巻頭言

【巻頭言】戦後65年

先日、倉本聰さんの作・演出、富良野GROUP公演 『歸國』 を観に行きました。
舞台は、戦後65年の終戦の日。東京駅で終電が出た後しばらくして、どこからともなく、古い軍用列車がホームに入ってくるのです。
太平洋で戦死した英霊が、当時のままの姿で「歸國」するのです。
いえ、「歸國」ではなく、明け方までのほんの数時間だけの「里帰り」です。
65年間、夢見た故国を見るために「一時帰国」したのです。
英霊たちは、許された数時間、行きたい場所に行き、会いたい人に会います。
令状一枚で招集され、命令一つで生命を差し出した故国は今・・・
物質的には100倍以上豊かになったが、人が人として生きていない・・・
人としての尊厳が忘れられ、人のつながりが忘れられ・・・
彼らは、驚くべき現状を知って、慟哭し、絶叫し、絶望し・・・
無念のまま太平洋の海底へと帰っていく。

★印象的だったセリフ
・豊かさとはなにか。便利さとはなにか。それは、さぼるということだ。
・貧困とは、貧しくて困ると書く。それは困る。
・貧幸とは、貧しくて幸せと書く。それは素晴らしいことだった。
・人は二度死ぬ。
 一度目は肉体的に死んだ時。
 二度目は、完全に忘れ去られたとき。
・我々は時折、海面に浮かびあがって、月を見ながら故国のことを想う。
 子孫たちは倖せな眠りについているだろうか。
 故国のために死んだ俺たちを思い出してくれているだろうか。
 そう願いながら、また冷たい海底へまた沈んでいく。
・そうして65年を過ごした。
 それでもなお我々は、ひたすら故国の倖せを祈り続けている。

★最後のシーン
英霊たちは、私たちに向かって敬礼をしたまま、海底に沈んでいった。
それは無言の「故国をよろしく」という強いメッセージだった。
私は、いやおそらく、そこにいた全員が涙した。

戦後65年、すでに戦後生まれの人が8割。
太平洋戦争の戦死者は軍人、民間人合わせて300万人。
その大きな戦争の犠牲者を思えば、私たちは、もっともっとこの国の未来に責任があるのではないでしょうか。
私は、決意を新たにしました。