巻頭言

【巻頭言】 参議院選挙の結果と今後の日本

6月8日菅内閣成立、支持率急上昇。
ほとんどのメディアが「参議院選は民主党圧勝」を予想。
しかし、その後、菅総理の「消費税発言」で支持率が急落。
その結果、民主党マイナス13(自民党プラス13、みんなの党プラス10)、という予想以上の大敗。

★民主党の敗因
敗因は「菅総理が消費税を10%上げると発言したこと」とされていますが、実際には、カナダで開催されたG8サミットの記者会見で、スペイン危機に関連した菅総理の発言、「日本も大きな赤字があるが、スペインとは状況が異なる」という文脈の中で、「将来、消費税を上げることもある」「自民党の案、10%を参考にする」と言っただけなのです。
それを野党とメディアは、「菅総理が、消費税を10%上げると発言」という方向に宣伝し、一般市民は報道を信じてしまったのです。
政府や民主党は、間違った報道をきっちりと訂正すべきでしたし、それでも不十分なら特別番組を作ってでも、国民にきっちり説明すべきでした。

このことは、普天間基地問題とも共通します。
当時、鳩山総理の「ぶら下がり取材」や官僚の情報リークによって、政府の正式な発表以前に、メディアからどんどん情報が流れ、政府はその対応に振り回され、火消しに奔走。結局、辞任を余儀なくされました。
今回の選挙における「消費税問題」も、それと同じでした。
民主党は今後、情報の出し方などを学び、出直さなければなりません。

★ねじれ国会
民主党の連立政権は、衆議院では過半数ですが、参議院は過半数を割ったため、政府案は衆議院では可決しますが、参議院では否決され、成立しない可能性が大です。
昨年の自民党と公明党の政権は、衆議院で3分の2以上の議席を占めていましたので、「衆議院、3分の2で再可決」(例外規定)で法案を成立させることができましたが、現在の政権は、衆議院で3分の2を占めていないので、法案を成立させることができません。下手をすると国政がストップしてしまいます。
仮に衆議院解散、総選挙をした場合に、逆に自民党が政権をとったとしても、自民党も参議院では過半数をとっていないので、「ねじれ国会」は解決しません。

★連立
民主党は、参議院で過半数をとるために、どこかと連立を組みたいのですが、現状では難しいと思います。当面、政策ごとに考えの近い政党に協力を求めて法案を成立させる「部分連合」で、やっていくしかないでしょう。

★最大の問題は、ビジョンがないこと
政府にも野党にも、欠けているのは、将来のビジョンです。
どの政党も「経済成長」ばかりを言っていますが、「経済成長」はビジョンではありません。ビジョンというのは、「日本をどんな国にしたいか」「どんな未来を実現するか」ということであって、「経済成長」は手段なのです。
むしろ、これまで「ビジョンなき経済成長」を続けてきたことによって、格差が拡大し、自然が破壊され、人心が荒廃し、社会の乱れ、不幸が拡大しました。
いま、必要なのはビジョンです。

★国民の求めるビジョン
ビジョンは「これ一つ」というものではないでしょう。
たとえば、
A 老後の不安がない社会
B 自給自足ができる社会
C 自然環境の豊かな社会
以上は、それぞれ別の社会ではなく、理想の社会を違う角度から眺めた姿であり、理想の社会を実現する優先順位の違い、実現ステップの違いだと思います。

★国民にシナリオを示すこと
A すでにデンマークが実現しているように、
  ○○年までに老後を無料に、医療を無料に、教育を無料にする。
B ○○年までに食料自給率を40%から60%に上げる。
C ○○年までに二酸化炭素を半減し、自然エネルギー比率を50%に上げる。

★国民に実現ステップを示すこと
① ○○年までに○○を行う。
② そのために○○兆円の財源が必要。
③ そのために、公共事業を○○兆円削減、
  天下り法人を撤廃して○○兆円削減、
  議員数を削減して○○兆円削減、
  それでも財源が不足する分を○○兆円増税。

★議論を国民に見えるようにする
以上、国のビジョン、実現のステップを国民に示した上で、
国会の議論、党首会談、市民と有識者の参加する諮問委員会、事業仕分けなどで、
議論の進行を国民に見えるように可視化する。

★民主的な方法で民主的な政治を実現する
以上は民主政治の基本ですが、日本ではこうした道筋が無かったのです。
これからは、こうした民主的な方法、市民の参加が不可欠です。