【巻頭言】トム・ソーヤのペンキ塗り
	このタイトル、知っていますか。
	私の好きなお話です。
	トム・ソーヤは、マーク・トウェインの有名な小説のタイトルでもあり、元気いっぱい、アイデアいっぱいの主人公の少年です。
	ある日トムは、いたずらをした罰として、長い長い壁のペンキ塗りを命じられました。
	もともと、こういうことが大嫌いなトムはうんざり。
	しかし、そこがトム。いやなことをいやなままにはしないのです。
	トムは、長い壁を前に、ペンキ塗りの道具を用意したまま、仕事をさぼっていました。
	友達が来ると、トムは楽しそうにペンキ塗りを始めました。
	友達が「なにをしてるんだい」と話しかけても、トムは仕事に熱中して気付かぬふり。友達が何度か呼びかけると、やっと気付いたふりをして、
	「ああ、ビックリした!見ればわかるだろ!ペンキ塗りだよ! 邪魔をしないでくれよ」と言って、すぐに仕事に没頭。
	
	友達「ペンキ塗りっていやじゃないかい?」
	トム「とんでもない!こんな楽しいこと、他にないよ! 邪魔しないでくれよ」
	と言って仕事に夢中。
友達「えっ、楽しいかい?」
トム「えっ! 楽しいかって? 君はペンキ塗りの楽しさ、知らなかったのかい」
友達「そんなに楽しいなら、僕にやらしてよ」
トム「とんでもない! こんな楽しいこと、君には譲れないよ」
友達「そんなこと言わずに、ちょっとだけでいいから」
トム「だめ! だめ! これはね、僕しかできないんだから」
友達「じゃあ・・・ビー玉をあげるから」
トム「えっ、ビー玉かあ。いくつ持ってる?」
友達「ええと・・・10個あるよ」
トム「えっ、10個かあ・・・しかたないなあ、じゃあ、1メートルだけだよ」
友達「ありがとう!」
	トムは、しぶしぶ、ペンキ塗りの道具を渡しながら、「これはすごく大事な仕事だから、特別だよ。内緒だよ」とささやいた。
	友達は、ペンキを塗り始めた。
トム「あっ、そんな塗り方じゃあダメだよ。ばれちゃうよ」
友達「じゃあ、こんな感じ? これではどう?」
トム「うん・・・まあまあだなあ・・・もっとていねいに塗らなきゃあ」
友達「じゃあ、こう? これではどう?」
トム「うん・・・まだまだだなあ・・・僕が叱られちゃうよ」
友達は一生懸命塗り始めて、少し調子が出てきたところで、
トム「1メートル終わったよ。じゃあ、おしまい」
友達「楽しくなってきたから、もうちょっとやらせてよ」
トム「だめだめ! こんな楽しいこと、これ以上はだめ」
友達「じゃあ、ビー玉もう10個あとであげるから、もうちょっとやらせてよ」
トム「あとじゃあダメ! 今でないとダメ!」
友達「じゃあ、いますぐ取りに帰るから、待っててね!」
トム「すぐに戻ってくるんだよ、でないと終わっちゃうよ」
	トムは、壁の前でさぼっていると、別の友達が通りかかった。トムは、すぐに楽しそうにペンキ塗りを再開!
	友達がトムに「なにしてるんだい」と話しかけてもトムは気付かないふり…。
こうして、トムは通りかかった友達に、次々と宝物と交換しながらペンキ塗りの仕事をさせていった。そして夕方には、長い長い壁のペンキ塗りが終わっただけではなく、トムはたくさんの宝物まで手にしました、とさ。
	いかがでしたか。
	トムは、いろんなことを教えてくれていると思いませんか。
	楽しい、楽しくないは、考え方しだいです。
	楽しくないと思えば、なんでも楽しくない。
	自分が嫌だと思ったことには人も集まらないし、手伝ってくれない。
	自分が楽しいと思うことには人も集まり、伝ってくれる。
	
	先日、ある講演会で、これと同じことが起こりました。
	ある女性(Mさん)が私の講演会を主催することを決意したのですが、彼女は、なにをしていいかわからず、立ち往生していました。
	いろいろやってみたのですが、うまくいきません。
	なんと2週間前になってもチケットはほとんど売れませんでした。
	彼女があきらめかけていた時、その話を知った人たちが集まり、彼女を元気づけました。
	彼女は見失っていた元気を取り戻し、思い切り動き始めました。
	彼女から、講演会の楽しさが周りの人に伝わっていきました。
	すると、スタッフも全力で動き始め、遠くからも応援が入りました。
	2~3カ月間ほとんど売れなかったチケットが動き始めて、なんと2週間で完売。
	当日、会場は満員になり、とてもホットな講演会が成功したのです。
	Mさん、おめでとう! 助っ人のみなさま、ありがとう!
	人生、こんなものです。何ごとも自分しだい。
	今年は、いままでしたことのないことに、チャレンジしてみよう!
 
      