【巻頭言】フィリピン環境視察
4月中旬に3泊4日でフィリピンに行きました。
フィリピンで、ある企業が行っている植林事業を視察するためです。
通常の植林は、伐採などで破壊された森林を元通りにしようというもので、その土地に自生していた木を植林するのですが、その企業が植林しているのはジャトロファという南米原産の木で、種子から植物油がとれますが、食用には適さないためBDF(ガソリンの代替品)にします。
ジャトロファは世界各地で取り組みがされているので、『地球村』として森林保護活動の支援候補として、実態を知るために今回視察を行いました。
★植林事業 (現地グループ企業のトップ談)
1.火山灰による荒れ地にジャトロファを植林
2.種子から油をしぼりBDF(ガソリンの代替品)として販売
3.しぼりかすから良質の肥料を作ることに成功したので販売を検討している
4.肥料を作る過程で出るメタンガスを回収して販売を検討している
5.CDM (クリーン開発メカニズム) の可能性があり、事業として検討している
6.植林に協力する地元の人に日当を支払うことで地元の人の現金収入になる
7.ジャトロファによって土が改質され、農地にできる可能性がある
8.大企業も関心を寄せている (BDF、CDM)
9.政府、自治体も荒れ地へのジャトロファの植林を希望している
10.近隣の住民の生活を豊かにできる可能性がある
※CDM=クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism)
先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援元の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度。
以上、企業の事業(ビジネス)としてはメリットが多いのですが、通常の植林事業と違って、植林を起点とする大規模な複合事業なので多方面への影響も大きく、『地球村』が参画できるかどうか、問題点や課題があります。
★課題
1.BDFは自動車利用が前提
2.CDMには、二酸化炭素が減らない(先進国のエゴ) など様々な問題がある
3.地域の伝統的な生活を大きく変えてしまう可能性がある (近代化、貨幣社会)
4.BDF、CDMの国際価格の変動で大きな影響を受ける可能性がある
★スモーキーマウンテン
マニラ市内のゴミを海岸線の一角に投棄、そこにゴミ拾い(スカベンジャー)が集まり、住み着いたことから貧困の象徴になりました。フィリピン政府は国のイメージが傷つくことから閉鎖を決断。1995年公共住居を作って強制退去させました。当時はたくさんのゴミ拾い(スカベンジャー)のいた巨大なゴミ山は、巨大な土山に変わっていました。高さは20メートル。ゴミは土になることを実感しました。
周りには公共アパートが立ち並び、貧しい人を収容しています。アパートの中は、各階は上下に二層に分割され2軒分になっています。付近一帯、バラックが無数にあり貧しい人が住んでいます。現在は、数キロ離れた海岸に新たなスモーキーが作られ、同じことが起こっています。以前と違うのは、めぼしいものが回収されたあとのゴミは、船で積み出され海洋埋め立てされているので、将来大きな問題になる可能性があります。
★NGO
スモーキーの近隣には、貧しい人々の救済活動をしているNGOがたくさんあり、その一つを訪問しました。数名のスタッフと数名の教師で、数百人の子どもたちの教育や食事をサポートしています。今回、そのNGO施設の空き地に小さな菜園を作りました。そこはスモーキーの近くなので、掘ると次々とゴミが出てきました。集まってきた数名の子どもたちと共に、数坪の畑を作り、きゅうり、だいこん、スイカ、メロンの種をまくことができました。
あとは、そこのスタッフたちにお願いしましたが、うまくいくと嬉しいです。
★イムス市のごみ処理場 (スモーキー)
私たちのホテルの近隣のごみ処理場を見に行きました。規模はマニラのスモーキーマウンテンとは比較になりませんが、広大な土地にゴミを投棄していました。
1.ダンプカーが次々とゴミを捨てに来ます。
2.スカベンジャーが群がり、めぼしいものを拾います。
3.ブルドーザーがゴミを平らにしたり、巨大な穴に投棄していきます。
マニラのスモーキーは政府の監視が厳しく写真は禁止、また数千人のスカベンジャーが群がり、競争が激しく、争いやトラブルが絶えませんが、ここのスモーキーは小規模で人数も少なく、殺気や危険は感じませんでした。
人々は比較的のんびりしていて、笑顔であったり、私たちに手を振ったりする人もいました。若い人も多く、子どもが少なかったことが救いでした。
しかし、猛暑(35℃以上)の中、臭い、不衛生、ケガの危険など、こんな中でまる一日働いて一日の生活(100ペソ=200円)がやっと・・・。
ここでも貧困問題を痛感しました。先進国の責任は大きい。やるべきことも多いです。
『地球村』として貧困問題、人道問題への支援を強化していきたいです。
しかし根本解決は、先進国が自立することだから、日本の場合、農業の復興、食糧、資源、エネルギーの自給率の向上が不可欠。コミュニティ(自給自足社会)作りも重要です。