【地球は今...】太陽光発電とバーチャルエネルギー
エネルギーの枯渇問題は深刻です。昨年の原油高もその表れの一つです。
再生可能エネルギーと言われている太陽光発電とバーチャルエネルギーという観点から、エネルギー問題について考えてみましょう。
●化石燃料はもう限界
この10年間で日本の化石燃料の消費量はほとんど変わっていません。
しかし日本が海外に支払っている化石燃料の総額は、年額5兆→ 23兆円と急増しています。
日本の輸入総額に占める割合も15%→30%に増加、外国へ支払うお金の約3分に1が化石燃料になっています。
これは、中国などの中進国の石油消費の拡大や産油国の産出能力の衰退などに伴う原油価格の高騰が原因です。
化石燃料の消費は限界が近づいているのではないでしょうか。
日本でも国産エネルギーとして太陽光発電を推進しようとする動きがあります。
しかし、現状でも次のような問題点が指摘されています。
◇原料のシリコンは輸入品
今後中国の太陽電池増産に伴い、輸入ができなくなる可能性もあります。
次の候補地エジプトからの輸入には、さらに大きな輸送エネルギーが必要です。
◇大量生産は困難
〔銀〕太陽光発電の電極に使用している銀は、全量を輸入しています。
銀の可採寿命はあと19年(mineral commodity summaries 2010)です。
主原料のシリコンや銀、アルミニウムだけではなく、銅鉱、鉄鉱、石炭(製鉄原料)、石油(プラスチック)もほぼ全量輸入。
唯一、国産原料のガラスも生産エネルギーは輸入しています。
◇バーチャルエネルギー
輸入シリコンの生産エネルギーは、日本の製造エネルギーに含まれていません。
バーチャルウォーター同様、バーチャルなエネルギーを考える必要があります。
◇太陽電池の原料自給率は、ほぼゼロ
精製に大量のエネルギーが必要なアルミニウムはほぼ全量海外で精錬しています。
そのために必要な電力は日本の消費電力の2%です。輸送なども含めたバーチャルエネルギーは日本のエネルギー消費の3%になります。
◇原材料管理、廃棄処理のルールづくりが不可欠
薄膜太陽電池に使われるインジウム、セレン、カドミウム、テルルなどには発がん性などの毒性があります。
中国ではインジウムを取り出す処理を適切に行わずにカドミウムや鉛によって水が汚染され、日本のイタイイタイ病などと同様の健康被害がおきています。
日本は、エネルギー自給率4%、いろいろな資源の7割近くを海外輸入に依存しています。
その結果、バーチャルエネルギーという見えないエネルギーを海外で使い、バーチャルCO2を海外で排出しています。
バーチャルウォーター同様、海外のエネルギーに依存し、海外でCO2を排出しながら、私たちが生活しているという認識を持つことが必要です。
太陽熱を温水器やソーラークッカーなどで利用した場合40%以上のエネルギーを利用できます。
コスト面で見ると1キロワットの太陽光発電システムは約100万円。1キロワットの太陽熱調理器(ソーラークッカー)は数千円~数万円。
『地球村』がアフリカに支援しているソーラークッカーは1台数千円です。100世帯に支給しても100万円以内です。
私たちは、大量の電化製品に囲まれて「電気依存症」の生活をしています。
今の生活を見直しましょう。
・電気などのエネルギー消費を減らすように心がけましょう
・できるだけ国産品を使用しましょう
・修理するなど、できるだけ長く大切にしましょう
・目先の宣伝に惑わされないようにしましょう
※参考資料
・日経サイエンス2010年1月号
・ソーラー・システム産業戦略研究会議事録・報告書
http://www.meti.go.jp/report/data/g90318aj.html
・太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究(みずほ情報総研株式会社)
http://www.nedo.go.jp/database/index.html
・仮想エネルギーの概念を用いた物質フロー分析(エネルギー資源学会)
http://www.jser.gr.jp/journal/journal_pdf/2010/journal201001_1.pdf
・鉱物資源マテリアルフロー(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material_flow_frame.html