2011年1月号 かものはしプロジェクト共同代表 村田早耶香さん
大学時代にスタディツアーで児童買春の問題に出会い、20歳のときに仲間3人と共に「かものはしプロジェクト」を設立。カンボジアを活動拠点として、児童買春・人身売買問題の根源である、農村部の貧困を解決するために、職業訓練と雇用の場を提供しています。その人道支援活動に対し、『地球村』も資金援助によるサポートをしています。
■児童買春を解決したい!
高木:こんにちは。出会いは1年前でしたね。
村田:はい。映画「闇の子供たち」をご覧になって、児童買春の問題をお調べになっているということで来ていただきました。
高木:そうでしたね。昨年はカンボジアに人身売買・児童買春の視察に行き、ひどい実態を目にしてきました。そこで『地球村』として支援先を調べていく中で「かものはしプロジェクト」の名前が挙がってきて、こちらを訪問しました。
村田:それが実は、お会いする1年前にオリンピックセンターでハーフデイセミナーを拝聴しているんです。いろんな方から「ネットワーク『地球村』の高木さんのお話は、情報がちゃんと入っていて説得力がある。一度聞いてみたほうがいい」と勧められていまして、勉強のために伺いました。
高木:そうでしたか。「私たち、1年後に会うことになっているんです」と言ってくれればよかったのに(笑)。
村田:そうですね。お訪ねいただいて、児童買春をなくしたいという私の話を聞いていただきまして、とても嬉しく思いました。
高木:そもそも若いあなたが、この問題に関わることになったきっかけは何ですか?
村田:19歳のときに、スタディツアーでタイに行ったことが始まりでした。児童買春をなくそうとタイで活動している団体のツアーで、そこで児童買春の実態を初めて知りました。そ
こで出会った5歳の女の子は、お母さんが買春の被害者でHIVに感染、その子もまた母子感染していました。この子たちのために何かしなくてはという思いで日本に帰りました。その後、いろいろ調べてみると、タイよりもカンボジアの方が、被害がひどいと聞いて調査に行きました。
高木:それは団体を立ち上げた後に?
村田:そうです。かものはしを作って、支援対象国を調べにカンボジアに渡ったんです。カンボジアでは、タイよりも被害者の年齢が低くてびっくりしました。施設に行くと幼稚園児
くらいの子がたくさんいて、年齢を訊くと、7歳とか6歳とか、一番小さい子が5歳でした。そんな幼い子どもたちが売春婦として働かされていたんです。嫌がると電気ショックや食事
を与えられないといった虐待を受けていました。
■ITで児童買春と闘う!
高木:その頃はまだ大学生だったわけでしょう?
村田:大学3年で21歳くらいでした。カンボジアを対象国とすることを決めて、資金を集めるためにIT事業を始めました。
高木:あなたの専門はITだったのですか?
村田:いえ、そうではなく、仲間たちが元々ITビジネスに興味を持っていまして、ITの仕事を日本で請け負ってカンボジアに出せば、人件費が安い分、差額が生まれるので、それを孤児院の子どもたちの職業訓練費に使おうという構想で始めました。
高木:支援の資金源としてITで起業したわけ?
村田:そうです。例えば、日本で100万円の仕事を請けたとき、日本でやったら人件費が60万円かかり、カンボジアなら10万円で済むとしたら、その差額が利益になるんです。
高木:なるほど! しかし子どもたちを訓練して、IT技術者に育てるまでには相当時間がかかるんじゃないかなあ。
村田:パソコンの基礎からプログラミングまで、2年くらいでいけるんです。そこで、日本企業の仕事を請けていくために、IT事業部を設立したんです。
高木:なるほど。しかし、大胆なことを考えたね。
村田:日経のITプロの中の、技術者の方がよくご覧になる人気コンテンツがあって、そこの有名な記者さんが「カンボジアの児童買春とITで闘う」というタイトルで、かものはしの特
集をしてくださったんです。そうしたら、80人近い方が「ボランティアをしたい」とおっしゃってくださって、その方たちをボランティアとして組織化して一緒に活動するというのを、一
時期やっていました。
高木:そうかあ!それが成功の鍵だね!目的がはっきりしているから、応援しようというプロが加わって、ビジネスとして成功した。あなたたちがしっかりと考えて行動しているから、応援したくなるんだろうなあ。
村田:ありがとうございます。
■児童買春被害者をゼロに!
高木:それで実際に支援が始まったのは?
村田:ITの仕事でお金を貯めて、寄付者を募り始めたのが2003年頃。大学卒業後にカンボジアで駐在を始めたのが2004年の6月です。事務所を立ち上げて、パソコンを揃えて、教師を採用して、孤児院を回って対象者を探しました。最初は数団体を受け入れて、30人くらいから始めました。
高木:すごいね!
村田:共同代表の他の2人が戦略を考えてくれるので、私は現地で実行するのみという感じでした。
高木:3人が共同代表というのはいいね。スリーヘッドというのは、間違いが起こりにくいんだよ。文殊の知恵だからね。
村田:3人でよかったと、私も思っています。
高木:それからどうなったの。
村田:パソコン教室を続けていたのですが、2007年に農村支援を始めようということになって、教室は一旦休止しました。
高木:休止したのはどうして。
村田:売られてくる子の大半は貧しい農村から来ているので、農村支援をしたいと考えるようになったのですが、ITと両方やるには人もお金も足りなくて、農村支援の方にシフトし
たんです。
高木:農村支援とは具体的には。
村田:雑貨を作る工房を建てて、貧しい家庭の女性たちを雇用しています。あとは、カンボジア政府が行っている警察トレーニングプロジェクトの援助ですね。
高木:国家のプロジェクトに、民間のNGOが資金を援助しているの?
村田:そうなんです。人身売買を防ぐために、18歳未満の子どもは保護されるという法律が2008年にできたのですが、警官がその法律を知らないんです。しかしきちんとトレー
ニングを行うと検挙率も上がり、成果が出ることがわかっています。
高木:それらはすべて、私たちの活動と合致しています。児童の人身売買、児童買春の防止活動を、かものはしさんを通じて、支援していきましょう。
村田:ありがとうございます。『地球村』のみなさまに、私たちのウェブサイトをご覧いただきたいです。
■NPO法人 かものはしプロジェクト
http://www.kamonohashi-project.net/