巻頭言

【巻頭言】オピニオン「新政権について」

発足時、支持率72%の鳩山政権は、わずか8カ月で支持率20%を切る事態に至りトップの2人が辞任、菅政権に交代して急速に支持率を回復(60%)しました。
今月11日の参議院選挙では安定多数を獲得して、改革を続行してもらいたいです。
何党を支持するにしても、棄権せずに投票しましょう。当日、都合が悪い人は、事前に、期日前投票をしましょう。

なぜ総理辞任という事態に至ったのか、整理しておく必要があります。
辞任のきっかけは、鳩山前首相の「普天間基地」についての発言と考え方です。自民党が長年かけてこぎつけた日米合意の内容を大きく変えるには、かなりの覚悟と戦略が必要なのは言うまでもありません。まずは、政権交代直後に、「困難な問題だから時間が必要。ご理解いただきたい」の所信表明が必要でした。

それを、鳩山さんは、一貫して「国外、県外」「5月末決着」「腹案あり」と発言しました。ところが、途中途中で候補地がリークし、マスコミに報道され、候補地の知事や町長は「寝耳に水」という状態。官房長官や補佐官が現地と打診を開始した時は「時すでに遅し」。すでに住民の反対運動が盛り上がってしまっていました。

打診が失敗してから、鳩山さんは記者会見で「打診について私は知らない」「真意がわからない」などと発言。現地にも、総理周辺にも不信感が広がりました。5月末になって「ほぼ原案通り」では地元民は承服しがたいのは当然です。

この問題は、次のことを知っておく必要があります。

1991年に東西の冷戦体制が終わり、あれから20年もたった今、「アメリカだけが全世界に軍事基地を置いている現状はおかしい」という世界的な意見が強まっています。米国政府としても、軍事的な見直し、財政面でも見直しが始まっていて、現実に沖縄の海兵隊1万8千人の大半をグアムに移転する計画が進んでいます。

日本政府としても、長期的な日米軍事同盟の見直し、グアム移転計画との整合性などを含めた総合的な検討が必要でしたが、マニフェスト通り「国外、県外」に固執したのが間違いのもとでした。
しかし、この問題のそもそもの責任は自民党にあるのに、野党はこぞって新政権を攻撃、批判を繰り返すだけで、日本の将来について建設的な意見は出ませんでした。

社民党も自らのマニフェストの主張ばかりで、連立政権政党として役割を果たすどころか、民主党の足を引っ張り続けました。与党も野党もお粗末すぎます。今後も、この問題は、日米軍事同盟の見直し、長期的に軍事同盟の解消、米軍の撤退を視野に入れた検討が必要でしょう。

もうひとつの問題「政治と金の問題」は、自民党政権下の特捜部の国策捜査(民主党つぶし)を放置したことが敗因でした。本来、法務省も検察庁も、現政権を守る方向で「国策捜査」の方向で動きます。つまり捜査は野党に向けられます。それなのに、政権交代後も、特捜部は執拗に、前政権時代の「国策捜査」を継続して、現政権の足を引っ張りました。多くの国民には理解しがたい動きでしたが、その訳は簡単です。
法務省も検察庁も霞が関が動かしているのです。「政治と金の問題」は民主党より、長年政権の座にあった自民党の方がはるかに大きな問題があるはずなのに、新政権が特捜部を指揮できないまま崩壊したということは、他の国には理解できないドタバタ劇でした。
要は、政権交代を経験したことがない国が支払った高い授業料だったのです。

●新政権として、進むべき方向

★危機的財政状況の解決
日本は、国民の財産1400兆円(預貯金、保険金、年金など)を国債、地方債、公共事業債に運用し、1000兆円もの赤字を出し、さらに毎年40兆円以上の赤字を増やしています。このままでは10年以内に国家が破産します。日本は破産寸前で、その規模はギリシャ危機やハンガリー危機どころではありません。このままでは金融崩壊は避けられません。すぐに手を打たなければならないのです。

1.現在の予算規模(100兆円)を税収内(40兆円以内)にする
2. 巨大公共事業や「ばらまき」を中止
3. 公務員、官僚の大幅削減。 天下り禁止。 独立行政法人を廃止

★国家ビジョンを策定
「世界で起きている不幸の根本原因はGNPである。国民が真に求めているのはGNP(国民総生産)ではなくGNH(国民総幸福)である」 (ブータン国王)

以前はこの言葉は夢物語でしたが、現在はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ドイツなどの福祉国家、環境国家では、GNHが国家方針になり、国民にも浸透し始めています。日本も、いつまでも経済成長を追い求めていてはいけません。GNPからの脱却、GNHへの転換が必要です。

1. GNPからGNHへ路線転換
2.経済成長路線から福祉国家、環境立国へ
3.自給自足をめざす(食糧、資源、エネルギー)
4.核廃絶、脱原子力、平和安全国家へ

★社会転換のアプローチ
長年の価値観を変えるのは容易ではありません。明治維新、戦後維新は、教育の役割が大きかったのです。今後、社会の転換、大維新を行うには、やはり教育が重要です。デンマーク、スウェーデン、フィンランドなどは教育が大きく変わりました。日本も、教育の転換が必要です。