたい」と言ってくれるようになって、それがすごくうれしくて・・・。

高木:そうでしたか。それはよかったですね。私も、とても嬉しいです。


■ 食と農、楽しみながら広げます

高木:では、現在チャレンジしていることについて、聞かせてください。

勲:以前も少しですが、畑をやったことがありました。ラッキョウとゴーヤを作っていました。

高木:それは店で使う食材ということで ?

智子:その予定だったんですが、収穫する頃には、町にすごく安く出回っていますし、手入れが行き届かなくて不揃いですし、店に納品するとかえって迷惑になるような始末で、数年でやめてしまいました。

勲:でも、無農薬野菜を自社農場で作って納品したいということは、何となくぼんやりと考えていました。はっきりと「農業をやろう ! 」 と踏ん切りがついたのは、やはり先生との出会いです。日本の食糧自給率のひどさを知ってしまった以上、うかうかしてはいられないと思いました。人間の体は食べ物でできています。いいものを食べれば健康になるし、悪いものを食べれば病気になる。だったら、お客様には安全な食材の提供をしたいし、うちのスタッフとその家族にも届けたい。お客様には、会員制で無農薬野菜をお届けするようなシステムも作りたい。そうするうちに耕地面積も増えていき、ブランド化するかもしれない。農業の活性化にもつながっていくかもしれない。そんな夢を描くようになって、この頃はワクワク感でいっぱいです。

高木:どのくらいの面積を耕しているんですか。

勲:まずは去年から今帰仁(なきじん)に460坪のビニールハウスを借りて、葉野菜を中心にいろいろ植えました。現在は、近くで4200坪の土地を貸してくださる方がいて、さらに耕地を広げています。

高木:4200坪というと14反。かなり大変ですね。社長さんも実際に畑仕事を ?

勲:毎週水曜と木曜はスタッフと一緒に農作業をしています。これがすこぶる楽しいです。みんなで行う農作業が単純に楽しいということもありますし、汗を流したあとで、みんなで食事をしてビールを飲んで一晩泊まって、それが学生時代の合宿みたいなんです。楽しい時間を共有できることで、コミュニケーションも深まりました。

高木:私も20年ほど前、農業を数年間かなり本気でやりましたから、その喜びよくわかります。農作業は、みんなでやると楽しいですね。

智子:本当にそうなんです。農作業で歌がたくさん生まれるのもわかる気がします。

高木:では、今後の方向性を教えてください。

勲:早ければ今年の6月ごろには、数万坪の土地を借りることになります。そこで農業をやりながら、将来的には、体験農業、食育学習、宿泊体験ができたり、セミナーハウスがあったり、自然食レストランがあったりと、そういうことをしようと考えています。

智子:私たちだけじゃなくて、いろいろな方を巻き込んで夢を実現したいです。農場が、若い方たちや施設の方たちの就労の場にもなればと思います。

高木:ぜひ、講演会やワークショップなど、学習の場も設けてくださいね。ではこれからもご活躍を。


■(株)アメニティグループ
http://www.amenity-gr.co.jp


■第15回 地球村 『経営塾』 in 東京
『時代の流れを読む経営』~本質を見抜く~
開催日: 2010年 5月29日(土)~30日(日)
開催場所: 東京都新宿区