【巻頭言】エコ製品は本当?
私はできるだけ「いい、悪い」と言わないようにしています。
なぜならば、「いい、悪い」は、立場や利害によって正反対だからです。
ですから私は、国連などの公式見解や、科学的な知見を述べるだけで結論は言わないようにしています。あえて言えば、「環境先進国では、こういう動きがある、市民はこのようにしている」ということを紹介しています。
事実を述べるだけの方が、聞き手は自分で考え、自分で判断できるからです。
★自動車
まず、基本的なことを知っておいてください。
① 走行時だけでなく、開発、製造、廃車(リサイクル)の時も大きな環境負荷
② 自動車道路の建設、維持、ガソリンスタンドなどのインフラによる環境負荷
③ 電気自動車は、発電所の二酸化炭素にも責任がある
④ 自動車は数人しか乗れない
⑤ 自動車は1000人の大名行列
以上を考慮すると、自動車は、公共交通の10倍、自転車の100倍、徒歩の1000倍の二酸化炭素を排出します。まさに1000人の大名行列です。
⑥自動車の燃費が良くなったとしても、
この①~⑤を理解すれば、決してエコとは言えないことがお分かりになるでしょう。
中国は、人口は日本の10倍、自動車保有台数は日本の半分ですが、現在、10%ずつ自動車が増加しています。
世界の人口は約70億人、自動車保有台数は約10億台ですが、途上国にも自動車が急速に広がっています。世界中の人々が先進国並みに自動車に乗るようになれば、エコカーであれ、電気自動車であれ、破局が避けられないでしょう。
大切なのは、エコカーに乗ることではなく、自動車を減らしていくこと。
公共交通、自転車、徒歩に変えていくことなのです。
★電気
どんな発電方法にも、二酸化炭素の排出、環境破壊、放射能や大事故など多くの問題や危険があり、「これがいい」と言えるものはありません。
自動車と同じことで、まず電力消費を減らすこと。
その上で、現状のやり方(人口の少ない地域で大規模発電をして都会に送電)から、地域発電、小規模発電に変えていかないといけません。
エネルギーについても自給自足、自立と自己責任が必要です。
それが環境先進国の進むべき道です。
★フェアトレード
エコカーについて説明したことと同じ意味ですので、かんたんに説明します。
途上国から輸入するコーヒーやバナナには、多くの問題があります。
その問題を改善したものをフェアトレードと呼びます。
しかし、フェアトレードだから「いい」、「たくさん買いましょう」ということではありません。
たくさん売れることで、さらに熱帯林が破壊され、さらに貧しい人の畑が奪われます。
そこには、あなたの知らない悲劇があります。
貧しい国は、常に豊かな国の犠牲になっているのです。
できるだけ、コーヒー、チョコレート、タバコ、熱帯のフルーツをやめましょう。
★伝え方は「非対立」で
ここまで書いてきたことを、グリーンコンシューマのみなさんは、よく理解してください。
日本では、ほとんどの人たちが、こういう事実を知りませんから、伝えていかないといけません。しかし、伝え方には十分注意をしてください。
「主義主張しない、抗議要求しない、相手を責めない、戦わない」「事実を伝える、提案する、実践する」が基本です。それが「非対立」なのです。
たとえ、事実であっても断定しないようにしましょう。
科学的な知見でさえ、変更されることもありますから。
私の場合、以上の問題点をはっきりと説明した上で、
「エコカーは必ずしもエコとは言えません。
むしろ、自動車の利用を減らすことの方が大切」
「フェアトレードは必ずしもエコとは限りません。
むしろ輸入製品の消費を減らすことの方が大切」
「太陽光発電は必ずしもエコとは言えません。
むしろ電力消費を減らすことの方が大切」 と話すようにしています。
★人類は以下のどの段階だと思いますか。
① 生きるための最小限のものを手に入れる段階
② 安全のために多少の備蓄をする段階
③ 必要以上の富や贅沢をする段階
④ 自然を破壊し、自然の限界を超えた段階
⑤ 環境破壊、戦争などで滅亡
多くの方が④だと認識していると思います。
このまま進めば、⑤は避けられません。
では、どうすればいいでしょう。
すでにドイツ、デンマーク、スウェーデンなどの環境先進国が向かっている方向に大きなヒントがあります。
それをリードしていくのがグリーンコンシューマなのです。