スペシャル対談

2010年12月号 鹿児島県志布志市市長 本田修一さん

本田さんは、鹿児島県の志布志(しぶし)・有明・松山の3町合併で誕生した志布志市の初代市長(前有明町長)。ゴミの削減資源化「志布志市モデル」を推し進め、地球環境を考える自治体サミットにも参加しています。現在は2期目で、「志の厚い里人が住む」という意味を持つ志布志市を、みんなが幸せなふるさとにしようと奮闘中です。


■地球の現状に受けた衝撃!

高木:ようこそ。ではまず、『地球村』との出会いからお伺いしたいと思います。よろしく願いします。

本田:『地球村』との出会いは12、3年前です。その頃、鹿児島にはいくつか『地球村』があって、その一つ、大隅『地球村』の友人に誘われて講演会に行ったのがきっかけです。

高木:講演会はいかがでしたか。

本田:衝撃的でした。中でもオゾン層と紫外線の話が非常に印象的で、鹿児島の海水浴場では日焼け大会をやっているというのに、環境先進国では長袖、帽子、サングラス。そして温暖化の影響で、氷河も溶けている・・・、大ショックでした。

高木:その頃は、たしか大隅半島では、廃棄物問題が起きていましたね。

本田:ありました。産業廃棄物が入ってくるということで阻止運動も起きていました。有明町や志布志町でも、埋め立て処分場が満杯になるということで、ゴミ削減が大きな課題になっていました。私は『地球村』の会員となって、講演を聴き、勉強を重ねていました。焼却炉を作ると200億円くらいかかり、年間10億円くらいの維持費が必要です。財政も厳しくなってきたから、ゴミを分別して処分場を延命させようということになり、平成12年から19品目の分別収集が始まりました。埋め立てゴミは1万4000トンあったのですが、分別の効果が徐々に出て8割減になりました。

■分別細分化でゴミ削減を

高木:市長に立候補する前は、仕事は何をされていたのですか。

本田:養豚業と農業です。

高木:どんなきっかけで政治の世界に。

本田:有明町の町長選に出ないかと推してくれる方がいて、平成15年7月に立候補し当選しました。既に合併が決まっていたので、任期は合併までの1年半の予定でしたが、合併が延期になり、結局2年半、町長をさせていただきました。

高木:『地球村』の会員さんが町長に!嬉しいですね!その間どのような取り込みをされたのか教えてください。

本田:やはりゴミの分別と削減です。平成16年には生ゴミの分別で「サンサンひまわりプラン」をスタートしました。町花がひまわりなので、生ゴミを堆肥化して、その土でひまわりを育て、種からひまわり油を絞ることを始めたんです。平成17年には、さらに分別を21品目に増やしました。

高木:そして合併後、初代市長に当選されたわけですね。

本田:はい、3人立候補して接戦で当選し、今年1月には再選されて、今、2期目です。

高木:地球環境を考える自治体サミットにも参加いただいていますが、本田さんが目指す市政とは、どのようなものですか。柱となる考え方を教えてください。

本田:就任直後から、職員たちには話しているのですが、志布志市は志(こころざし)が2つも入っている土地。侍の心、武士道精神で、地域のため、社会のため、弱い人のために働く、志に溢れる市にしようと思っています。また環境問題では、ゴミ削減の「志布志市モデル」を、全国に、そして全世界に発信していけたらと思っています。

高木:それは頼もしい。環境都市を目指すのであれば、ゴミの削減や資源化と共に、「食料とエネルギーの自給率100%」という目標はいかがですか。志布志市ならできるのではありませんか。

本田:農村地帯ですから、食料はすでに100%は達成し、200%近いんじゃないかな。エネルギー自給率100%は難しいかもしれませんが、できる限り目指していきたいと思います。

高木:エネルギーでは、小規模水力、風力、それに地熱が注目を集めています。地熱は、特に鹿児島では、熱利用の可能性も高いと思います。自給率アップをがんばってください。

■環境と志の志布志市を作ろう

高木:「志布志市モデル」について、お願いします。

本田:ゴミ分別による削減と資源化のことなんですが、現在28品目で、今年は29品目になる予定です。これだけ多品目を市民たちがきちんと分けて出してくれているんです。分別が難しい高齢者には、「ゴミ出しヘルパー」をつけてサポートするなど、削減努力を続けています。その「市民力」のおかげで、ゴミ処理費用を大幅に削減することができました。志布志市ではゴミ処理費用が一人当たり年間6687円と、全国平均の1万4200円の半分以下で、人口3万5000人ですから、削減額は約2億5000万円になります。分別収集で売った利益が5000万円くらいありますから、財政的には合計3億円くらい浮くんです。

高木:それはすばらしい!

本田:実は、フィジーから「志布志市モデルを学ばせてほしい」という依頼が来て、草の根技術交流ということで、職員を派遣したりしています。

高木:フィジーというと、観光と環境のイメージがありますが、ゴミ処理問題に困っているのですか。

本田:うちと同じように焼却場を作る余裕がないそうで、「市民力による志布志市モデルで処理したい」というのです。うちとしても、ありがたいなという気持ちで一緒にやらせていただいています。

高木:志布志市は文字通り、志に溢れて、お互いがお互いを思いやる町として、これから全国に向けてアピールしていってはどうでしょう。『地球村』の目的である「みんなの幸せが本当の幸せ」をキーワードにした町づくり、「環境と志の町・志布志市」を前面に打ち出して、来年6月の環境月間には、決起集会をしてはどうでしょう。

本田:いいですね。ぜひ考えたいと思います。志布志市は、健康増進にも取り組み、医療費を前年よりマイナスにできました。市民が健康で幸福な町にしたい、誇りを持てる町にしたい、GNH(国民総幸福量)の先駆けの町にしたい、と思っています。ぜひ、お力をお貸しください。『地球村』のみなさんも志布志市に来てみてください。

高木:なるほど。健康と環境を志す町づくりは、未来へのプレゼントになると思います。私も応援していきます。

■志布志市ホームページ
 http://www.city.shibushi.lg.jp